エロ本隠しは計画的に。
「えっと、その……き、君の言う遊び相手っていうのは……?」
「だーかーらー、あたしの暇潰し相手だってば。とにかく色々なの」
「その、ね? ぐ、具体的に言ってほしいっていうか……その……」
「じゃあ、あたし漫画読みたいから~、お兄さんの持っているヤツ読ませてよね」
「……は、はぁ」
ニヤニヤと口角を歪めて少女は笑う。
見るからに男を
「ふんふ~んふふ~ん♪」
少女はオレのベッドに
最近と言えば、視界の端っこに映るランドセルだ。
鮮やかなピンク色で、あまり目に優しくないド派手なビビッド。近頃のランドセルは色や模様のバリエーションがどんどん増えているらしいが、これはやり過ぎ感がある。よく見ると天使の羽が描かれていたりホログラムシールが貼られていたりしている。これは少女自身による
「……ん、これは……」
そんなゴテゴテに盛られたランドセルの内側、カブセと呼ばれる
三年 三組
姫様って呼ばせようとしていたけど、マジで本名だったのか。
何様だよ、とか思って悪い。……いや、様付けはやっぱりおかしいだろ。
「そーいえばさー、お兄さん」
漫画をベッドの上に放り出し、生意気少女――姫がこちらを見つめてくる。
「な、何だよ」
「お兄さんってエロ本持ってる?」
……突然、何を言い出しているんだこの子は。
そりゃあ、オレもそれくらい持っていますよ。実物もデータも、どちらもバッチリだ。モテない陰キャですもの、悲しいくらいに蔵書がありますけど?
でも、小学生に見せる気はないぞ。ましてや見知らぬ女の子に性癖を晒すなんて、まるで露出狂の類いじゃないか。絶対にしないからな。そんな変態行為。
「黙ってないで教えてよ~」
「も、もも持ってないね……そんな下らない本」
よし、このまま
「あっ……。ふぅ~ん、ここかぁ♪」
だが、姫は即座に自分の真下に目を付けた。
彼女はオレの視線が泳ぎ、一瞬ベッドの下に向いたのに気付いたのだ。なんという観察眼。こうやって人の弱みを掴んでいく気なのか。恐ろしい。
「よっと」
まるで
「ちょ……やめっ……!」
オレは
そのまま力尽くで引っ張り出してやろうと思った。でも姫の足は幼い女子らしく華奢で、力を込めたら折れてしまいそう。下手な扱いは出来ない。
「ああ、もう! 出てこいっての!」
オレは空いている右手で更に奥、エロ本漁りをしている姫の腰あたりまで手を伸ばし、一気に引きずり出した。
ずる~~~~~んっ。
まるで市場の冷凍マグロのように滑りながら、姫がベッドの下から出てきた。
姫の背中はほんのりとスクール水着型に日焼けしており、肌はすべすべ
「ど、ど……どぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」
目の前には、ロリの尻。
ぷりっとしたケツ。ぷりケツ。
姫のボトムスは下着ごと脱げており、ギリギリ足首で引っ掛かっていた。
誰が脱がせた?もちろん、オレだ。
必死に引っ張り出そうとして、誤って服をひん
「……うわぁ。お兄さん、意外とダ・イ・タ~ン♪」
体を起こした姫は、下半身丸出しのままニヤニヤ笑っている。
姿勢はぺたん座り……俗に言うお姉さん座り。もし両手をどかしたら、完全に丸見えだ。この歳になるまで生で見る機会のなかった
「はっ、早く履けって!」
視界を自身の手で覆って、なんとか理性を保つ。
相手が成長しきっていない子供というのは分かっているが、オレ自身が女性に免疫がないのも確かだ。体で最も性差が出るところをおおっぴらにされてしまったら、冷静でいられるか怪しい。
「え~? 脱がせたのはお兄さんでしょ~?」
「だっ、だから、それはじ、事故っ! 事故だからっ! そ、そんなつもりはなかったんだ! わる、悪かった……ごめんって!」
頼むから早く履いてくれ。事故だって言い訳しているけど、こんなところ誰かに見られたら『女の子にいたずらしたこの世で最低最悪のクズ』認定は確実だ。
「ちょっと、良太~? 何を騒いでいるの~?」
ドキン、と。今日一番の心音が鳴った気がした。
母さんが二階の異常に気付いたらしい。ゆっくりと階段を上ってきているのが足音で分かる。
「は、入っていろ! あ、あとっ、出てくるなよ!?」
「あっ……きゃんっ!」
オレは半裸の姫を寝転ばせて、そのままベッドの下へとスライディング・イン。続けて彼女のランドセルも隙間の奥へと、カーリングのストーンよろしく滑り込ませた。
それとほぼ同タイミングで、扉が開けられる。
「まぁ、ひどい。こんなに散らかして……小学生の頃みたいじゃない」
入室した母さんの第一声は、部屋の惨状に対する感想だ。本を荒らしたのは小学生なので、あながち間違っていないから怖い。ぐうたらの割に、こういう時に限って勘が鋭いのだから困る。
「あはは……。ちょっと読み返したい本があって探してたら……ね?」
「別にいいけど。だらけずちゃんと片付けておきなさいよ?」
「わ、分かっているって」
自分のことは棚に上げて小言を言う母さん。そのやり取りに対していつも通りの調子で付き合っているが、内心ヒヤヒヤ汗ダクダクだ。ベッドの下には半裸の少女、しかもいつ出てくるか分からない時限爆弾。彼女の気まぐれで、いつ爆発してもおかしくないのだ。
「あ、そうだ。洗濯物、乾いたら取り込んで畳んでおいてね」
「了解、了解しましたっす」
「……何その口調? まぁ、いいけど。じゃ、頼んだわよ」
ちょっと様子が変だと思ったのか首を傾げていた母さんだったが、家事を頼み終わるとさっさと部屋から出ていってくれた。
「はぁ~~~~~っ。死ぬかと思った……」
寿命が十年と半年は縮んだと思う。それくらい心臓に負荷がかかっただろう。まだドキドキが収まらない。
「きゃははっ。お兄さんったら、ホント面白~い」
にゅっとベッドの下から顔だけ出す姫は、一切悪びれずにケラケラ笑っている。それでも一応気を遣ってくれているのか、声のボリュームは抑えめだ。
何だかんだと言っていたが静かにしていてくれたあたり、暇潰し相手がいなくなるのは嫌ということか。
「ところでさー、この本なんだけどぉ」
「げっ」
安心した矢先、姫が漫画本を取り出す。
それは隠していたエロ本の中でも、特に重宝している一冊。
「お兄さん、やっぱり小さい女の子が好きなんだ~♪」
『コミックL・ゼロ』。
それはロリ系の漫画が収められた雑誌だった。その
最悪だ。もう、本当に最悪だ。よりにもよってそれを見つけられてしまうなんて。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます