第4話
「なあ、母ちゃんはまだ迎えこねえのか?」
「来てねえ。暫く来ねえだろうよ。だからまだ暇だしよ、お前に電話した。サツが電話機貸してくれっからよ。これから、隙を見て脱走する予定」
「マジでお前なんなの、恥ずかしくねーの」
「男っていうのはな、冒険が大事なんだよ!あ!え!母ちゃん来た!嘘だ!やばい、これからの脱獄の……楽しみがあああああああ……パーじゃんか!」
「嫌だあああああ」という叫びと共に、電話はガシャンと突然切れて、プープーと同じ音だけが鳴り響く。
いや、何が脱獄じゃ。母ちゃん来て良かっただろうが。
「なんなんアイツ」
明日の学校で、トシはまた「俺の武勇伝」とか言って、今日の事を語っているのであろう。まあ、トシが言いふらす前に噂なんかすぐ広まるが。あまりにも酷い時は、親まで呼ばれていたっけ。学校中に武勇伝とやらは拡散し、大ニュースだなんて、この前みたく高学年のパイセンたちが騒ぐのだろうか。
どこに出かけても、トシは子供が行ってはいけないところに冒険し、通報され騒ぎになる。そのうち、ひとりで勝手に富士山なんか登ったりしないだろうな、宇宙なんか行くんじゃないぞ。〝行方不明トシくんの大捜索〟なんてのが始まっちまうだろうがよ。小六の修学旅行の時には大人しくなっていて欲しいものだ。
小学三年生で恥ずかしくないのかね。
自作迷子劇。
脱獄 白咲夢彩 @mia_mia
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
私が私と向き合うまで/白咲夢彩
★34 エッセイ・ノンフィクション 完結済 23話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます