第6話 ラクダの笑顔 🐫
ええ、てまえ、生国と発しまするは、エジプトのカイロでごぜえやんす。⛺
いまを去る30年ほどむかし、外国人向け土産物屋に並べられているところを、ノーキョーとやらの団体客の目に留まり、遠い東の国まで連れられて来やんした。
なんでも、あの当時のこの国のお上は気前がよくて、ジャンジャカジャンジャカ年金を支給し放題だったとかで(そのせいで後世の人たちが困っているそうでごぜえやすが)、暇と金のある年寄り連は頻々と海外に出かけていたそうなんでさあ。
✈
てまえを買ってくれたマサヨっちゅうバアサンも、ジイサンの遺族年金で派手にあそび歩いていたみてえでやんして、田舎のやたらにでっけえ家の応接室とやらに世界各地の土産品を並べ、来客に自慢するのが大好きっちゅう手合いでやんした。
ところが、そのマサヨが旅行先で亡くなると、てまえの扱いは一変しやしてね、フランス、イギリス、イタリア、東南アジアなどの土産品と一緒くたにされて乱暴に段ボール箱に放りこまれ、それっきり。真っ暗な時間を延々と過ごしやんした。
☆彡
で、何十年ぶりかでようやく外へ出してもらったと思ったら、まさかのことに、「埋立ゴミ」の回収日に、記名入りの袋にも入れられずに放置されるなんて……。
え、笑ってた? ご冗談を! ラクダってのはね、もともとこういう顔なのっ!
☀
けど、世の中どうして捨てたもんじゃありゃあしやせんやね。(;・∀・)
たまたまでやんすが、ママの自転車に乗せられてやって来た3歳ぐらいの小さな坊やちゃんがいたんでやんすが、これがなんともいい子でやんして、「ラクダさんをあんなとこに置いといたらかわいそう。雨に濡れちゃうよ」と泣いてくれ……。
で、こうして命拾いし、マンションの出窓に飾られたってえ次第でごぜえやす。
まさに捨てる神あれば拾う神あり。
ありがたや、ありがたや。(^_^;)
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