第41話『EXランクのギルド嬢の実力』

 ここはパノラマ島の近海の海上。

 次は、リリアだ。

 ギルドでは計測不能の評価を得ている少女。


 そして、シンが自分の嫁だと勘違いされている子でもある。

 勘違いって何だろうか? 哲学です。



《海岸の賊は掃討完了した。リリアの方の首尾は順調か?》

「任せてくだっさい! クロノ先輩、余裕っスッ!」



 賊は一斉攻撃の失敗に学んでいる。

 島から距離をおいた場所に母艦を停めている。

 そこから、小舟で兵を送っているのだ。


 ルルの超大規模範囲魔法でも海全体を攻撃するのは不可能。

 というか、もしそれが出来たら世界が終わるか。


 賊も失敗から学び対策をし、新たな戦略を立てる。

 敵を分散させる。なかなかに考えられた策だ。だが。

 

「その周到な策を、圧倒的な個の力でぶっ潰させてもらうぞ」


 物事にはすべて、例外が存在する。

 身を持ってそれを知ることになるだろう。

 冥土の土産として持っていくが良い。



「ッと! 先輩見ていてくれるッスか?! これは〈ハッソー・トビ〉っていうスキルっす! 船上をピョンピョン飛んで、悪党を皆殺しにする超スキルっす!」



 船を飛ぶまでは分かる。

 皆殺しにするスキルって、すげぇな。


 おっ、また飛んだ。


 目測で50メートルはある。

 揺れる足場を危なげもなく。まぁ。



「先輩。しゃらくさい偽装艦隊は、まかせてくださいッス! 第二派なんて絶対に出させやしないッス。 撤退も許さないッスよ! 今日は、ひさびさに本気をださせてもらうッス! ギルドのEXランクが伊達じゃないって、見せつけてやるッスよ! いくっすよ! 〈モード・オートマトン〉」


 リリアの目のハイライトが消えた。

 両手には曲刀を構えている。


 ゆらぁり、ゆらぁりと、歩いている。

 筋肉は完全に弛緩しきっている。

 体は船の揺れにあわせ、ゆっくり左右に揺れる。



「・・・熱源数375・・・殲滅・・・開始」


 

 ギュィーンッ! ズゴゴゴゴッ、メキッ、ギュイーン!

 ガリガリガリッ! スザススッ――ギャリリリリリッ!

 ガンガンガン! ボキボキ、メキメキ、ギリリリリッ!



 ……。あまりに凄惨な光景だ。

 リリアの活躍は音声実況でご容赦いただきたい。

 これは表現してはまずいヤツだ。自主規制しなくちゃっ。


 EXランクは一国の軍隊に匹敵する?

 いまなら分かる。事実だ。

 ギルドが規格外としたのは当然のことだ。

 もはや戦争ですらない気もするけどね?


 短めに表現するなら人間挽肉機だ。


 双刀のくりだす連撃が風の刃になる。

 双刀が生みだす風の刃に吸い込まれ。

 その風にのみ込まれた賊は。……。


 ……ここから先は言えねぇ。


 EXランク。……ヤバいな。

 おい、シン。聞いてるか?


 なっ! ギルド馬鹿じゃなかっただろ?

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