第14話『トイレにいきたいのじゃがの』

「そうそう、報告書。めっちゃ役にたったっス!」

「よかった。徹夜したかいがあったぜ」

「超クロノさんに超感謝ッス!」

 

 超クロノさんが何か分からないが思いは伝わたった。

 それにしても思ったより大事になってるみたいだ。

 シンを勇者に選んだヤツは頭抱えそうだな。


 さすがにお気の毒としか言いようがない。

 犯罪者なので自業自得ではあるが。

 おとなしくおなわにつきなさい。


「これで報告は以上っす。朝のコーヒーいかがっスか?」

「おう。そりゃありがたい」


 リリアがコーヒーを作っている。

 ルルはベッドの下に隠れてる。

 金目がかがやいている。まるでこねこだ。

 

 すごくもじもじしている。

 目もうるうるしてる。

 トイレに行きたいのだろう。たぶん。


 出てくるタイミングを逸したんだろうな。

 しばし待てルル。早めに切り上げる。


「クロノさんはもち、ブラックっすよね! エスプレッソすよね!」

「うむ。もちろんだ。ハードボイルな感じで頼む」

「さすクロノすわぁん! やっぱ超カッケーッス!」


 普段は砂糖めっちゃ入れるけどな。

 なんならミルクもいれる。

 でもそんなキラキラした目で聞かれたらね。


 俺はふだん飲みなれる感じで口につける。

 すこしハードボイル感をだしてみた。

 なるほど。ルルには飲ませられない。


「なんか手伝えることはあるか?」

「大丈夫っす。そのお気持だけでもありがたいッス!」

「そうか」


「あっ! ギルマスから伝言っす」

「おお。めずしい。奈落がらみか?」

「はい。報告書についてサシで聞きたいことがあるとかなんとか」

「ほうほう。わかった」


 報告書に可能な限りのことは書いた。

 書いてない部分で聞きたいということだろう。


「たぶん未鑑定アイテムがらみの話じゃないかと。断りましょうか?」

「いや、行く。さすがに断れない」


「助かるっす! 中央通りなら人通り多いから安心だと思うっス」

「わかった。そんじゃ、今日行く」


 やましいことがある人間は天下の往来を歩けないものだ。

 いまの状況だと一番安全なルートということか。

 まあ、普通ならそうなんだが。普通なら。


「ところでなんか視線感じるんッスけど、気のせいっスか?」

「気のせいだ」

 

 リリアは報告を終えるとマッハで去った。

 空気がはぜる音した。パンッて。

 ありゃマッハも超えてるかもな。


 さすリリア。音速の壁、超えちゃったか。

 それはそれ、これはこれとしてだ。


 リリアの説明を聞く限りギルドの対応に問題はなさそうだ。

 ずいぶんと周到な作戦のように思える、だが。


「ルル。ギルドいってくるわ」

「わらわもあるじ様とご一緒してもよいかの?」

「ああ、いいぞ」


「ギルド一度みたかったのじゃ。たのしみなのじゃな」

「期待すんなよ? おもしろ要素、ゼロだ」

「あるじ様と一緒なら、どこでもたのしいのじゃ!」


 ふむ。それと関係ないけど、エスプレッソ。

 ありゃ苦すぎる。ルルなら死んでた。


 そんな感じで俺たちは宿を出た。

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