第53話 「P.S」
山中 志桜里 さま
いつもの時間、いつもの公園、いつものベンチで君をまつ。
君は世界が滅びる前日、
「ね、思い浮かばないでしょ。人間、死ぬ気でやればなんでもできるとかみんなよくいうけれど、実際あした世界が滅亡しますよなんて言われたところで何かをしたいなんて思わないの。もし、やりたいことがちゃんとあったとしても、それを前日になって始められる? 移動の時間だってあるし、やりたいことによっては初めてじゃ上手くいかないかもしれない」
なんてやたらと長くて気恥ずかしいセリフをいっていたけれど、君の用意周到さには驚いた。
確かに、世界が滅びる前日に何かをはじめるというのは遅いこともあるかもしれない。
そして、君の計画的な世界が終わる何か月も前から準備するという超巨大ないたずらにまんまと俺は、俺たちはひっかけられた。
天国というところがあるならば、君はどんな笑顔をしているのだろう。
まんまと他人の人生を操れたことに君は多いな満足感をえて、かつぶしをたべたあとの猫のような顔をしていると勝手にそうぞうしている。
だって、俺は君の顔をしらないから。
君のおかげで、君の親友である詩織にであうことができた。
その点については感謝している。
あのときは、本当にすっかりだまされた。
だが、覚悟してほしい。君が天国にいっているあいだにも、俺と詩織はたっぷり一緒の時間を過ごすことができる。その間、おそらく五十年以上ある、そのときがくるまで俺と詩織は君への盛大などっきりを考えていることをここに宣言しよう。
せいぜい、覚悟しておくように。
P.S
来月、詩織に子供が生まれる予定だ。間違っても俺たちの子供として生まれ変わろうなんてしないでください。
西宮 あきら
P.S
うそです。たぶん天国という場所とこちらは時間の流れは変わらないと思います。アキラ君は志桜里にすっごく感謝して、子供が生まれたら志桜里の「桜」の字をもらいたいといっていますが、私たちはまだ子供を授かるにはわかるすぎるのでもうすこしゆっくりしていて大丈夫だよ。
西宮 詩織
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