第19話 ヤクモ<異世界>:地下庭園(3)

 シグルーンが落ち着いた後、


「取り敢えず、<スキル>や<魔法>を確認したい」


 それによっては、エリスの作る料理も回避できる――いや違った。

 魔王軍との戦いに備えなくていけない。


「だが、先ずは【装備】か……」


「確か、<勇者>は【ステータス】魔法を使えるのよね」「ああ」


 俺はエリスの言葉に頷くと、【ステータス】魔法を使用した――といっても念じるだけでいい。【ステータス】画面が開いたので、【装備】を確認する。


―【装備】――――――――

武 器:旅人の杖

防 具:旅人の装束

    魔物使いの外套

装身具:皮の靴

―――――――――――――


「勇者様――何て、表示されていますの?」


 興味深々といった様子でシグルーンが聞いて来るので、俺は【ステータス】画面をタップし、スライドさせる。


「ひゃうっ」「悪い」「い、いいえ……」


 俺はシグルーンに『パーティー』への参加メッセージを送った。


「姫様――突然、どうされました?」


 エリスが質問する。


「いえ、勇者様から……デートのお誘いです♥」


 何だと!――とでも言いたげにエリスが睨む。俺は苦笑して、


「【ステータス】魔法による『パーティー』への勧誘だ。これで『YES』を選択すれば、シグルーンも俺の【ステータス】を確認できるように――」


 ピッ――シグルーンが素早く指を動かした。


「勿論、『YES』です!(フンス)」


 とシグルーン。少し鼻息が荒いような気がする。


「因みに、俺からもシグルーンの【ステータス】が見えるようになる」


「わたくしのが――丸裸に(ポッ)」


 シグルーンが両手を頬に当て、照れたような仕草をする。

 エリスに誤解されると後が怖いので、


「【ステータス】が丸裸――な。別に裸は見れない」


 と訂正する。まぁ、装備の変更は可能なので、場合によっては裸にすることも可能だろうが、今は言わない方がいいだろう。


「残念です……(ショボーン)」


 落ち込むシグルーン――ふざけているのか、本気なのか、今一わからない反応だ。

 一応、彼女の【装備】も確認してみる。


―【装備】――――――――

武 器:なし

防 具:修道女の服(+1)★

    精霊の髪飾り(+2:光)★★

装身具:魔法の指輪(+2)★

    聖職者の靴(+1)

―――――――――――――


(なるほど、『強化』や『属性』、『レアリティ』なども表示されるのか――)


 俺は改めて、自分の服装を確認する。

 【ステータス】画面ではなく、実際の服装を――だ。


 まぁ、外見は同じでも、異世界用の身体だ。当然、服装も変わっている。

 そこには――地球の物を持ち込ませない――という意図もあるのだろう。


「この服装は、ここでは標準的なモノなのか?」


 鏡が無いので、俺はシグルーンとエリスに意見を求めた。


(まぁ、浮世離れしていそうな二人に聞いても、参考にはならなさそうだが……)


「勇者様はどんな格好をしていも、カッコイイです!(ポッ)」


 とシグルーン。流石はわたくしの勇者様です!――と目が言っている。


(ダメだ。趣旨を理解していない……)


「普通ね。そもそも、そんな恰好で戦う気があるの?」


(言い方は兎も角、エリスの方が参考になるか……)


 恐らく、装備品の名前からして、旅人の基本的な装備なのだろう。

 冒険者らしくはない――といったところか。まだ、レベルも低いので仕方がない。

 動き易くはあるが、何処か野暮ったい。


 欲を言えば、折角の異世界なので、騎士の鎧や魔法使いのローブが良かったのが、これでは『町人』だろう。『村人』ではないだけマシと考えるべきか?


「大体わかった。次は髪と瞳の色か……教えて貰えるか?」


 鏡が無いので聞いてみる。


「髪の色は『黒』です……漆黒の闇のようですが、深い青にも見えます。素敵です!(ポッ)」


「瞳の色は『金』ね。猛禽類のような金目――というか、前髪はもう少し上げた方がいいと思うわ」


 髪の色から推測するに、<魔法>の適性は<闇>と<氷>といったところだろうか。瞳が金色ということは、<土>や<金>の属性かも知れない。


(何にせよ――髪や瞳の色が変わっている――ということは、<魔法使い>としての資質があるようだ……)


「ありがとう。参考になった」


 俺は更に【ステータス】画面の操作を試みる。

 【プロフィール】を確認するためだ。


 <勇者>が使えるという【ステータス】魔法――<魔法>といっても、MPはほぼ消費しない。発動条件は【ステータス】と口に出してもいいし、強く念じるだけでもいい。まぁ、人前では口に出すのが恥ずかしいので、今は念じることにする。


(しかし、念じるだけで――か、アイカちゃんの能力に通じるモノがあるな……)


―【プロフィール】――――

名前:月影 八雲  性別:男  年齢:17

レベル:1  分類:人間  属性:<影>

メインクラス:テイマー(魔物使い)

スタイル:未選択

サブクラス:未定

ジョブ:勇者

ユニーククラス:ツキカゲ ヤクモ

タイトル:未選択

―――――――――――――

この地に召喚された<勇者>の一人。女神から<恩寵>を受けている。

―――――――――――――


 【属性】が<影>というのが気になるが、他は問題ないだろう。しかし、<テイマー>か――できれば<メイジ>や<スカウト>の方が良かったのだが、こればかりは適性なので仕方がない。


 <メインクラス>についてだが、

 ・初期クラス

 ・初級クラス( ← いまココ!)

 ・中級クラス

 ・上級クラス

 ・超級クラス

 の5つある。


 この世界には七柱の<始祖神>が居て、それぞれ3つの<メインクラス>を作ったとされている。よって、初級とされる<メインクラス>は全部で21種類ある。


 通常はレベルが10に達すると、その中から適性のあるモノが設定されるのだが、<勇者>である自分は特別のようだ。


 俺たち<勇者>は、レベル1にも関わらず、最初から初級の<メインクラス>を与えられている。つまり、この世界の人間と比べると、成長(レベルアップ)時における能力の上昇値が高い――という訳だ。


 因みに、一般人の『初期クラス』としては、

 ・ボランティア

 ・ノービス

 ・ノブレス

 ・マレファクタ

 ・ストロング

 ・ノーマル

 ・ウィーク

 の7つがある。


 また、<未選択>になっている<スタイル>だが、<メインクラス>ごとに異なり、自分で選ぶ必要があった。


 <テイマー>が選択できる<スタイル>は、

 ・トレーナー

 ・フレンズ

 ・マスター

 の3つだ。


 これらは、習得できる<スキル>に影響する。習得できる<スキル>には、共通の<コモン>スキルと専門の<スペシャリティ>スキルがある。


 <スタイル>を選択することで、<スペシャリティ>スキルの習得が可能となり、レベルアップの際、習得できる<スキル>の選択肢が増えるのだ。


 ただ、今は自分が何に向いているのか、わからない状況だ。

 そのため、急いで選択する必要はないだろう。


 職業である<ジョブ>や個性である<ユニーククラス>によって、どんな<スキル>が習得可能なのかを確認し、成長後の姿を見極める必要があった。


 また、<テイマー>なので、最初にどんな<魔物>を【テイム】するかで、有利な<スキル>が異なるだろう。


 色々な<魔物>を調教するなら<トレーナー>、友達のように接したいなら<フレンズ>、<竜>など一つの種族だけに特化した育成をしたいのであれば<マスター>――というようにだ。


 <タイトル>についてだが、これは『称号』だ。

 名誉なモノもあれば不名誉なモノもある。今は選択する必要はないだろう。

 因みに、今、俺が選択できる称号は<ヒロインキラー>だ。


(――見なかったことにしよう)

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