第66話 山桜 🌸
里山の中腹に立つ1本の山桜が、遅ればせの満開を迎えています。
でも、内気な山桜は自分だけ目立つことが恥ずかしくなりません。
――早く葉桜になって、まわりの雑木に溶けこんでしまいたいな。
❀
そう思いながら、となりの山を見ると、若々しい山吹が咲き始めています。
あざやかな黄の美しさといったら、長い冬の憂鬱も吹き飛ばしてくれそう。
――もしかしたら、あたしもみんなに喜んでもらっているのかな。
そう気づくと、一年に一度の花を散らせるのが惜しくなって来た山桜です。
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