第7話『司教がボケた【勇者】』

「シンよ、なぜクロノを殺した」

「理由? クロノがぜんぶわるいからだ」


 この男は、司教っち。名前は忘れた。

 ボクを勇者に選んだおっさん。

 大聖女セーラのパパ上。

 謎にエラそうなのはバカだからだ。


「クロノを殺さなきゃいけない事情があったのか」

「え、ないよ? なんで」


 司教っちはバカだ。でも、見どころはある。

 なぜならボクを勇者に選んだのだから。

 そこは、評価してる。クロノとは格が違う。


 でも、最近ボケが入ってきたみたいだ。

 同じことをなんども聞かれる。

 なんでクロノを殺したとかなんとか。


 そのたびに同じ説明をするはめになる。

 くたびれるよ。トホホ。

 まるでボケ老人を介護させられてるみたいだ。


 こんなのまるで喜劇だ。

 はあ。たのむよ、司教っち。


「シン、勇者としての役割を忘れたわけではあるまい」

「魔王を聖剣カリバーンでズバーンと切ればいいんでしょ?」


 びっくりした表情をしている。

 どうしたんだろう? ボケが進んだのかな。


「シン、フザケている場合ではない。いまは大事な時期だ」

「ふざけるって、何を?」


「シン、ダンジョン遊びはやめるのだ」

「なんで? ボクはエンシェントドラゴンを倒したんだよ? 聖剣で」


「そのようなことは他の冒険者にまかせておけばよいことだ」

「でも、ボクが強くならなければ魔王倒せないじゃん?」


「魔族とは100年の間争っていない。いらぬ波風をたてるな」

「はあ? 魔王は悪いヤツじゃん、クロノみたいに」


 司教っちがあたまを抱えている。

 頭痛持ちなのかな。


「おまえには、果たすべき役目がある、それを言ってみろ」

「魔王を聖剣カリバーンでズバーンと、」


 言い切るまえにさえぎられた。やれやれ。

 最後まで人の話を聞かないなんて教養がなさすぎる。


「もうよい。あらためて命じる、貴様には何千回と同じことを言っているが。貴様の役目は娘の大聖女セーラと子を作ること。教会の地位をより強固にするために」

「はあ、そんなに孫の顔みたい? まるでおじいちゃんだね。みじめだ」


 司教っちも、もう歳だ。

 魔王を倒すことよりも孫の顔のが楽しみらしい。

 責任感がまるでない。こまったおじいちゃんだ。


 でも、ごめん。セーラは胸が大きすぎる。

 好きになろうと努力してみたけど、ムリだ。


「ごめん、司教っち。セーラはタイプじゃない。胸がデカすぎる」

「貴様の好みなぞ、知らぬ! 義務を果たせ! 平民の貴様を勇者にした恩を忘れ、あまつさえセーラの侮辱! これは、到底許されることではないぞ、シン!」


 はは、娘のこと言われてキレてらぁ。

 でも、無理なものは無理だから。


 モテすぎるボクのぜいたくな悩みだ。

 クロノなら嫉妬しそうだな。はは。


「シン。貴様は何もするな。一切、何もするな。二度とダンジョンに行くな」

「わかった!」

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