第34話『全砲開門、パノラマ島を焼き尽くせ』

「人と魔族が共生する、人魔共栄の理想郷だと。たわごとを」

「はい。どっちでも使い物にならない無能の最終処分場ですよ」


「魔法とスキルに適正ないゴミに与える居場所はない」

「その通りです」


 人族と魔族の共存可能性を検証する島。

 それはあくまでも名目だけ。


 この島は棄民島と呼ばれている。 


 無能の烙印を押された者たちの最終処分場。

 人族、魔族の無能達を隔離するための島。

 

「いまいましい。教会に反逆した勇者! そして無能のゴミどもも!」


 ある日のことだった。


 この島に巨額の投資を希望する者が現れる。

 さる高貴な身分の貴人の女ということだった。


 この島を観光施設にしたい。

 再開発したいというのだ。


 絶対に儲からない馬鹿げた投資話。

 商才のない金持ちの馬鹿令嬢の道楽。

 そう、見過ごされていた。


「まさか、勇者まで味方につけるとはな」


 パノラマ島。再開発された島の名だ。

 謎の女貴人。その正体はクロトカゲ。

 人民の英雄勇者シンが島の代表に名を連ねている。


「今日が開島記念日だそうですね。皮肉なものです」

「そうだな。開島初日に焼け野原とは、あわれなものだ」


「各国要人あつまっておりますが。計画通りで?」

「問題ない。予定通り、皆殺しだ」


 パノラマ島の開島記念に各国要人が集っている。

 他国の親善大使としてフレイ姫も出席しているという。


「忘れるな。今の私達は、あくまでも所属不明の海賊だ」

「そうでしたね。そういうことになっているんでしたね」


「全艦砲撃準備に入れ!」

「了解」


《発射シークエンス開始します》

《全艦の砲弾装填作業完了》

《魔導エネルギー充填完了》

《発射まで3・・2・・1》


「全砲開門! 祝砲をあげろッ!!!」


 ミスリルで作られた魔導砲が火を吹く。


「さあ。素敵な花火を見せてくれよ」


 パノラマ島に向け全弾が放たれる。

 

「はっはは。やった! パノラマ島の開島記念だ!」


 射出された炸裂弾が爆発。


「艦長。その、これは、花火です!」

「そ、……そんな、馬鹿な!?」


 島の上空で巨大な花火。

 

「魔導通信機、何者かの干渉を受けています!!」

「何だと?! 切れ! 極秘任務中だ!」

「駄目です! 突破されました!!」



《おいおい。キミたち。いきなり虐殺とか正気かな? でも残念だったね。ボクが、すべての砲弾、火に変えちゃった! まるでキレイだ。マリアも言ってやれっ》


《まるでバカです。おしおきですよ。超イタズラ返しです》



 空から巨大な鉄の雨が降りそそぐ。

 よく見なれた砲弾。


 さっき撃った炸裂弾が返ってきた。

 炸裂弾は重力にしたがい、落下。


   

「艦長……ッ当艦の、直上……回避、間に合いませんッ!」

「そ、そんな、……馬鹿なぁあああああああッッッ!!!」



 船上で大爆発。轟沈。


 海賊に偽装した艦はすべて海の藻屑へ。

 求心力を失った教会残党とカバール商会の連合軍。


 圧倒的な物量で、島ごと破壊する電撃作戦。

 作戦むなしく、またたくまに壊滅した。



「あっけないものですね」

「ははっ。だな。ざまぁみやがれっ!」


 ボクは中指を突き立てる。

 燃えさかり船は沈んでいく。


「さて。マリア。開島記念パーティーに戻るぞ」

「がってんですっ!」

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