10-2 TPOをわきまえろ!
———屋敷前
クロエ、ソフィア両名が4駆のアウトドア仕様の高級車の前で、楓花、リリアーヌが屋敷から出てくるのを待っている。
運転席には
もう1人、
轟は自分よりもかなり地位の上の者、弐龍にビビりまくっているようだ。
しかし、弐龍はエマやリュカのような高貴な者に仕えるといった性格ではなく、どちらかと言うとヤンチャな性格だ。
身分が自分よりもかなり下の轟に対しても、フランクな口調で話かけている。
「なぁ、轟。これ、いい車だなー。俺の好みだ」
「はっ。ありがとうございます。弐龍様」
「はははっ。様は付けなくていいよ。轟も楓花様の専属運転手とはいえ、要人護衛部隊の所属なんだからさー。そうだな。俺のことは弐龍さんか、隊長とかでいいよ」
「あ、ありがとうございます! 隊長!」
「おお。いい返事だな。いま要人部隊は少しだけ混乱状態にある。轟、お前にも迷惑かけるな」
「と、とんでもないです! この轟、楓花様の運転手兼護衛を全身全霊で務めさせて頂きます!」
「おう!」
車中で男同士の粋なやり取りがある中、クロエもソフィアも外で若干イライラしていた。
ソフィアは
クロエはプレートアーマーをかぐやに両断された事により、エレーヌの手が空くまで普通にこの世界で買い揃えた服を着ている。
2人共、今日は女性キャンパーの恰好だ。
イライラしている理由は1つ。
楓花とリリアーヌが楓花の部屋に籠ったまま、もう1時間近くも出てこない。
「女性の身支度にしては、時間かかりすぎですわ!」
「ほんまやで。流石にちょっと時間かかりすぎやで。キャンプに行くのに何をそんなに準備することがあるねん」
「お待たせー」
2人は即座に声の方向を向き、苛立ちをぶつけようとするが……。
楓花、リリアーヌの姿を見て、絶句した。
楓花は上下迷彩服を着ていて、頭には迷彩柄のヘルメットをしている。
リリアーヌは自身のプレートアーマーを迷彩色に着色している。
2人して背中にアサルトライフルのモデルガンを背負っている。
クロエ、ソフィア共に顔を見合わせる。そしてコソコソ話を始める。
「え? 私、聞き間違えましたの? キャンプではなく、戦場に行きたいって楓花は言いましたの?」
「いやいや。私もキャンプって楓花が言ったのを確かに聞いたで。戦場なんて一言も聞いてへんで」
2人は思考を放棄することにした。
楓花、リリアーヌ共に思考回路がまったく同じだ。2人共、天然なのか。
それならば、あまり込み入った事を聞くのは、どこか申し訳ないと思いクロエとソフィアは先程までの怒りを忘れ、普通に楓花、リリアーヌに接した。
楓花が屋敷から出て来たことで、車中にいた2人もすぐに車外へと出る。
轟、弐龍も声を出すまで1分ほど時間を要した。
2人共、クロエ、ソフィアとまったく同じ感覚に襲われたのだろう。
「ふ、楓花様、お車の方へ」
「ふ、楓花様。本日は私も楓花様とご同行させて頂きます」
「轟さん、よろしくお願いします。あっ、弐龍さん。弐龍さんもよろしくお願いします」
楓花はリリアーヌ以外が混乱している事にはまったく気付かず、挨拶を済ませ車に乗り込む。背中に背負ったアサルトライフルが車のドアに引っ掛かり、楓花は地面に倒れそうになるが弐龍の素早い動きで、何とか楓花は尻もちを付かずに済んだ。
リリアーヌも自身の背負うアサルトライフルのせいで動きづらそうだが、頑なにアサルトライフルを下ろそうとしない。
そんなド天然娘、2人に続くようにクロエ、ソフィアも車に乗り込み、車はキャンプ場に向けて出発した。
———キャンプ場
1人の青年が中年男性を2つ折りにして、付近にあった樽の中に強引に詰め込む。その光景を目の当たりにして、ガクガクと震えるキャンプ場の従業員、一同。
「おい。今日から俺がこのキャンプ場の経営者な? 分かったか? 少しでもヘマをした奴は、このジジイのように容赦なく殺すからな?」
圧倒的な力を前に頷くしかない従業員たち。キャンプ場の経営者であった中年男性は突如、キャンプ場の経営権を寄越せと言ってきた禍々しいオーラを放つ青年に勇敢にも立ち向かった。……そして、一瞬の内に殺された。
このキャンプ場。楓花の父親が貸し切りの予約を入れたキャンプ場であった。
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