第27話『あるじ様、ぎゅーっしてもよいかの?』

「あるじ様よ、世界を救って食べるごはんはうまいのじゃ?」

「おう。うまいな。ルルはどうだ?」

「うむ。めっちゃうまいのじゃなぁ~☆」


 ちなみにオムライスをたべました。

 あまあまのスイーツもたべました。

 とっても美味しゅうございました。

 

「あるじ様はがんばりすぎなのじゃな。肩をもんでやるのじゃ」

「おう。さんきゅー、ルル。今日は俺がもんでやるよ」


 指をわきわきさせながら近づく。

 『あるじ様はケダモノなのじゃぁ~』

 とか言うのがいつものパターンだ。

 こんな感じの下らないジャレあいをよくしている。

 ……。犯罪者ではありません。ガチで。たぶん。


「ふつつか者じゃが、その、よろしくたのむのじゃっ///」

「はい」


 おやおやおや?

 いつもとはちがう反応のようだぞ。


 ルルはたまにこんな感じで妙に色っぽくなる。

 ルルの瞳がうるうるしている。かわいい。


 すっとぼけて肩をもんでお茶をにごすか?

 いや、それは男としては許されまいよ。


 ならばどうする? 雷術〈演算加速〉!

 思考を加速させろ。どうする?

 ええいっ! 目をつぶっていれば痛くないっ!


「ルル、覚悟はいいか! 俺は、もむ!」

「よい。勝負じゃ。あるじ様よ、かかってくるのじゃなっ!」


 もみっ。


 指先にやわらかな感触。

 なるほど。天国か? はい。


 かなりおそるおそるになってしまった。

 だが、確かに触れた。ありがとうございます。


「はわっ! くっ、くすぐったいのじゃぁっ。にゃははっ」

「すまん。くすぐったかったか?」

「いいのじゃ。あるじ様との関係、一歩前進。なのじゃな☆」


 ルルの女神的なオーラが凄い。

 吸血姫的な後光がさしている。


 小さい体のどこに母性力を隠し持っていたのか?

 手をあわせて祈りたくなるほどの神聖さ。


「あるじ様。ぎゅーっしても、よいかの?」

「お、おう。どんとこいっ」


 ぎゅーっ、されてしまった。

 ハグというやつだ。

 抱きしめられている。


 ルルの、小さな息使いが聞こえる。

 なんだ、みょーに気恥ずかしい。


 ……だけど、なんというかほっとする。

 わるくない、とてもわるくない。

 わるくなさすぎて、最高だ。


「あるじ様は、いつもがんばりすぎなのじゃ」

「そうか?」


「うむ。がんばり屋のあるじ様を、わらわは大好きなのじゃ」

「お、おう」


「じゃがの。ひとりでおおくを抱えてほしくはないのじゃ」

「そうだな。いまはルルがいるからな」


「あるじ様が好きなことに、理由はない。ただただ、好きなのじゃ」

「奈落の一件は関係ないということか?」


 ルルが小さく首をフルフルと横に振るう。


「あるじ様への最初の感情は恋。ときめきや、憧れだったのじゃな」

「その。今はどうなんだ?」


「今は。かわいい、いとしい、そう思っておるのじゃ」

「おいっ。かわいいって。俺は、男だぞ!」


「自然とあるじ様の頭をなでてやりたくなるのじゃ。不思議じゃの」


 背が小さいからパタパタと軽く飛ぶ。

 ルルのその姿はかわいいと思う。


「いまは、あるじ様といっしょに居るだけで幸せなのじゃ」

「ありがと」


「あるじ様とはすこしだけ特別な出会いだったのかもしれぬの」

「だな。出会った場所が奈落の底だもんな」


「そうじゃの。じゃが。いまは穏やかな日々に幸せを感じておる」

「それは俺も同じだ」


 いつもルルがとなりに居るだけでたのしい。

 なんってことない日常に幸せを感じる。


 これが満たされているということなのかもしれない。

 そんなことを感じるのであった。

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