4-3 百合ジェンヌ
―――楓花争奪戦先鋒、エマ
カラーン♪
カラーン♪
「あ、エマちゃん。お待たせ」
「お疲れ様です。楓花様」
学校を終えた楓花に対し、深々と頭を下げるエマ。
慌てた様子で頭を上げるよう、お願いする楓花。
そして……。
お決まりの木陰から、様子を見守るクロエ。
『ひゃひゃひゃっ。流石、楓花の家来。固すぎですわ。それでは楓花の気持ちも
「で、では楓花様、参りましょうか」
「う、うん」
ロボットのように関節ガチガチで歩くエマ。楓花はその横を茶色の革のリュックを背負って俯き加減で歩いている。
『馬鹿め! あれでは楓花にまで緊張が伝わるだろうが! もう私の勝ち確定ですわ! ……ん?』
エマの前に急に楓花が飛び出す。
エマはロボットのように関節ひとつひとつを不器用に固めながら停止する。
楓花はエマの顔を見上げながら、少し顔を赤らめながらどう言葉を発するか迷っている。
『いいですわ、楓花。これであの女は
顔を少し赤らめながらモジモジとしだす楓花。
リュックの肩ヒモの部分をギュッと力強く握る。
その様子を見たエマは
はぁはぁと、徐々に呼吸が荒くなっていく。
『
楓花が意を決したようにエマに話かける。
「エマちゃん。その……、これ勝負だよ?」
楓花の言葉にエマは終わったといった顔をしている。
「だからね……。エマちゃんもクロエちゃんと同じように私に話して欲しいな」
「な?! (天使様ーっ!!)」
『な?! バカ楓花!!』
楓花の言葉に対しての反応は、エマとクロエで真逆だった。
「で、では、失礼します!!」
そう気合を入れなおすように大声を出すと、エマはニッコリと大学生のお姉さんのような優しい表情を楓花に向けた。
エマ・ミシェーレ。
変態に映ることが多いが普通にしていれば、かなりの美女。
しかも今日は楓花と
光沢のある空色のロングヘアをセンターで分け、緩いウェーブをかけかなり大人っぽい。服装も洗練されたパリジェンヌのような恰好をしている。
日本人がその服装をしていれば、浮くこともあるがエマはフランス人。
それもパリ出身。
まったく違和感がない。
先程のロボットのようなガチガチの雰囲気や
「楓花、帰ろうか」
「うん! エマちゃん!」
2人は手を繋いで歩き出した。
背丈がクロエよりは低いエマ、しかし150センチ代の楓花よりは高い。
街で噂の美人姉妹がパリの街を優雅に散歩しているようだった。
メリメリッ!!
クロエは指の力だけで大木にヒビを入れた。
『キーッ!! 悔しいですわ!! 使う必要はないと思いましたが私の
「今日はねーこういう授業があってね」
「そうなの。それは楽しそうな授業だね」
完全に
正統派綺麗美人のエマ。
正統派ロリ可愛い楓花。
すれ違う人間、男性はもちろん女性までもが振り向いて2人を目で追っていた。
……
急に楓花のスカートが浮き上がる。
それも風でフワッと浮くとかいうレベルではない。
小学生男子が女子にスカートめくりをするような強引さで、スカートがめくり上がっていく。
もちろん
必死に謎の力で浮き上がるスカートを押える楓花。
「きゃあーっ! なにこれ!?」
『ひゃははっ! 変態のエマだ! この状況で冷静を保てる訳……。なに?!』
エマは自身が身に付けていた、カーキー色のトレンチコートで必死に楓花を包み隠す。下に着ていた白いブラウスから薄っすらと下着が見える。
「エマちゃん、下着が……!!」
「楓花、エマのことは大丈夫! それよりもこれはなに? 風にしてはおかしくない?!」
クロエはというと……。
先程からエマのトレンチコートの大きめのボタンが目の中に喰い込んできて、目が発狂するほど痛い。
『がぁーっ!! 目がぁーっ!! 手が足りませんわ!!』
意味不明な我慢大会開幕である。
謎の力で浮き上がるスカートを押える楓花。羞恥心!!
自身の下着が白いブラウスから露出しているエマ。羞恥心!!
目に喰い込んでくるボタンを外すか、このままスカートをめくり続けるか葛藤するクロエ。
「エマちゃん、コート着て!! 私はいいから!!」
「楓花!! エマの下着の選択ミスだから!! 白いブラウスに紺色の下着だなんて……。 だから構わないで!!」
『がぁーっ!! 目がぁーっ!!』
「やっぱダメだよ!!」
楓花はそう言うとトレンチコートを強引にエマに返した。
ブチブチッ!!
「ぎゃあああああああーっ!!!」
「え? クロエちゃん?!」
トレンチコートのボタンが目の中に喰い込んでいたクロエ。
そのトレンチコートを楓花が強引に引っ張ったことで目自体を損傷した。
ボタボタと流れ落ちるクロエの血。
周りを見回す2人であったが、2人にはクロエの姿は見えない。
謎の血痕だけが地面に落ちている。
現実世界ではあり得ない事が可能なクロエの
2人は気のせいだと思うことにした。
「あ、風止んだ。ありがとうね、エマちゃん」
「……え? ええ。よかったわ。帰りましょうか、楓花」
「うん」
再び屋敷の方角に手を繋いで歩き出す2人。
数時間後、街中で噂になった謎の美人姉妹。
2人はパリの街を優雅に散歩するようにして轟の車まで無事に着いた。
そして轟の車に乗り屋敷へと戻った。
―――ある路地裏
「おい! もっと金出せよ!」
「い、いえ。それが全てで……」
「てめぇ。あまり俺様を舐めてる……あ? なんだ?」
恐喝にあっている青年は恐喝されている時よりも恐怖した顔をして、恐喝しているチンピラの背後を指さす。そして物凄い速さでその場をあとにする。
「てめぇ!! 逃げん……??」
チンピラは自分の肩を掴まれていることに気付く。
(ちっ!! サツか!!)
チンピラは観念した様子で背後を振り返る。
チンピラは全身から血の気が引いた。
背後には目が血だらけの女性。
長い髪は乱れ、服装もボロボロだ。
目からダラダラと血を流している。
それが余計に恐怖心を煽る。
「おい、貴様。目薬を買って来い。すぐ。じゃすとなう」
チンピラはすぐにドラッグストアに行き、自分の金で目薬を置いてある分、全種類買った。
女性は目薬をさすと見る見る内に目の傷が回復し、サファイヤのような青色の瞳を覗かせた。元の美人に戻ったが、チンピラは全速力で逃げた。
何故ならその女性が目薬をさした瞬間、あれほどの傷が一瞬で完治したからだ。
目の前の女性は人間ではないと直感したのだ。
「目は治りましたが、作戦は失敗ですの!! 楽勝だと思っていましたが、明日は油断できませんわ!!」
―――屋敷内のとある部屋
ボタボタ……
壁には無数の写真。空色のロングヘアの女性が写真を目で
「あはぁぁん。楓花しゃまー」
ボタボタタタ……
「なんて素敵な
トレンチコートに超小型カメラを何台も仕込んでいたエマ。
全角度からの楓花の容姿が見て取れる。
特にエマのお気に入りは例の謎の風事件だ。
エマは超高速でカメラのボタンを押していた。
楓花の下着を中心に。
彼女はいままさに
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