それでもオレはやってないから。
「いやっ、これはですね母さん。あの~……」
思考が回らない。
こんな状況をどう言い訳していいか、答えを知っているなら教えてほしい。出来れば今すぐに。
「ひっ姫、なんか言ってくれっ。オレには無理だっ」
こういう時は口が達者な姫に任せよう。彼女ならきっとうまいこと説明してくれそうだし、オレが言うより『犯罪臭』も
「ふぇっ!?あ、あ……あー……お
何その友達の家に来た感覚みたいな言い方は。いつもの
ああ、期待したオレがバカだった。
「……あなたはどこの誰かしら?」
普段の母さんからは想像がつかない、底冷えするような重い声。だらしなさもおふざけも一切ない、
「えと、そのですね……あ、あたしは~……桃城姫と、もっ申しますぅ~」
なのでこんな状態。
本当にどうした、姫。
しゃべり方が
「へ~。それで、どうして姫ちゃんは良太の部屋にいるのかしら?」
「それは、あの……そのぉ……ははっ。
こっちに振るな。悪戯したくてうちに立ち寄っているのはお前の方だろ。その辺の
「そう、分かったわ」
どうやら母さんは納得したらしい。
今の言い訳でどこをどう納得出来たのか
いつも温厚でぐうたらな母さんが怒った時は、その温度差で
絶体絶命の状況ではあったがどうにか収まりそうで良かった。
と、思ったが。
「ちょっと姫ちゃん、どいてて」
「は、はいっ」
姫がオレの上からどかされて。
「こぉんの、バカ息子がぁぁあああっ!!」
「ぶべらはぁあっ!?」
脂ののった熟女マッスルから放たれるダイビング・ボディープレス!突き抜ける衝撃がオレの背中をブレイク。
「ロリコンだとは思っていたけどっ!」
「げほっ、ちょっと待っ――ぼひゅっ!?」
ロリコンじゃねーしそんなこと実親に思われたくない、と言おうと思って立ち上がったところで鋭く蹴り込まれる
「まさかリアルに
「うわぁぁああっ――――ごべはっ!!」
最終的に両腕を固めて持ち上げられてからのタイガー・スープレックス!ぶん投げられて宙を
「は、話を……き、い………て…………」
全身ボッコボコにされながらも立ち上がろうとするが……視界が暗転。全身から力が急速に抜けていく。
そしてオレの意識は闇の底へと、深く深く沈んでいくのだった。
「………ぃ………さぁん……」
誰かが呼んでいる。
「……きてよ………お……さぁん……」
あと多分、叩かれている。ビンタだ。
「起きてよ……にぃ……おーい……」
痛いな。ちょっと力込め過ぎじゃないか?
あ、今グーでやったな。グーは反則だろ。チョキじゃないだけマシだけど。
「もうっ、起きてってば、お兄さーーんっ!」
「ほんぎゅえぁはあああああああああああああっ!?」
股間に惑星破壊級の衝撃が走り、内臓を握り潰されたような激しい鈍痛が体中を駆け巡る!
「あ、起きた」
「起きるわ!!つーか死ぬわボケェッ!!」
目覚めて早々、オレのジュニアを握って
金的はよく漫画のギャグ描写に使われるが、一応内臓の一種なので潰れたらショック死しかねないんだぞ。間違っても悪ふざけでしちゃいけないからな。良い子も悪い子もよく覚えておいてほしい。
まったく、親は一体どういう教育をしているんだか。オレの大事なジュニアが機能不全になるところだったぞ。
「…………あ」
『親』という単語を口にして思い出した。
姫がオレの部屋に入り
で、その母さんはというと――
「あ……あはは。おはよう、母さん」
――真後ろで正座していた。
「事情は姫ちゃんから全部聞きました」
「聞いちゃいましたか……」
どうやらオレが気絶していた間に、それなりのやり取りがあったようだ。時計の針を見るとあれから十五分ほど時が進んでいるし、それだけあれば色々話せるだろうな。
一体なんて話したのだろうか。まさかまた誤解されるようなこと言ってないよな?不安しかない。下手したらまたプロレス技でボコボコにされかねない。そして最後は警察に自首させられることにもなりかねない……って、オレは何も悪いことしてないぞ。断じて。
「どうして黙っていたの」
「そ、それは……まぁ……はい」
言える訳ないって。自分の部屋に女子児童が出入りしていて、エロ貸本屋代わりに使っています……なんて
「『はい』じゃないでしょ。大体、勉強教える手伝いなら別に隠すような話じゃないと思うんだけど?」
「は、はい……ですよね。――――え?」
「だから『え?』でもなくて。良太も一応大学生だし、子供に勉強を教えるくらい普通だってこと。でもね、そういうことはちゃんと話してくれないと困るのよ」
「まぁまぁ、美代子さん。あたしが誰にも言わないでって言ったことだから、あんまりお兄さんを責めないであげて?」
「まぁ、姫ちゃんがそう言うなら」
どうやら姫は、オレのことを学習サポーターの類いだと言い訳してくれたようだ。幸いなことに机の上には勉強道具があり、その
と、その点は良いのだが。
「でもこんな汚い部屋で良かったの?うちの息子、モテないイケてないどうしようもないの『三ない』持ちだし」
「いや~、あたし家だと集中出来ないタイプだから
どういうことだコレ。差別かコノヤロー。
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