クロエ・エヴァンス【零】
———”エルフ族”の森
”エルフ族”の将軍が、1人の”エルフ族”の少女に森の中で自身の技を教え込んでいる。
その”エルフ族”の将軍は、”エルフ族”いや全種族の中でも、稀代の天才と呼ばれている女性だ。
雛霧 叶月夜、リリアーヌ・アダムスはまだ才能を開花していないが、才能を開花させていても2人で協力して戦っても勝てるかどうか……。
稀代の天才と呼ばれる以前に、間違いなく異次元の強さを持つ異世界最強だ。
その稀代の天才と呼ばれる将軍に技を教え込まれているのは、その将軍の妹だ。
「第5の暗殺(フィフスアサシン)剣技、潜伏切り裂き(ステルス・リッパー)!!」
エルフの森の巨樹の幹に大きな切断面が現れ、巨樹が少女の1撃で斬り倒される。物心ついた頃から、天才である姉に技を教え込まれていた事もあり、妹もかなりの強さだった。その様子を見て、優しい笑顔を向けながら妹に拍手を送る姉。
「クロエは筋が良いですね」
「本当ですか! ありがとうございます!」
少女はまだ知らない。
物心ついた頃から、天才の姉に叩きこまれてきた技の本当の正体を……。
———王都”アレクサンダー”王宮内
今日は”初代ベアトリクス”である姉の功労式だ。
先の大戦では“堕天使”の返り討ちに遭い、”アレクサンドロス”に戻ってきた者はクロエの姉”ベアトリクス”、ただ1人だけ。
先の大戦での損害は計り知れないが、クロエの姉”ベアトリクス”が倒したのは”堕天使”、それも”堕天の王”だ。
神々と神々側に付いた種族の宿敵の王を倒したという事もあり、国中が歓喜に沸いた。
クロエの姉である”ベアトリクス”が白銀色のプレートアーマーを身に纏い、金色のロングヘアをなびかせながら王のもとへ向かう。
式典には”アレクサンドロス”中の種族の長たちと、その精鋭兵士たちのみが出席を許されており、式の主役である”ベアトリクス”の親族ということだけでクロエとクロエの両親も式への出席を特別に許されていた。
王に
幼いクロエは姉のルシールを誇りに思い、王以外の皆が跪くルシールと同じように跪く中、姉であるルシールの雄姿を目に焼き付けようと1人だけ跪かずに眺めていた。
クロエの目に尊敬しているルシールの最期の姿が目に映る。
王に跪くルシールのロングヘアの隙間から見えた横顔は、口角が不自然なくらいに上がっていた。
次の瞬間。
王宮内は瞬時に血の海となった。王はもちろん、”アレクサンドロス”中の種族の長たち、その精鋭兵士たちも1人残らず血の海に沈んでいた。
クロエの母親の体で包まれたクロエの目に飛び込んできたのは、クロエの父親の無惨にも斬り刻まれた死体。
クロエの母親も呼吸が浅く、ガタガタと体を震わせているが必死になってクロエを守っている。
そんな幼いクロエにルシールは瞳の中に体ごと吸い込まれてしまいそうな、ラピスラズリのような神秘的な青色の瞳を向ける。
ザシュッ!
……なんで?
ザシュッ!
……止まって?
バシュ!
……止まってよ!!
幼いクロエによって無惨にも惨殺されていくクロエの母親。
クロエの母親は自分を斬り刻んだ幼いクロエに、自身のペリドットで出来た緑色のピアスを震える手で手渡し最期の言葉を掛ける。
「え? お、お母さん……。ご、ごめ……んな……」
クロエの母親はピアスに関しては何も話さず、ただクロエに優しい笑顔を向ける。
「クロエ……。良いのよ……。クロエは何も悪くな……」
ザシュッ!
ザシュッ!
ルシールの母親でもあるはずなのに、まるで料理でもしているかのように無表情で剣を振り回して母親の体を斬り刻んでいきトドメを刺すルシール。
何が起こっているのかまったく分からない幼いクロエは、自身の手と全身を母親の血にまみれながら、この惨劇を
“え? 本当にルシール姉さま……?”
ルシールはいつもの優しい笑顔をクロエに向けている。
「分かりましたか? クロエ。あなたに教えていた技は本来、このように使うのですよ」
ルシールはそれだけ言い残すとクロエは殺さず、これまで無かった白色の翼を広げ王宮を飛び出していった。この惨劇で生き残ったのは、クロエただ1人であった。
クロエはそのときの記憶と共に、この世界に生まれてきてからの記憶をすべて失った。
幼きクロエには、姉が犯した許されざる大罪がクロエを取り巻くこれまでの環境のすべてを奪い去る未来が待っていた。
生きる術をまだ知らない幼きクロエは、餓死寸前で行き倒れているところを街外れの廃墟で発見される。ボロボロの容姿や服装には不相応な綺麗な緑色のピアスをしたまま……。
———その後、クロエは”オルレアンの孤児院”に引き取られる
クロエは”オルレアンの孤児院”で
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