第12話 「えっ、この制服着てても分からない?」
翌日はシオリと図書館デートに誘われた。
俺がテスト前だと言うと、シオリがでは図書館で勉強しましょうと言ってくれたのだ。
テスト勉強なんて今更しても遅いし、やる気も無かったが、「デート」と言われてしまったら、俺は行かない訳にはいかなかった。
図書館に本を借りに行くことはあっても、勉強にいったことは無かった。
図書館といえば、椅子か精々読書のときに本を積んでおける程度の小さなテーブルくらいのイメージしかないのにどうやって勉強するというのだろうか。
その疑問を口にしたら、シオリに笑われた。
余程おかしかったらしい、お腹を抱えて笑っている。
ただし、図書館にいるので声はあげずに。笑いすぎて苦しそうなくらいだった。
自習室というものが図書館の二階にあるなんて知らなかった。二階は職員の人の事務処理とかあとは視聴覚関係の資料ブースがあるのかと思っていたのだ。
しかも、俺の思っていた自習室と全然イメージが違った。
図書館の自習室には社会人やお年寄り、高校生などいろん世代の人がまばらに座って、それぞれテーブルに全然違う資料を広げていた。
俺が知っているのは高校や塾にある自習室で一人一つきっちりと机ってものがあって、そこで勉強以外のことが見えないようになっていて息が詰まりそうなものだった。
だけれど、ここは違う。
広々としたテーブルに気まぐれに座って本を読んでたり、図鑑で調べ物をしたり、資格試験の本を広げる人もいる。
こう、無理矢理まっすぐに直近のテストや模試、その先の大学受験しか見えないように強制されている感じがなくて、ちょっとだけ安心した。
なんか、久しぶりにテスト勉強というのをやってみるのも面白いかもしれない。
俺だってもともとは、勉強が得意だった。
小さい頃から色んな習い事もしたし塾も嫌いじゃなかった。
新しいものを学ぶって、人より多くのことを知るって楽しかったはずなのに、いつの間にかいろんなことが嫌になっていた。
まあ、どちらにしてもこれは
俺にはあまり拒否権がない。拒否をするなら何か別のデートを提案するべきだろう。
「ほら、あそこの席あいてるよ」
シオリはそう囁いて俺の手をひいた。
わざとらしく内緒話をするときのように口のよこに手を広げて話す姿がすごく可愛らしかった。
意外なことに、シオリとのテスト勉強は非常にはかどった。
俺はアルバイトでシオリの恋人をやっているはずなのに、俺の方が得をして悪いとおもってしまうくらい。
シオリは勉強もできるみたいだった。
一部の教科は「あ、それ家の学校も同じ教材使ってるよ~」なんていって、シオリの学校でテストにでたポイントとなる問題を分かりやすく解説してくれた。
正直、学校の授業より分かりやすくて、どうして今まで俺はこんな簡単なことから逃げてしまっていたのだろうと不思議になった。
「頭良いんだね」
と、俺がいうと、シオリは「えへへ」と照れたように笑った。
よくよく考えてみるとシオリの服装ってもしかして……。
「そういえば、どこの高校だっけ?」
「えっ、この制服着てても分からない?」
シオリはぴらっと自分の制服のスカートをつまんでみせる。一瞬、パンツが見えてしまうのではと慌てるがさすがに所作がきれいでそんなことはなく、すこしスカートのチェックの模様がみやすくなっただけだった。シオリが高校名をいうとやっと俺は近隣にある偏差値が高いお嬢様学校であることに気づいた。
「いや、余所の学校の制服とか詳しくないし」
「そういうこともあるんだねー(棒読み)」
「えっ、俺ってそんなにおかしい?」
どうやら、普通は近隣の高校の制服ぐらいは把握しているのが普通らしい。
「アキラ君もそういう抜けているところあるんだねー」
シオリは妙に嬉しそうに笑っていた。
いままで、こんな風に誰かにいわれたら馬鹿にされていると俺は起こったかもしれない。
だけれど、シオリに言われると、そこに悪意なんかはなくて自然と俺も一緒に笑ってしまった。
もちろん、図書館の司書さんに怒られないように、こっそりと。
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