第6話『王都はとっても、すごいのじゃー☆』

 ひさびさの王都。

 やはりにぎやかな街というのは良いものだ。


「ここが王都! すごいのじゃー☆」


 ルルがトテテと駆けている。

 さっきまで背中でおぶられていたのだが。


 トテテという音がどこから出てるのか、謎だ。

 さすが、始祖吸血鬼だ。


「王都は人がおおい。迷子になるなよ」

「まっかせるのじゃぁ~!」


 こうやってみるとルルも普通の女の子だ。

 まずは服でも買ってやるか。

 いまの服装で歩かせるのはかわいそうだ。


「ルル、服買ってやる。このみの服とかあるか?」

「あるじ様の好みにまかせるのじゃぁ~」


 俺とルルは服屋に入る。

 王都で一番有名な服屋だ。


 服を買うくらいの金はある。

 どうやら金ははぎとられていなかったようだ。運がいい。

 いや、撤回。殺されかけたしぜんぜん良くねぇか。


「うわぁー、まるで天国なのじゃぁ~!」


 ルルが服屋を駆ける。パタパタと。

 さすが、吸血姫。パタパタパタ。


 そんなことをぼっと考えていると、ルルが立ち止まる。

 ゴシックな感じの黒いメイド服の前で。

 なんか、凄いもじもじしているな。めっちゃ欲しそうだ。


「ルル、この服が欲しいのか? メイドが着る服だぞ」

「うむ! この服はとってもかわいいと思うのじゃ」


 幼女にメイド服を着せてあるく冒険者。

 衛兵に目をつけられないだろうか。


「おっけー。着がえてきな。会計すませとく」

「わーい! やったー! のっ、じゃぁ~!」


 会計を済ませてしばらくすると、ルルが目の前でくるりと回る。

 メイド服のスカートがふわりと浮く。フリルがゆれる。

 キラキラ~☆という感じでピカピカ光っている。女は謎だ。


「あるじ様、その、どうかの? 変じゃない、かの?」

「いいんじゃねぇの。似合ってると思うぜ」

「そうかの? 照れるのじゃな」


 お世辞ではない。本音だ。

 銀髪にメイド服は黒と白で映える。


「お返しに、あるじ様の服をわらわが選んだのじゃ。じゃーん」

「黒いローブ。まるで魔術師の服みたいだな」


「あるじ様の好み、ではなかったかの?」

「いや、良いと思う。実用的だし」


 魔術師風のゆったりとしたローブ。

 この手の服は動きをよまれずらいのもいい。

 厚手の布だから魔獣の牙がかすったくらいじゃ破れなそうだ。

 ローブの内側に投げナイフを忍ばせることもできる。


 悪くない。とっても悪くないぞ。

 黒っぽい感じの服なのが特にいい。

 なかなか、いいセンスだ、ルル。

 

「そこはかとなくダークネスな感じのあるじ様にはぴったりじゃ」

「ルル、それほめてんのか、どっちだ?」

「もちろん、ほめておる。闇とか、影とか、カッコよすぎるのじゃっ!」


 なるほど、やっぱまだまだ子供だな。


 まあ、そんな俺も実は闇と影が好きだ。

 なぜか童心が刺激されるんだよな。


 闇と言えばナイフだ。

 ナイフとか、かっこ良すぎる。

 まあ、ナイフぺろっ、みたいな事はしないけどな。


 でも、ルルには黙っておこう。

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