6-4 関西特有技法
何事もなかったかのように帰路につくクロエと楓花。
背後から物凄い勢いで何者かが2人に近付いてくる。
そして目にも止まらぬ速さで2人の前に立つ。
ソフィアだ。
全力で走ってきた割りには、息ひとつ切らしていない。
「あんた楓花いうたな! 私も楓花の護衛したいんやけど!」
クロエはすかさず全力でソフィアの脳天に空手チョップをする。
あまり痛がる様子もなく、ソフィアは楓花の方だけ向いて話を続ける。
「どうや? 私もクロエと同じくらい強いで! 護衛が2人になった方がええやろ?」
楓花は少し困った様子でモジモジとしながら、圧の強いソフィアに返事をする。
「あ、あの。クロエちゃんは護衛じゃなくて、私のお友達なんだけど……」
「なら、私も楓花の友達になったるわ!」
瞬時に答えるソフィア。楓花の手を強引に握り握手をしている。
この有無を言わさぬ圧の強さに相手の懐に入り込む速さ。
良く言えば西の人、一部の関西人特有の親しみやすさだった。
楓花は友達が増える事を嬉しく思い、ソフィアに良い返事をしようとしている。
それを見たクロエは。
『マズいですわ。エマやリュカならまだしも、
「楓花、ソフィアの事、屋敷の者が許しますの? 楓花の父上も反対するかも……」
楓花は少し考え込み、スマホを取り出し何処かに電話を掛けている。
「あっ、お父様。お仕事中にごめんなさい。お父様にお願いがあるんだけど」
楓花が電話を掛けている間、クロエとソフィアは殴り合いを始めた。
クロエの体術を軽くあしらうソフィア。
素早さはクロエが上だが、力や体術、剣を使わない肉弾戦だけならソフィアの方が圧倒的に上だ。
「あ、うん。うん。分かった。お父様、ありがとう」
『な?!』
(へへっ。もろたで……!)
楓花は電話を切りソフィアの方を向く。
クロエの体術を軽くあしらいながら、楓花の話を聞く。
「ソフィア……ちゃんも、私のお家に住んでいいって。部屋はクロエちゃんと共同だけど……」
「ええで。ありがとうな、楓花」
『ガーン! なんということだ……。コイツと同部屋だと……?』
「ふ、楓花! 私の部屋でソフィアと同居なんて嫌ですわ! 狭くなる!」
楓花は少し困り顔をしながら、クロエの方を向く。
「え? クロエちゃんの部屋、私の部屋くらい広いよね? それにクロエちゃんも私の部屋くらい家具少ないし……。2人で住んでも十分広いよ?」
「そ、それでも楓花!」
楓花は困り顔のままクロエを見つめたままだ。
クロエも楓花との暮らしが長い分、楓花の
『キーッ! こうなれば奴ですわ! 奴ならばきっと!』
クロエが悔しがる中、ソフィアは楓花を肩車する。
「わー! ソフィアちゃん、力持ちー! 楽しいー!」
「楓花、今日はこのまま楓花の家に帰ろか」
「えー! いいの? ソフィアちゃん、ありがとう!」
ソフィアに肩車されて喜ぶ楓花。
クロエはその後ろを悔しそうに、何か策を講じながら歩く。
やがて
轟は楓花の姿を確認すると、すぐ車から降り楓花を出迎える。
「お嬢様、クロエ姉さん、え?」
楓花を肩車している見慣れない女性に気付く。
「あ、あの、この方は?」
困惑する轟に楓花が笑顔で答える。
「轟さん、私の新しいお友達のソフィアちゃんだよー」
「お、お嬢様のご友人でしたか。その……?」
「今日からソフィアちゃんも一緒に住むんだー。お父様の許可もとってるよ」
「そうですか。ではソフィア様もお車へ」
ソフィアは楓花を肩から下ろし、お得意のグイグイと人の懐に入っていく
「轟はん、今日からよろしくな。ところで下の名前、なんて言うねん?」
「
「ほな今日から親しみを込めて叶夢似って呼ぶわー。私の事もソフィアって呼んでな。ソフィーでもええで。これからよろしくな。叶夢似」
ソフィアは轟の手を取り、強引に握手する。
轟も轟でソフィアの親しみやすさに即、心を許したようだ。
楓花とソフィアはすぐ轟の車に乗り込んだ。
1人、轟の耳元で
「おい、叶夢似。どういうつもりだ。ソフィアと仲良くすると刺し殺しますわよ」
「ひぃ! 勘弁して下さいよ! クロエ姉さん!」
轟の悲鳴を聞いたソフィアが車から顔を出す。
「あー。叶夢似、クロエの事は気にせんときー。その子、今日あの日で不機嫌やねん」
「ああ!? 何だとソフィア!!」
「おー、こわっ。叶夢似、そんな不機嫌な子、無視して早く帰ろうや。クロエが何かしてきたら私が守ったるわ」
「は、はい! ソ、ソフィー!」
轟はまさかのクロエをその場に残して、車を発車させた。
どんどん姿が小さくなっていく、楓花とソフィアを乗せた轟の車。
ボコッ!!
クロエはその場で拳による地球割りをした。
大きく陥没するコンクリートの地面。
『なんとかせねば。本当にソフィアに私のすべてを持っていかれますわ』
クロエは仕方なく、走って屋敷へ帰った。
そして屋敷に着くなり、すぐに最近従順なエマを呼び出した。
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