7-7 問題は迷宮入り
「なるほど。楓花を取り巻く環境には色々と問題があるのだな。それでクロエ、ソフィアは、この百合園家に滞在していると」
「うん。クロエちゃんにソフィアちゃん、エマちゃんにリュカ君、そして私の運転手の
「うむ。楓花の護衛にクロエにソフィアも付いているという事なら、私は必要ないだろう。私はリュカに付いて、この世界にある武器の研究に当たるとしよう」
「あ、あの、エレーヌちゃん……」
楓花は自分よりも背が小さくなったエレーヌの前で、顔を少しだけ赤らめて意を決したように話す。
「わ、私、お友達が全然いないんだ。ここにいるみんな、私のお友達になってくれたんだけど……。良かったら、エレーヌちゃんも私のお友達になってくれないかな?」
エレーヌは楓花の言葉を疑問に思ったのか、腕を組んで考え込む。
その様子を見たソフィアが、エレーヌの耳元で耳打ちする。
「エレーヌの考えとう事、分かるで。確かにエレーヌには楓花と友達になるメリットはないかもしれん。でもな、リュカの主は楓花や。楓花の頼みを聞いといて、損は無いと思うで。それに……」
「うむ。確かに友人になるくらいなら。ソフィア、それに何だ?」
「楓花と一緒におると、不思議と楓花の魅力に惹きつけられるんや。まぁ、それは追々エレーヌ自身が感じる事やろうけど」
「……そうか。だが私は、しばらくリュカと行動を共にするぞ」
そうソフィアに話し終えると、エレーヌは楓花の方を向き笑顔で楓花の願いに答えた。
「分かった。私も楓花の友人になろう」
「ええっ! ありがとう! これからよろしくね! エレーヌちゃん!」
クロエと出会ってから、どんどん友達が増えていくが、友達ができる度に初めてクロエと友達になった時と同じように全身で喜びを表現する楓花。
その楓花の様子を見たエレーヌは、これまで余程ひとりぼっちで寂しい思いをしてきたのだろうと、少しだけ楓花を不憫に感じ、優しい目で見守る事にした。
「だったら、エレーヌちゃんのお部屋は……。ここは、もうクロエちゃんとソフィアちゃんのお部屋だし……。あっ、一応、お父様にも報告をしないと」
「楓花よ。私は地下の武器庫で寝泊まりしても構わないぞ。食事と風呂だけ、その……楓花に甘えさせてもらうが」
「え? 食事やお風呂は全然、大丈夫だけど……。地下室で本当にいいの?」
「ああ。むしろ武器に囲まれて生活できるなんて夢のようだ。食事などの件は、ありがとうな」
楓花は笑顔で頷くと、父親に電話を掛けた。ソフィアの時と同じように、楓花の父親はエレーヌを屋敷に住まわせる事を快諾したようだ。
「エレーヌちゃん、お父様の許可もでたし屋敷のみんなには、私から伝えておくね。食事の時だけ、できるだけ一緒にしようね。あと、気が向いたら私とお話もして欲しいな。あっ、あとはエレーヌちゃんの自由だから」
「ああ。もちろんだ。これから楓花に世話になるのだ。武器の鍛冶や、その他研究以外の時間は、出来るだけ楓花と過ごすようにする。楓花の方から、私に用があれば私はほぼ地下室にいるつもりだ。遠慮なく訪ねてくると良い」
大きく笑顔で頷く楓花を見ると、エレーヌは元の身長に戻り今度こそリュカを拉致して地下の武器庫に案内させた。
近くにいたエマの手を握り、笑顔で喜びまくる楓花。その楓花の様子を見て、エマもソフィアも嬉しそうだ。平和な空気が、クロエの部屋いっぱいに充満していたが……。
1人だけ顎に手を置き、真剣な顔つきで考え込む者がいた。
「クロエ。また、ふて
「ん? ああ。それはもう絶対にしませんわ。違うことを考えていましたの」
「そうか。ならええけど……」
クロエの真剣な顔つきは和らぐことは無く、険しさが増すばかりだ。
ソフィアはそんなクロエの様子を見て、楓花に余計な心配をさせないよう大袈裟にエマと共に楓花の周りで、楓花と同じように喜んだ。
『やはり、ひっかかりますわ。ソフィアの時は私が意地を張っていたため、そこまで疑問に思いませんでしたけど。楓花の父上。私がこれまで楓花の友人作りの邪魔をしていた、真犯人と睨んでいる人物。そんな人物が大した確認もせずに、短期間で楓花と同じ屋敷に2人も住まわせた。何を考えていますの? これまで楓花に近付いた者を排除してきた人物が、ここにきて真逆の行動。私達に楓花を何かから守らせているようですわ。何か罠でも? それとも楓花の父上は本当に何も知らない? 真犯人ではない? うむむ。分かりませんわ……』
その後、エレーヌも含め皆で夕食をとり、クロエは1人で一番風呂、その後、最近は定番になった楓花、ソフィア、エマの3人風呂にエレーヌも加わり一緒に風呂に入った。その間ずっとクロエは顎に手を置いたまま、考え事をしていた。
私の頭に迷宮入りという文字はないとクロエは以前、豪語していたがクロエの頭の中で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます