4-2 秘密の百合園
車中、楓花がこれまでの経緯を2人に説明した。
エマは困惑し、リュカは相変わらずうわの空だった。
一瞬沈黙するエマ。何か考え込んでいるようだ。
エマは意を決したように楓花に話かける。
「
一気に表情が曇る楓花。明らかに落ち込んでいる。
その様子を楓花の横で見ていたクロエが楓花に耳打ちする。
楓花はクロエの言葉を聞き、決心した顔でエマに話かける。
「ど、どうしても歩いて下校したいの。だ、ダメかな?」
楓花は言葉を発しながらクロエに言われた通りに、エマに対して少し上目使いで瞳をウルウルと潤ませ、少し顔を赤らめながら指をモジモジとさせながら言った。
何かに撃ち抜かれたように全身を
顔を赤く高揚させ、はぁはぁと興奮した息遣いをしている。
その顔つきは
せっかくの美女が台無しだ。
そんなエマにトドメをさすように、楓花は再度エマに話かける。
「だめ……かな?」
全身を
勝負ありだ。
クロエの脳内では車が屋敷に着く前に、勝負を決めておく必要があった。
屋敷の者、轟以外の人物は楓花が歩いて下校をしている事を知らない。
騒ぎになることは必至だった。
更にクロエはその情報が楓花の父親の耳に届くことを危惧していた。
バタバタともだえたエマ、ツインテールは乱れ綺麗に巻いていた毛先もアホ毛だらけになっている。
「はぁはぁ。分かりました。で、では、明日からエマが楓花様とい、一緒に……ひひっ」
最早、
頭の中で
「さぁ! 楓花様、このエマと一緒に下校を……っ!」
困った顔をしている楓花に助け舟を出すクロエ。
セクハラオヤジのような手つきで楓花に触れようとするエマの手を手刀で薙ぎ払った。
クロエ自身、繰り出した手刀はかなり手加減したつもりであったがエマは手刀された手を押えジタバタともだえ苦しむ。
『やはり、この女。実力者でも何でもありませんわ。
エマは涙目でクロエを睨みつける。
「おい! お前、どういうつもりだ!? そもそも、お前は誰なんだ!?」
「私はクロエ・ベアトリクス。エマの大好きな楓花の友人ですわ」
瞬時にクロエの口元を手で押さえるエマ。顔面が溶岩よりも真っ赤だ。
エマは小声でボソボソとクロエの耳元でクロエに話かける。
「……おい。誰が楓花様が大好きな、だ。確かにエマは楓花様を愛……うひっ。だが。それを本人の前で……ううっ。それに友人だと? 楓花様の初体験はすべてエマのものだ」
『げぇ。楓花の父親といい、この女といい、楓花の周りは
「まぁ、それはいいですわ。それよりも楓花の下校の相手は楓花自身に決めさせるのはどうだ? 楓花の
「そ、それもそうだな。よし、楓花様に決めて頂こう」
エマはクロエの耳元でコソコソと話すのをやめ、楓花の方を振り向き先程クロエが提案した内容を楓花に伝えた。
「楓花様。下校の件に関しましては、一旦この場にいる者だけの秘密にしましょう。ところで、楓花様に恐れながらご提案があるのですが……」
一旦は下校を認められ喜んだ楓花であったが、エマの提案がすぐ気になり楓花は首を傾げながらエマに問いかけた。
「エマちゃん、ありがとね。ところで提案って、なにかな?」
楓花は無自覚の必殺技、
クロエはすかさず楓花の耳元で楓花に呟く。
「楓花。もうそれはいいですわ。普通に話さないとエマが
楓花は首をまた傾げた。純粋な楓花には状況がまったく理解できない。
この
クロエはさすが……
「はぁはぁはぁ……。ひゅ、ひゅうか様、エマとそこのクロエ、どちらがひゅうか様の下校相手にふさわしいか選んでいただきちゃいのでしゅ……。うひゅひゅー」
『コイツ、ダメですわ。このままではマジで違う世界に行きますわ。ここは私が』
「楓花。私とエマ、どちらが楓花の下校相手にふさわしいか楓花に決めてもらいたいのですわ」
楓花は突然の申し出に困惑した表情を浮かべる。
そして泣きそうな声で答える。
「わ、私にどちらか選ぶなんてことできないよ……。2人一緒とかじゃダメかな?」
クロエは楓花の両肩を力強く握る。そして一喝する。
「楓花! 楓花の下校は許されないことだって楓花自身が一番分かっているだろう?
クロエの真剣な表情と声色に楓花も無言で頷く。
楓花自身、これまで歩いての下校が許されなかった事、自分のワガママにクロエ含め数名を巻き込んでしまった事を再度、理解した。
「人数が増えれば、それだけリスクも大きくなる。楓花の下校に関してはこれまで通り運転手の叶夢似とあと1名の少数で行う必要がある。分かりますわね?」
クロエの言葉に楓花は無言で頷く。
「明日はエマ、明後日は私、それぞれ楓花と下校をする。それぞれエマの時は私が、私の時はエマが外部の意見として外側から監視する。明日、明後日だけは楓花含め3名の
楓花は意を決したような顔つきで深く頷く。
『うひゃひゃ。この勝負、もう勝敗は決まっていますわ。そこの
楓花を巡る女達の闘いクロエが優位に立っていると、この時点では誰もが思っていた。
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