第4話 カテゴリー:銃腕《ガンアーム》
「そんじゃカヤ。リーダーとしての初仕事」
ルカたちの傭兵団のリーダーになったものの、皆の戦略的な運用と役割分担は確立気味で、皆のトランサーがどういうものかは追い追いという話に。
指揮官的な機能は既に足りてたわけで、その辺はまだ私は見習い。
「紙媒体に出力した資料は読んだぁー?」
「うん。情報がすっごく揃ってる」
既にレイチェルさんとナタリーが発言してるけど、この部屋にはルカもミサもリズさんもいる……つまり今は作戦会議中。
「荒野だらけのこの一帯を抜けて少しは栄えた区域に移動したいんだけど」
「その通り道にある集落はここ最近でレジタンス組織――スネークウルフが占拠してるのよね」
ルカに続いてミサが言ったけど私の手元の資料にはスネークウルフのメンバーの顔写真とかもあった……レイチェルさんが続ける。
「スネークウルフはまだ小さな組織でリーダーしかトランサーを持ってない。強行突破どころかスネークウルフを壊滅させるだけの戦力は私たちにあると考えていいくらい」
「でもここ、ウルムが生み出したAI――ブレッグの制御下にある兵器工場が近いんだよぉー。派手に暴れたら目を付けられちゃいう」
ナタリーさんのふわわふ気味の言葉にミサが続ける。
「そしてスネークウルフは集落を襲撃したわけだから、住民たちは酷い目に遭ってる……それを見過ごせるのかどうか」
戦力はある方で、事前に情報を収集して作戦を立てる事にも慣れている……そんな組織の中で私がリーダーとして出来る事何て無いように思えるけど。
「ちなみにリズたちはルカを除き、全員手を血で染める事には慣れています。それを今回活用するのかどうか」
こういう事。
どんなに優秀な人材で構成された組織でも――それで何を為すのか定まってないと動けない。
どのように動くのか。人助けをするのか、人殺しをするのか……組織の方向性を決めてその舵取りをするのがリーダーの仕事。
「銃撃ってるんだから、その内誰か殺すんじゃないかって思ってるけど……そもそもあたし、皆と出会う前から派手な戦闘ってした事ないから……」
「アタシのいた組織に連れて来られても内側で雑用させてる間に組織亡くなったかのよね」
ルカとミカは本当に仲良く喋るなぁ……さて、ぼちぼち私も発言するかな。
「じゃあまず私の好きなように提案してみるけど……イヤだったら言ってね?」
そんな感じで話を進めてから暫くして。私はルカとミサとリズさんと一緒に問題の集落まで来てて、レイチェルさんとナタリーさんは基地に留まって後方支援。
さて、私が決めた内容だけど――
「おい、早く引き金を引け! お前は見込みがあるんだ……こんな役立たずさっさと殺して俺たちと一緒に色々殺して回ろうぜ!」
そんな聞き捨てなら無い台詞を吐く男性を中心に、私のいた世界なら中学生かも怪しい男女複数いる、広場と言え無くもない開けた場所まで辿り着く。
怒鳴られてるのは女の子で、その女の子が手にした銃口の先にいるのも女の子。どちらも可愛いけど、向けられてる子の頬や腕には殴られた後が新旧問わずある……他の子たちも目の前の光景に怯えた様子。
「少年兵の育成現場ね。下手すりゃ、あの怒鳴ってる男性も昔同じ事された」
ミサがしれっとした口調で言ったし、実に分かり易い光景。
見ず知らずの人間が酷い目に遭ってたのを目撃した場合、人によって
そこまで他人に関心があるんだったら、こんなに学校のクラスでの出来事の記憶があやふやじゃない。会話の内容が辛うじて残ってて、誰が話したか定かじゃ無さ過ぎる。
平和だったけどね。険悪な空気とは無縁で他愛もない言葉のやり取りが何だか暖かくて……私はよく机に突っ伏し眠ってた。
とにかく、こういう状況に遭遇した場合どうするかは決めてたので私は口を動かし始める。
「じゃ。ルカ、ミサ、リズさん」
まずは集落の中を探って、スネークウルフが随分と酷い事をしてた場合――
「ぶちのめそう。子供たちは傷付け無いように」
ぶっ飛ばす。それでスネークウルフ全員と戦う事になったら迎え撃つ。
その結果、相手の武器や弾薬が手に入るなら貰って行くって感じだね。
そういえばリズさんはいつも通りメイド服姿だけど、私が声を発す前にいた場所には既にいない。
「がふっ!」
怒鳴ってた男性が呻き声を上げるや、反撃する間も無くそのまま倒れ込む。
リズさんのトランサー対象――カテゴリーは私が持ってるから、ナイフと殴打の近接だけで戦ってる。倒れた男性を空かさずミサが拘束して、女の子が持ってた銃はルカが取り上げた。
「あ、出来た」
子供でも持てる自動小銃だったからルカのカテゴリーだったみたい。
そんな展開に子供たちは呆然としてたけど、
「なんだぁ、てめぇら!」
一連の光景を遠くで眺めてたスネークウルフの仲間の声が辺りに響く。
そしすぐに武装した男性六人が駆け付けて……リズさんが鮮やかな動きであっと言う間に倒して、ミサが拘束してルカが持ってた武器を回収。
こんな感じで、無責任だけど解放出来る住民は解放して、スネークウルフから取盗れるものは取る。
トランサーは対象の武器が無いと発動出来無いから、武器は補充出来る時に存分にしておく。
子供たちは正義の味方でも駆け付けたような雰囲気で盛り上がってて、
「助けてくれてありがとうございます!」
何てお礼を言って来たけど、別に正義の味方の真似事をがしたくてこうしたわけじゃない。
通り掛かりに出来る事をやっておこうって軽い気持ち。簡単に救えたかもしれない人と、難なく手に入ったかもしれない武器を逃したく無かったのが理由。
「捕まえた人たち、どうすればいいのかな?」
女の子の一人が言ったけど……本当にこれ問題。
警察みたいな組織が近場に無いから私らで引き取るか、余計な事をしない内に殺してしまうか……でもそれを決めるのはまだ早い。
「あ、お姉ちゃんって右目の色違ーう。こっちもきれいだなぁー」
私の髪は純白とまでは行かないけど白さのあるベージュに青紫の色を染み込ませた絶妙な色合いで、左目も同じ様な色で乱暴に言えば、ほどよい青紫色。
オッドアイだから右目の色は違うけど……女の子の呑気な声を他所に、私はルカに向かって一言。
「ルカ!」
「うん!」
リズさん以外の皆はトランサー出してるんだけど……ここでルカに青いバリアを展開してもらう、何せ少し前にこんな連絡が来たからね。
「十時方向に敵影。遠距離攻撃の体勢に入ってる」
ナタリーさんが普段の口調をやめて聞き取り易い声で発音してくれた。ヘッドマイクみたいな端末を事前に渡されてて、そこから音声が来た感じ。
展開した青いバリアに向かって、手首から先の部分がごついライムカラーの炎の尾を引いて飛んで来た。ロケットパンチと言った方がいいかな? 一目でゴツイデザインだって判る代物だったし。
そんなロケットパンチがバリアと衝突するや、かなりの規模の爆発が起きた。
子供たちは「きゃあー」とか悲鳴を上げ、地面の振動もなかなかのもの。
「……防ぎ切れた」
爆煙が晴れて行く最中、ルカが小声で私に報告。
それから程なくして、男性の声が響いたけど……資料にあった通り、このスネークウルフって組織、男性しかいないなぁ。
「どぉだぁー! 俺様の力、思い知ったかぁー!」
そんな威勢も煙が晴れて行く内に私たちが無事な事を知って、
「ちっバリアかよ……」
不機嫌な声を出したけど、そんな男性は少し離れた場所にある家屋の上。
結構顔がよくて私とはまた違う青紫色のミドルヘアの髪だから、可愛い服着て女装すればいい感じになりそう……かなり大柄で全体的に筋肉質だから無理があるかな?
「だが、プロパティーがブルーって事はな……」
男性の右腕全体はゴツイ甲冑のようなもので覆われてて、大分使い込んだのか錆とは違う汚れ具合で彩られてるけど色自体は多分、少し青色を混ぜた灰色。
そしてあれは金属製の防具に留まらず射撃機構も備え
だからさっきのロケットパンチは――
「それだけリソースの消費も多いってこった!」
更に叫ぶ男性が右手を突き上げると、概ね灰色のガンアームはライムカラーの光に包まれ、すぐに光が弾け飛ぶとガンアームの色と形は変わっていた。
金属の光沢が減った黄土色のアームは虫の背中を見てるような気分にならなくも無いデザインで大きさも一回り増した感あるけど。
「俺様のこの力を前に――」
未だに右手を突き上げた男性だけど、その手の平の先にライムカラーの光球があるんだけど、これがデカイ。
カプセルトイってあるけど多分あれ、軽トラックが原寸大で入り切るサイズ。
そんな大きさのライムの球体が弾けると元の大きさ通りの金属の球体が出現し、落下する事なくその位置をキープ……
「いつまで持つか、見ものだぜ!」
すっかり威勢を取り戻した男性というかスネークウルフのリーダー――ウルファスは生成した巨大な鉄球を触れる事無く結構な速度で私たちに向けて放って来た。
金属球が間近に迫る中、表面には何やらレリーフが施されてて、それが結構複雑な模様なのを私の両目――青紫系の左目と鮮やかなピンク色の右目は捉えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます