10-9 連携攻撃の脅威
「い、いい度胸だ。俺を前にわざわざ覚醒を解くとはな……」
「貴様ごとき、……で十分ですわ」
「よく聞こえなかったぜ!! クロエ!!」
大剣を振りかぶりクロエに対して振り抜くムルムル。速度、威力ともに、これまでの”悪魔”やその他の敵とは比にならない。ギリギリで又もや躱すクロエ。
地面には大きな切断面が出来上がる。クロエ自身もカルンウェナンを抜き、最初からムルムルに対して奥義を繰り出す。
「
エレーヌから渡された新武器、カルンウェナンのおかげでクロエの素早さも剣技の威力も、これまでと比にならない程に上がっていたがムルムルの大剣に軽くガードされる。
「おいおい! さっきの突き、1撃の方が重かったぜ!」
ソフィアのエクスカリバーにもヒビを入れる程の威力なはずだが、このムルムルの青色に輝く大剣には傷ひとつ、つけられない。
大剣でクロエの攻撃をガードしながら、ムルムルが何か呪文を唱えだす。
「お前も、自分の剣技の威力がどれほど貧弱か身を持って体感しろよ」
ムルムルの大剣が青色の輝きを増していく。
「おら!! カウンターショック!!」
青色の光がクロエの全身を包む。その瞬間、クロエの体に凄まじい威力の、まるで剣による突きの連撃のような衝撃が走る。
「ぐっ!!」
『こ、これは間違いなく、私の
たまらず緊急回避に
『ちっ。どうりであのソフィアが……。コイツはカウンター主体の攻撃を得意としているようですわ。だから大剣、そして迂闊に奴の間合いに飛び込むのは自殺行為ですわね』
考えている間に、間合いをムルムルに詰められるクロエ。ムルムルは大剣を大きく振りかぶっている。
「まさか俺がカウンター攻撃しかできないとか考えてる? オラ!! アースクエイク!!」
ムルムルの大剣は何とか避けたが、大剣が地面に直撃した瞬間、地面が大きく揺れ始めクロエの足場が崩落する。それにより完全に体勢を崩すクロエ。
「ちっ!」
すかさず空中で体勢を崩すクロエに対して、大剣を構えるムルムル。
「おしまいだぜ!! クロエ!!」
「
空中で体勢を崩していたクロエに、背後から緩やかな風がクロエの背中を押す。
そのことによってムルムルの大振りの攻撃は避けられた。
「ちっ! まだ仲間がいたのかよ」
風神化した弐龍がクロエのもとに到着した。
そしてすぐにムルムルを宿敵と認識し、ムルムルに対して大壺を叩く。
「
ムルムルの足場から渦巻き状に風が目に見える強さで巻き上がっていく。
凄まじい竜巻となってムルムルのいた場所には風の壁ができるが、その風の壁を大剣で突き破ってムルムルが弐龍に攻撃を仕掛ける。
「スサノオ・
そのムルムルの背後から巨大な斬撃が飛んでくる。ムルムルは弐龍への攻撃を中断し、その斬撃を大剣でいなす。
「クソッ! 死にぞこないが!」
クロエ、弐龍、リリアーヌを同時に相手をすることになったムルムル。
だが、クロエは先程のカウンターショックで全身切り傷だらけ、弐龍はハゲタカの攻撃で右腕を損傷、リリアーヌもムルムルとの戦いでソフィア程ではないが、かなりの傷を負っている。
3人の様子を見て腹を抱えて笑い出すムルムル。
「はははっ!! 死にぞこない共が何人集まろうが、このムルムル様には敵わねぇんだよ!!」
確かにムルムルの言う通り、1人1人はかなりの手負い状態にある事は間違いない。
しかし、絶大な力を持つ元神の”堕天使”ムルムル。1人1人の力はいまは弱くても、共通の敵に対して皆が協力して戦う時に発揮する、絶大な力を理解していない。それは己の絶対的な力を過信して、他者と協力をせずに1人でしか戦ってきた事の無い、神の唯一の弱点でもあった。
それはかつてソフィアを苦しめた参龍たちのように、個々の力はそれ程でも各々が協力をした時に発揮する力には恐ろしいものがある。
ソフィアも面倒見が良く冷静なようで、己の力を過信している部分が多々あった。そのため、普段なら瞬殺間違いなしのエキドナには苦労した。
逆にクロエ。意外にも独断専行型のように見えて、他者と協力して戦うことには長けている。それはハゲタカを相手にした時にも発揮されていた。弐龍の攻撃に合わして、確実に相手の隙をついてトドメを差していた。
リリアーヌもどちらかと言えば協力型だ。完全な独断専行型なのは、神々に近い力を持つかぐやと自身の技の特性から他者との協力が苦手なエレーヌだ。
3人は共通の敵を前に、何の相談もなしに連携して戦える自信があった。
そして各々、個人の力は”神”や”堕天使”には敵わないが、それなりの力を持つ3人が集結した時点で、クロエは頭の中でムルムルはもう終わりだと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます