第4話



「なあ、母ちゃんはまだ迎えこねえのか?」

「来てねえ。暫く来ねえだろうよ。だからまだ暇だしよ、お前に電話した。サツが電話機貸してくれっからよ。これから、隙を見て脱走する予定」

「マジでお前なんなの、恥ずかしくねーの」

「男っていうのはな、冒険が大事なんだよ!あ!え!母ちゃん来た!嘘だ!やばい、これからの脱獄の……楽しみがあああああああ……パーじゃんか!」


「嫌だあああああ」という叫びと共に、電話はガシャンと突然切れて、プープーと同じ音だけが鳴り響く。


 いや、何が脱獄じゃ。母ちゃん来て良かっただろうが。


「なんなんアイツ」


 明日の学校で、トシはまた「俺の武勇伝」とか言って、今日の事を語っているのであろう。まあ、トシが言いふらす前に噂なんかすぐ広まるが。あまりにも酷い時は、親まで呼ばれていたっけ。学校中に武勇伝とやらは拡散し、大ニュースだなんて、この前みたく高学年のパイセンたちが騒ぐのだろうか。


 どこに出かけても、トシは子供が行ってはいけないところに冒険し、通報され騒ぎになる。そのうち、ひとりで勝手に富士山なんか登ったりしないだろうな、宇宙なんか行くんじゃないぞ。〝行方不明トシくんの大捜索〟なんてのが始まっちまうだろうがよ。小六の修学旅行の時には大人しくなっていて欲しいものだ。




 小学三年生で恥ずかしくないのかね。




 自作迷子劇。

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脱獄 白咲夢彩 @mia_mia

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