10-10 女神など何処にもいなかった
「烈風・風当り!!」
弐龍の放った激しい風が、斬撃のようになってムルムルに向かって行く。
大剣でガードするが、弐龍の放った技は斬撃の他に激しい体当たりのような圧力も含まれていた。そのことを見誤ったムルムルは大剣で斬撃をガードしたまま、巨大な風の壁に体当たりをされたように背後へと体を吹き飛ばされる。
「クサナギ・
空中を飛んでくるムルムルの背後にジャンプをして、2本の槍に炎を宿して振り抜くリリアーヌ。弐龍による風の斬撃か、リリアーヌによる炎の槍による斬撃か、どちらかを喰らう事は必至だと考え、明らかに威圧感が桁違いなリリアーヌの方に大剣を向けてガードした。
ムルムルの予想は当たっていた。凄まじい轟音と共に大剣に衝撃が走る。
ムルムルであっても、リリアーヌのこの攻撃をまともに喰らうのはマズい。
ムルムルの背中に無数の風の斬撃が直撃する。
1撃の威力は無いが、数が多い分ダメージを受ける。
「まだ痛みが足りていないようですわね」
背後には誰もいないはずなのに、突如クロエの声がする。
「
ムルムルの首はクロエの剣技を持っても切断できなかったが、ムルムルの首筋に大きな切り傷ができる。地上に降り立ちボタボタと血を流しながら、クロエを睨みつけるムルムル。
「スサノオ・
睨み続ける間を与えず、リリアーヌがムルムルに対して2本の槍を振り抜き巨大な斬撃となってムルムルの体を捉える。ムルムルはリリアーヌの攻撃を大剣でガードする。
「あーあ。ムルムルよ。リルがあれほど好戦的なのを久しぶりに見ましたわ。余程、楓花とのキャンプを邪魔された事を怒っているのですわ。リルがああなれば、リル1人でも厄介ですわよ」
そう言うとクロエは再び、
クロエがいた先からは特大の竜巻がムルムルに向かってくる。
「
「クサナギ・
後方からは巨大な竜巻、周囲の木々を一瞬で
(くそっ! くそくそっ! カウンターも攻撃もさせてもらえねぇ! こいつら、とことん互いの隙を
「
巨大な貝殻のようなモノを出現させ、その中に身を隠すムルムル。
弐龍の攻撃とリリアーヌの攻撃を同時に受けるも貝殻にはまったく傷ができておらず、その強度は計り知れない。
「くくくっ。まさか最終奥義を使うことになるとはな。この貝殻は、あの
巨大な貝殻を前に3人は集まり、各々が巨大な貝殻を眺める。
まったく攻撃をしてくる気配がなくなったムルムルの現状態を見て、各々が冷め切った目をしている。
「敵前逃亡とは……。”堕天使”ともあろう者は、あれほどまでに愚かなのですか?」
「楓花氏の楽しみを奪っておいて……。死に値するよね」
「”堕天使”ともあろう者が、このように情けないとはな……よし! 私に考えがありますの!」
「いいですわよ。リル。本気で頼みますわ」
リリアーヌの2本の槍の上に乗っているクロエ。
既に体には
リリアーヌは体ごと回転を始める。
「行くよ! クロエさん! スサノオ・
リリアーヌの巨大な斬撃を生み出す遠心力を使って物凄いスピードで、貝殻に飛んでいくクロエ。
「
更に光の球となったクロエに、自分の武器を大きな扇子に戻した弐龍が扇子で暴風を送る。最早、貝殻めがけて飛んでいくクロエが通った地面は地割れを起こす程のスピードだ。
「ん? 外で何か地響きのようなものが聞こえるな。だが、この貝殻を破れるモノなど存在……」
「
ムルムルはいったい何が起きたのか、既に体から切り離された頭だけで必死に整理した。
突然、貝殻が両断されて……。
それに気付き大剣を構えるが、大剣も両断されて……。
頭も斬り落とされていて……。
光の球、いやクロエが一瞬で貝殻を横切っていくのが見えた。
俺……死ぬのか……。
ムルムルの最期、目に飛び込んできたのは銀髪のセミロングヘアの女性だった。
朝焼けに照らされた女性はまるで女神のようで、瞳はアメジストのような妖艶な紫色をしていた。
「よくも私に屈辱を与えてくれたな。何が女神や。私はお前を殺しにきた死神や」
”
無惨にも頭だけになったムルムルに、鋭利な花びらを突き刺すソフィア。
「もう一生、
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