11-4 あの……私の事、誰か覚えていますか?

 エレーヌは涙を腕で豪快に拭うと、作業台の上に2種類の武器を出した。


 1つは銀色の装飾が施された短銃。もう1つは赤色の装飾が施された散乱銃。

 エレーヌが武器の説明を簡単にリュカに始める。


「リュカ。これらは見た目は、この世界の重火器だがたちへの威力は桁違いだ」


「得体の知れない、あのバケモノか?」


 リュカの言葉にエレーヌは大きく頷く。


「奴、奴らは”堕天使”と呼ばれる、この世界で言う神話に登場する”悪魔”のような者たちだ。この世界の神話にも語られているように、奴らは神々の”聖なる力”に弱い」


 リュカは黙って2つの武器を手に取る。そして、腰に散乱銃を胸ポケットに短銃をしまう。


「リュカよ。散乱銃は私の”ヴァルカンメイス”の力を宿させている。弾は聖水に長らく漬けていた特殊弾だ。物理的な威力は半端ないから、ひらけた場所で使う事を勧める。そして、短銃だが……。それは散乱銃よりも”堕天使”にとっては、かなり威力のあるものになる。詳しい話をしてもリュカは分からないから省くが、伝説級の”聖なる力”が宿っている。こちらは使い場所を気にしなくても良い。リュカの腕があればな」


「ありがとう。エレーヌ、感謝する」


「リュカよ。両方、弾には限りがあるから、そこは気をつけてな。あ、あと、リュカ」


「ん? どうした、エレーヌ?」


「頼む。もう私に死ぬほど心配をさせないでくれ」


 今度はまさかの女嫌いのリュカから、エレーヌの大きな体を抱きしめる。

 エレーヌは耐えていた涙がまた溢れ出してくる。


「必ず。今度こそ必ず。すぐに戻る。すまない、エレーヌ」


 それだけエレーヌに言うと、人間とは思えない動きでエレーヌのもとを去るリュカ。



「ほう。エレーヌはであったか。良き良き。性癖は人それぞれじゃ」


 いつから天井に張り付いていたのか分からないかぐやがエレーヌをからかう。


「ち、ちげぇよ!! リュカは同志としてだな……!!」


 真っ赤な顔をして叫ぶエレーヌのもとに、かぐやが着地する。


「では余たちも、リュカを追うかの。どうせ、エレーヌもあとを付ける気であろう?」


「お、おう!! リュカを追うぞ!! かぐや!!」


「余の動きについて来れるかえ?


「だ、だから、そんなんじゃねぇよ!!」





———百合園家系列、高級旅館




 この旅館は一般人には開放されておらず、百合園家でもごく一部の上の者でしか宿泊することを許されていない。


 クロエ、ソフィア、リリアーヌは無事に楓花と合流し、ソフィアは疲れていたのかすぐに部屋に向かい眠りについた。


 楓花と気の合うリリアーヌはすぐに天然露天風呂に向かい、水鉄砲を使い2人でサバゲ―の続きをして楽しんでいる。




 1人……。


 そう、この物語の




 シェルターのような頑丈な造りをしている旅館であるため、崩壊の危険はないが完全なとばっちりを受けているとどろきを目の前にして激しく貧乏ゆすりをするクロエ。






『嫌な予感しかしませんわ。この物語……、まさか、かぐや主人公みたいな感じで終わりに向かおうとしている気しかしませんわ。ぐぬぬぬぬっ。タイトルもサブタイトルもすべて崩壊してしまいますわ。え? みんな、この物語の主役は私、クロエ・ベアトリクス。ヒロインは楓花ですわよ? なんか、かぐやカッコいいとか言っている読者には私の暗殺技アサシンを喰らわせますわよ!!』







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る