第31話 ヤクモ<異世界>:7日目(4)


 ――<サブクラス>を<スカウト>に設定しますか?


 <(YES)/ NO >


 ――<サブクラス>を<スカウト>に設定しました。


 ▼      ▼      ▼


 ――<サブクラス>を<スカウト>に設定したため、

   以下の【技能】を自動習得します。


 ――技能枠が1枠増加しました(残り:2枠)。


 ――<専技>【猫足】を自動習得します。


 ――<専技>【猫足】Lv.1習得に成功しました。



 俺たちは今、シグルーンの部屋に戻って来ていた。


 大司教の死は<魔物>によるモノだ――ということに偽装した。

 <魔物>に襲撃を受けた際、そこに偶然居合わせたシグルーンとエリスを庇ったために、大司教は命を落とすこととなった。


 『あらすじ』はそんなところだ。何故、二人が助かったのかと言うと、<聖剣>が光輝き、シグルーンを守った――ということにしている。実際、グリムイーターこと『グリちゃん』も、シグルーンに懐いている。疑う者は居ないだろう。


 その結果、シグルーンは『剣の乙女』と呼ばれることになるかも知れない。

 精霊が守護する少女を国が保護しない訳にはいかない筈だ。

 上手くいけば、お姫様――いや、王女の地位に戻ることもできるだろう。


 俺としては、杖を回収できて、【ディスガイズ】の解除も行えたので、丁度良かった――ということになる。


 問題を上げるのなら、神殿では今、<召喚の儀>を執り仕切る筈だった大司教が居なくなったために、てんやわんやの大騒ぎになっている――というところだ。

 今からでは――やっぱり、<召喚の儀>を止めます――という訳にもいかない。


(そこはまぁ、いいとして――)


 俺には、我慢できないことがあった。


「どうして――誰もシグルーンの心配をしないんだ」


 それどころか、「流石は神子様」「神子様、信じて居りました」――名前すら呼びやしない。


 ふふふ――とシグルーンが笑った。


「何故、笑う?」「だって――」


 シグルーンは嬉しそうに俺の腕にしがみ付いてきた。

 エリスが眉をひそめたが、何も言われることは無かった。


「流石は、わたくしの――私の勇者様です☆(スリスリ)」


「何だ、それは?」


 シグルーンが思いのほか、元気だったことに安心はしたが、明日は本番だ。

 俺が立ち上がると、シグルーンも一緒に立ち上がった。

 そして、


「勇者様、お待ちを……」


 妙に改まった仕草で――


「<勇者>ヤクモ――この度は、わたくしたちの国『アルラシオン王国』を救って頂き、ありがとうございます」


 と前に出した足を軽く曲げ、一礼した。最初に出会った時のことを思い出す。


「違うだろ」


 俺は言う。


「俺たちで救ったんだ」


「勇者様?」


「お前が、俺を召喚したんだ」


「はい」


「お前が、俺と一緒にいてくれたんだ」


「はい」


「お前が、俺を<勇者>にしてくれたんだ」


「はい……」


 シグルーンは涙を浮かべる。

 明日はいよいよ――<召喚の儀>が始まる。



 ――シグルーンとエリスがパーティーから離脱しました。


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