10-7 【風神】護守 弐龍
———管理棟サイド
「最後の1羽ですわ! 弐龍!」
「はい!」
弐龍が大きな扇子を振りかぶると、ハゲワシは無抵抗に上空高く舞い上げられクロエがそのハゲワシにダガーのカルンウェナンでトドメを差す。
もう20羽以上も葬ってきた2人。流石に雑魚とはいえ、弐龍もクロエも動きっぱなしで疲労が蓄積されていた。
が、2人共、楓花たちの様子が気になるため、すぐに楓花たちのテントサイドに戻ろうとする。
ギュアアアアアアーッ!!
この世のモノでは無い事は確かだが、不気味で鳥肌の立つようなおぞましい叫び声をあげてハゲワシたちがクロエたちに攻撃を仕掛ける。それを避けて、またカルンウェナンでトドメを差すクロエ。
「ど、どういうことですの?」
「クソッ!!」
先程、全滅させたハゲワシ約20羽が獲物を狙うようにまた空中を羽ばたいている。クロエも弐龍も戦闘のプロだ。トドメを差し損ねることは絶対にない。それも”魔獣”とはいえ、動物相手に。
全羽、ピチャピチャと血を噴き出しながらも、痛がる様子もなくクロエたちに依然として攻撃を仕掛けようとしている。
「ちっ。こいつら不死身ですの?」
「傷の深さから、確実に致命傷を負っているはずです。これではまるで……、ゾンビのようだ」
元々グロテスクな見た目をしていたハゲワシたちが、クロエたちに致命傷を与えられた事により、更にグロテスクさが増している。
「ちっ。クロエ様、少し俺から距離をとって下さい!」
クロエは弐龍の言う通り、弐龍から距離をとる。
「爆風!! 風神の舞い!!」
巨大な竜巻がキーンという耳鳴りのような光速回転の音を立てて、ハゲワシ全羽を巻き込む。鉄筋コンクリートで作られた、立派なキャンプの管理棟も一瞬で
ハゲワシたちの体も無惨にもげていく。流石に原型を保っていない状態までダメージを与えられると、もう攻撃は仕掛けて来れないだろう。
「ウ、ウソだろ?」
ぐちゃぐちゃに肉片になったハゲワシたちの体は、不思議と1カ所に集まりだし巨大なハゲワシへと姿、形を変えていく。
全長20メートルくらいのバケモノ鳥。流石のクロエたちも息を飲んだ。
ハゲワシが羽ばたく風圧も、弐龍が放つ軽めの竜巻と変わらない。
『ちっ。楓花が心配ですわ。このクソ鳥……、力はそれほどでもかなり厄介ですわ。それに
ギュアアアアーッ!!
大きくなったことで威力は段違いに上がったと思っていたが、素早さも個体の時と比べ物にならないくらい段違いだ。クロエはギリギリで避けたが、弐龍はクチバシの先端が右腕をかすったようだ。
ボタボタと血を流す弐龍。出血の仕方から最早、長期戦は困難だ。
「ちっ。護衛隊長ともあろう俺が立て続けに大失態だぜ。こんなんだから、下の者から反逆者を出す事態に……。すまねぇ、みんな」
「お、落ち込んでいる場合ではありませんわ。弐龍は人間にしては、よくやって……」
弐龍の切れ長の目の緑色の瞳に強大な威圧感を感じ、クロエは弐龍の気持ちを汲んで弐龍を慰めるのを止める。
「クロエ様。お手数をおかけしますが、これより奴を細切れにします。俺の勘ですが、奴にはきっとどこか核となっている部分があるはずです。不死の命を持つ者など、神だけで十分です。あんなバケモノ、きっと何か弱点があるはずです。それに……」
弐龍は持っていた大きな扇子を大きな壺に変える。それと同時に暴風が弐龍の体を包み込む。
「不死鳥にしてはキモすぎるんだよ。このバケモノ鳥……」
弐龍の体は巨大化したというよりも、半透明の具現化した風神と化した。
姿は緑色の半透明でモヤモヤとしているが、大きな壺を持ちハゲワシに攻撃を仕掛ける。
「
風神化した弐龍が大きな壺を叩く。すると壺から斬撃にも似た、無数の風が吹き出しハゲワシの体を弐龍が言った通り、細切れにしていく。
クロエは戦闘よりも、その様子を見極める事に全集中を割く。
ッ!!
一瞬で肉片となったハゲワシは、元の巨大な怪鳥に戻るがクロエは見逃さなかった。細切れにされた肉片の中に、黒色の球のようなものが存在し、その黒色の球を中心にハゲワシの体は再生されていく。
こちらも巨大化した弐龍にクロエは大声で声を掛ける。
「弐龍!! もう一度、先程の技を頼みますわ!!」
弐龍は先程の技をすぐにハゲワシに対して放つ。
再び鋭利な風によって細切れにされていく、ハゲワシの体。
その肉片に飛び込むようにクロエは
「
クロエのカルンウェナンで一刀両断にされた黒色の球。
黒色の球は再生することなく、周囲に飛び散っていたハゲワシの肉片も再生をせずに、その場に散らばっている。
「弐龍! やりましたわ! すぐ楓花のもとに向かいますの!」
風神化した弐龍はクロエの言葉を聞くと、大きな壺の先端に体を置くようにクロエに促す。
「クロエ様! 俺もすぐあとを追いますので! その前にクロエ様が先に向かい様子を見てきてくださいますか?」
弐龍に促されるがまま、大きな壺の先端に足を置くクロエ。
「クロエ様なら着地することも造作もないでしょう。頼みましたよ! クロエ様!」
「任せておけ! いいぞ! 弐龍!」
クロエのその言葉を聞くと弐龍が壺を叩く。すぐにクロエの体は壺から放出される風により浮き上がり、クロエの
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます