第39話『俺の嫁、ルルの戦い』

 ここは島の南東。ルルは超張り切っている。

 テンションがとても高い。



「ふははははっ! いまのわらわは、語尾も忘れるほどに燃えているにゃっ! 近海をわらわの領域とし、悪しき者をとらえるっちゃ! ブラッディー・シージ!」



 ルルの魔術的な力により近海が真っ赤に染まる。

 たぶん、きっと、吸血姫的な血の力がアレしてる感じだ。

 すげぇなぁ……やっぱ血とか闇って、すごいわぁ……。


 魔法の効果はよく分からない。

 効果はバツグンだ! 


 小舟に乗っている賊が死にかけてる。

 たぶん、生命力に鑑賞する魔法だろうね。


 さすが吸血姫。始祖吸血鬼。

 格が高いぞ、俺の嫁!



「ルージュ・レイン! カオティック・ボルケーノ! ブレスオブ・コキュートス! エンドレス・ナイトメア! ロクト・ハイマ・サンレイ・クローフェ! わーっはははっ! 千年ぶりの大暴れっちゃ! 見よ! これがあるじ様の妻の力なのにゃッ!! わらわの超絶スーパー魔法力の餌食になるがいいの、じゃぁッ!!!!!」



 空からは血のように赤い雨。


 極寒の暴風が吹きすさぶ。


 地底から火柱が噴き上がった。


「うわ。これ、マジもんの戦争だ。いや、天変地異かな? つーかもはや神々の戦いだわ! これ、神話とかで読んだことがある、アレだは!」


 あちこちで尋常じゃない大爆発。

 水が超高温に触れるとまずいみたい。


 信じられないくらいの爆発だ。

 この現象を〈水蒸気爆発〉と俺は名付けた。

 早くギルドに報告しなくちゃ。



 ルルはもう、なんていうか、圧倒的だな。

 貯まりに貯まった魔力を発散している。


 しばらく別行動をするので多めに血を分け与えた。

 多めと言っても、大さじ一杯程度だ。


 コップいっぱい飲んだらどうなってしまうのかな?

 まあ、俺の血が役立ったようで何より。


 圧倒的かつ壊滅的な攻撃魔法。

 だが、奇跡的に死傷者はいない。

 

「いや、奇跡じゃねぇんだな。すげぇな、ルル」


 戦争のような光景だ。にも関わらず死傷者ゼロ。

 これは、もう徳が高すぎる。

 心優しき吸血鬼の姫。ルル。



(まあ、青白い顔の人はそのうち死ぬかもね。ほぼほぼドンマイだ)



 まあ、事故だ。人はいずれ死ぬ。

 寿命みたいなものなものだ。

 誰がどう見たって、不殺だ。

 つまりルルは、何も問題ない。


 そもそも極悪人なんて死んでもさしたる問題じゃない。

 と、シンが昔、言ってました。


 妻は、圧倒的な力を持ちながら殺すことを良しとしない。

 その優しさをつけ込まれた。

 そしてダークラウンズに封印された。


 やっぱ、ダークラウンズってクソだな。


「だけどルル、その甘さは弱さじゃないぜ!」


 ルルは兵士じゃない。


 『人を殺すことができない』

 その一線を守れるのは、

 人としてはむしろ素晴らしいことだ。


 素晴らしい人格者、吸血鬼の姫、ルル。

 いや、別に自慢しているわけではない。


 ルルの心根の優しさを語りたかっただけだ。


「それに、生存者がいなきゃ、首謀者をゲロさせられないからな!」


 俺の妻、ルルの勇姿を目に焼き付けた。

 格の高い、始祖吸血鬼、そして俺の嫁のルルを。


 シン、見てるか?

 このメイド服の子は、俺の嫁だ。


 パタパタと飛べる、かわいい、吸血姫のメイド服が似合う、俺の嫁だ!

 どうだ、羨ましいか? だろうな。 残念! やらねぇよ!



 …………。



 えーっと。それはともかくとして、だ。

 俺はルルに敵の位置を教えたりフォローした。


 夫婦の共同作業ですね。はい。

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