第40話『姫騎士フレイと忠義の兵』

 ルルの戦況を見て通信魔法を別の場所につなぐ。

 通信魔法の相手はフレイだ。


《フレイ、賊が海岸近くまで来ている。頼んだぞ》

「おけまる。あーしにまるっとおまかせっ!」


 うん。任せたぞ、マジで。

 マジで、任せたぞ? フレイ。


 今回の作戦は南東、北西の両方に戦力を配置する必要があった。

 ルルには、南東。フレイには、北西だ。


 フレイは一国の姫としてこの島に来ている。

 親善大使というやつだ。

 フレイを守護する近衛の騎士も率いている。


 

 フレイに作戦協力を頼んだら、いさぎよく引き受けえくれた。

 そのあと顔のキズの愚痴について2時間くらい聞かされたが。


 この女、器が大きいんだかなんだか、謎だ。



「アンタたちっ、わかってるっしょっ! いまが、あーしらが意地をみせるときっ! 王都、魔都、この島、ギルド、あーしらの国の威信をみせつけてやろうじゃないっ! 返しきれないくらい、でっかい恩を売るチャンスよっ! こんなヤバいチャンスにテンション上がらないってマジありえないっしょ? 超イケてる、最高のアンタらなら、分かってるっしょっ!?」


 近衛騎士団は『フレイ様! フレイ様!』の大合唱。

 指揮が尋常なく高い。それだけじゃない。

 装備も練度も一級。

  

「あーしの力は忠誠を誓った民とともにあってこそその真価を発揮するのっ! いくわよ! 〈リンケージ・プリンセス・ロイヤリーテ〉」


 オーロラのように高貴な輝きが騎士たちをつつむ。

 フレイ本人だけではなく、近衛兵が強化される。

 見たことがない魔法。


 違う、これがフレイのユニークスキルか。

 格が高い。自己アピールしてただけの事はある。


「あーしの命はアンタらと共にある! あーしは臣下の力になるし、臣下はあーしの力になる。 互いの想いが重なり合って無限の力を与えるッ! そういう力っ! 教会? 商会? 目じゃないね。 あーしらの相手には不足だ! あんなどこぞの残党に遅れを取るんじゃないよっ! 格の違いを思い知らせるよっ!」



 フレイは手にした剣を天にかかげる。

 一軍の将さながらの圧倒的カリスマ。


 フレイが先頭に立ち、真っ先に賊に向かって駆ける。

 相対する敵はフルアーマーの巨漢。


 フレイはクレイモアの鞘を抜き、抜剣。

 巨漢をフルプレートごと両断。

 ダンジョンのフレイとは大違いだ。



「フレイ様。危のうございます。ここは、私にお任せを」


 フレイを斬りつけようとしていた賊を、近衛兵が盾で受ける。

 高い信頼と忠誠があってのコンビプレー。


「サンキューだしっ! あんた、なかなかイケメンじゃんっ!」



 いやぁ、人ってわからんもんだな。


 つか、フレイ自国の民には優しいのな?

 まあ、めっちゃ愚民呼ばわりしてたけどな?


 まあ、……うん。はい。

 

 まあ、いいか。頼むぞフレイ!

 今はおまえの力が必要だ。

 

 おまえに頼ってよかったぜ!

 グッジョブ、そしてサンキューな!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る