第2話 オッドアイは転生後
「あたしはルカだよ。あなたは?」
和名で来たらカヤノのままでいいと思ってたけど……合わせてみるかな。
私は目の前の銅板にピンク色を混ぜたような長い髪を前の方でおさげにした……何か髪の所々が銀色でやたらと赤く反射する。
とにかく私はルカにこう返した。
「カヤ。よろしくねルカ」
名字どころか名前の最後まで省略する事に。
かやのんと呼んで来る女の子が結構いたから、カヤノって名前は嫌いじゃ無いけど……勢いと気分だね、これ。
「それで……どうするの?」
琥珀色の瞳で私の方を見ながらルカがそう聞いて来た。ちなみに私の瞳は左右で色が違ってて右目が隠れるように前髪が伸びてる……視界には支障無し。
転生前はオッドアイじゃ無かったし、髪の長さもこんな風に右目側が長いアシンメトリーじゃ無かったけど、全体の髪の長さと形状は大体合ってる。
そんな髪の色は……いい感じに白系なセーターに青紫の絵の具がほどよく染みればこんな感じの色合いになりそう。
丁度、辿り着きたかった場所まで来てたので私は言った。
「バリアを解除してこの足場を止めて……あとは援護頼んだ」
サーフボードはルカか遠方で誰かが操作してるのかと踏んでそう言ったけど……とりあえずボードは停止……よく今まで振り落とされなかったなぁ。
それじゃあ近場にある瓦礫に対して……手当たり次第に銃弾を浴びせる。
「燃えた……」
私のハンドガンから放たれた弾に当たった瓦礫はルカが言ったように燃え上がって……その炎が対象を包み切った時が私のトランサーの見せ所。
「浮いた!」
こんな風に私のトランサーは……放った弾丸による炎で包まれた対象が、何らかの制御下に無いのならば、それを自在に動かせる。
いわゆるテレキネシスみたいだけど、この炎はすぐに燃え広がる速度が落ちるから建造物クラスの大物は炎で包み切れないと思っていいね。
自分に当てれば自在に飛行出来そうだけど、この炎はしっかり対象にダメージ与える感じで、燃え尽きるまで操作可能って事だから多分私の体が黒焦げになる。
「ルカ! アイツの弱点って何処?」
「え、えっと……」
急に大声で話し掛けられた事でルカの体がビクッて動いたから……そのなかなか立派な胸部分がそこそこ揺れた。
私の見立てでは今は着やせしてて、かなりのものかなと……私もクラスではそこそこ以上に大きい方で、転生したこの姿ではやや一回りボリュームアップ。
そんな事考えて無いで、動かせる瓦礫持ち上げようか……重さは感じなくて感触というか手応えみたいなのだけが伝わって来る。
「胴体の中心部分にあると思うけど、とても辿り着ける深さじゃない……レーザービットの方を狙って!」
「おっけー」
ルカに返事すると同時に丁度八個ある大きな岩をワイバーン周囲のビットに向けて投げ付けるように動かす。
弾丸を当てないのかって聞かれれば、あの弾丸、着弾と同時に炎に変化する感じだから変身前よりも威力が落ちてる……やっぱり初期装備はアテにするもんじゃないね。
さてワイバーンに飛来した瓦礫は何本ものレーザーで穴だらけに……燃やして無い瓦礫はまだあるし、撃墜されてない瓦礫が今ビット一機に向かってるけど……そう思ってたら銃声が響く。
ワイバーンの頭部目掛けてルカがマシンガンで集中砲火してたので私は
「弱点は腹部じゃなかったの?」
「口の中に強力なレーザー砲があるの! あれを破壊出来れば……」
そう言って更に銃の連射を続けるルカ……少しはヒビが入って来たけど。
「んー、やっぱ硬い!」
そんなルカを見て、私は火力不足を痛感。
もういいよルカ。レーザービットだけでも破壊しながら逃げよう。
そう私が言おうと口を開いた瞬間――
大きな牙が並んだ鬼の形相を思わせるような形状の炎みたいなものがワイバーンの頭部目掛け飛んで来た。
ライムカラーの発光体だから炎じゃないかも……でも重要なのは鬼弾がワイバーンの頭部に命中した時、破壊力がありそうな規模と音で爆発した事。
レーザービットたちが見えなくなる程じゃ無かったから何とか対処して……爆炎が晴れた頃にはワイバーンの頭部のヒビは今にも壊れそうなくらい広がってた。
そこへルカが集中砲火の続きをして、
「割れた!」
と叫んだ直後、お目当てのレーザー砲らしきものが見えた。
ここで私は粉々気味に砕けた方の瓦礫に弾丸を放ち……その小さな瓦礫群を砲口目掛けて突撃させる。
無事にレーザーの発射口を瓦礫で塞いだのを確認した私は言った。
「今の内に壊そう!」
「うん!」
小さい瓦礫じゃすぐ燃え尽きるから次々と補充する必要があるけど、頭部が砕けた事により発生した金属片だって参加させられる……破片の方はもう何者の制御下にも無いからね。
瓦礫と落ちた金属片を狙っては動かし、ルカと一緒にレーザー砲へ集中攻撃……やがてワイバーンの口の中で爆発が起きる。
「やったー!」
この状態で大掛かりなレーザーを撃とうとしても上手く行かずに大爆発とかになり兼ね無い……最大火力を封じたと見て私は言った。
「これで逃げ切れるようになったかな」
「だね!」
ルカが返事すると同時にさっきの青いバリアを展開。ビットの方のレーザーなら防げるって事だね。
それから私とルカは時折バリアを解除してレーザービットを減らしながらサーフボードで進んで行き、ある程度まで進むとワイバーンは追って来なくなった。
「侵入者を排除する巡回兵器だからね、あれ」
ルカがそう言ってから暫く進むと女の子の姿が見えて、サーフボードはそこで止まった。
「何処の誰だか知らないけど……全くの役立たずってわけでも無いようね」
両側のボリュームたっぷりのビッグテールの女の子の髪はワインレッドだけど、所々に金色の部分があって瞳はペリドットと、今みたいなキツイ言動と違って落ち着いた色。
胸は私くらいかな……さっきルカが「ミサちゃーん!」と言いながら抱き付いてそれが今も続いてる。
「いい加減。離れなさい、よ……」
そんな状況でさっきの台詞だったんだよね……さて、それじゃ質問するか。
「ずっと……見てたの?」
「その察しのよさに免じて答えてあげる。まぁ音声はルカから受信してたけど、アタシのトランサーは発動中、結構遠くまで視えるのよ」
剣と魔法の世界じゃないけどトランサーっていう不思議な力がある世界みたいだなぁ……そしてトランサーは銃の威力を上げるとは限らない。
「その上、ライムのプロパティーであの威力のエネルギー弾……またミサちゃんに助けられちゃったなぁ」
「ルカのバリアだって二重掛け以上なら凄い防御力じゃない」
『プロパティー』何て言葉があったけど……さっき流れ込んで来た情報はあのトランサーの全容であって、その辺の用語の知識とかは無し。
ここらで聞いてみてもいいけど、こんな場所で突っ立ってていいのかな。
そう思ってたら、案の定――
大きな地響きが聞こえて、その方航行を見れば……小屋なんか踏み潰せそうなくらいの大きな獣の足と爪が見えた。
全体を見ればチョコレート色で、所々に黒い模様。
咄嗟に横から眺めたけど……何だか虎と言うより「豹」の印象が強い。
そんな四足歩行メカを見て合点が行った。巡回兵器――
さっきのワームやワイバーンは斥侯のようなもので本当に侵入者を排除するのはこの大型兵器。
解らない事だらけのこの異世界で、私はそう確信していた。
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