11-10 主人公流公開処刑

———屋敷



 2週間も旅館での豪華な休みを満喫して帰ってきた、楓花御一行。

 楓花を含め皆、笑顔で帰宅してきた。


 楓花を出迎えたのはリュカにエマ、そしてエレーヌに鬼の形相のかぐや。


 楓花はリュカの存在に気付くなり、涙を流してリュカに抱きついた。


 楓花には一応、かぐやの方からリュカの意識が戻ったことと、エマもそれにともない元気になったと伝えていたが、やはり実際に本人を見ると感情を抑えられなかったようだ。


 エマにも抱きつく楓花。

 エマは完全に元のエマに戻ったのだろう。

 鼻血を流しながら高揚した顔つきをしている。ある意味、楓花の危険は増えたがこれはだ。


 そんな感動の再会をしている3人を尻目に、コソコソと屋敷内に入ろうとしている、”爆裂バカ娘将軍”の3人。


 リリアーヌは元々の性格の部分もあり、楓花との夏休みを心の底から楽しんだ。

 ソフィアも物事を深く考えないところがあるので、戦いの傷が癒えると夏休みを満喫した。


 クロエは……。悩んだのは初日だけで、を忘れ他の2人の誰よりも楓花との夏休みを満喫した。


「おい。待ちなんし。そこの共」


 エレーヌはこれから起こる危機を察知し、楓花たちのもとにすぐに向かった。


(よかったー。かぐやにこき使われているとはいえ一応、宿敵討伐には貢献したしー。私は夏休みを満喫していた訳ではないからなー。あー、3人とも死んだな)


 3人が屋敷まであと数歩のところで、微動だにしなくなる。


 まず、リリアーヌ。は、逃げた……。

 全力を出したと言っても良い。かぐやに察知されない場所まで、ほとぼりが冷めるか楓花がかぐやを説得してくれるか、どちらにせよを願って逃げた。


 では、ソフィア。


「あっ。ああー。”堕天使”に受けた傷が今頃になってー。いやー、私、本当に死にかけたんやでー」


 ソフィアの二の腕の肉を引きちぎる勢いで掴み、放さないかぐや。


「ほう。ソフィア、体重がピーッ! キロも増大したようじゃ。余が増大したキログラム分、斬り落としてやろうかえ?」


 元々、クロエに次いでだらしない性格のソフィア。

 この2週間、自堕落極まりない生活をしていた。

 

 かぐやの指摘通り、少しソフィアの顔は丸くなったようだ。


「日本5週じゃ。技などを使わず、のみで日本を5週回ってきなんし。余も鬼ではないぞよ。途中、も良いぞよ。余の使い魔、鴉鼓を遣わす。途中で姑息な技でも使ってみよ。分かっておろうな?」


 ソフィアはかぐやの話が終わった瞬間に、走って外に出て行った。



 ……クロエ。


『ひぃぃぃぃぃ。私にはどんな罰を……。ん?』


 クロエの予想とは真逆にかぐやはニコニコと笑顔を向けながら、クロエに近付いて来る。


「クロエ、其方には罰は無しじゃ。其方への罰はが決めようぞ。楽しみじゃ。が宿敵の相手をせず、呑気に夏休みをエンジョイしていたとはのー。しかも其方がおらん方が、何か綺麗な物語であったぞよ」


 真っ白になるクロエ。予想はしていたが、忘れていた。


 かぐやが宿敵を倒してしまう事態を……。


『私は何のために存在していますの? 私は実はのキャラで、かぐやがですの? 誰か教えて欲しいですの』


「おお。忘れておったわ、よ。其方の借金の担保に預かっておいた寿命を、400年ばかり使うてもうたわ。まぁ、ならチートでも何でも使って取り返すじゃろう」


 灰になるクロエ。

 最早、から存在していなかったことにしてもらいたい。


 かぐやからも、読者からも、作者からも公開処刑を受けるクロエ。


 灰になりながら、楓花のもとに向かう。


「ふ、楓花は私の親友ですわよね?」


 楓花は怪訝そうな表情をする。


「え? 当たり前でしょ?」


 その楓花の回答にギリギリのところで踏ん張るクロエ。


「ところでクロエちゃん……」


「なんですのー? 楓花ちゃーん」




「リリアーヌちゃん、どこに行ったの?」




 楓花と親友であること、楓花にとって大切な存在であることには違いないクロエ。だが、楓花はリリアーヌと気が合う。


 楓花によって粉々に風化するクロエであった。







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