B-7 より良き武器を求めて
宴の翌日、カミユ、マリス、エリス、テオ、ミオは、また帝都の中心部の広場から道一本入った職人通りへと来ていた。
様々な店が軒を並べていて、見ているだけでも飽きがこない通りになっていた。
「この辺りは初めて来るね。いろんな店があるなぁ」
目を輝かせてカミユはあたり一帯を眺めていた。
「カミユなにかほしいものがあるの?」
ミオがふと思いついたように尋ねてきた。
「これから先、金属のゴーレムみたいなのがいたら、今のレザーアーマーじゃちょっと心細くて、ブレストプレートメイルあたりでもほしいところかな。ミオやテオも、少し装備見直したら?」
ミオやテオも防具はレザーアーマーであったため、同じ状況だと感じたカミユは見直しを提案した。
「レザーアーマーが心細いのは確かなのですが、金属製の鎧だと動きが制限されてしまい、遅くなってしまうので、なんとも言い難いですね」
テオが装備に対する意見を述べる。テオの意見にミオも同意していた。
テオとミオは互いに装備のことで言い合っていた。カミユはあたりを見渡して武具店を見つけその入口へと向かった。その時、入り口から出てきた人物とぶつかって弾き飛ばされてしまった。
「お、わるい」
聞き覚えのある声で謝罪が飛んできた。
「ガルフ!こんなところで会うなんて奇遇だね」
ガルフに助け起こされながらカミユがガルフに声をかけた。
「おお、ちょっと武器を探していたんだ。だがここにもめぼしいものはなかった」
言葉尻がトーンダウンしていて、落ち込んでいるようにカミユは感じた。
「ガルフの武器ってグレートソードだよね。何が不満なの?」
「そりゃ、お前、あんな金属のゴーレムとやりあうのに今の武器じゃ全然足らねぇ。お、そうだ、カミユ、古文書とかに伝説の武器とかなかったか?あるならそいつを探しに行こうぜ。な、なっ!」
ガルフがのめりこむように問い詰めてきた。カミユは古文書の知識をフル稼働させて、検索している。
「伝説の武器って、ドラゴンスレイヤーくらいしかないよ。それ以外ってのはちょっと今思いつかない」
ガルフはガクッと落ち込んでいた。
「そうか、ないか……」
カミユは申し訳なく考えを巡らせていたが、ふと思い当たるものがあった。
「武器のありかじゃないけど、鉱石のありかならヒントくらいはあるよ。ミスリルの鉱山が北の地にあるって古文書にあった。以前だったらどうしようにもなかったけど。竜巻の壁がなくなった今ならカリア王国には行けるから、そこから探せば鉱石くらいは見つかるんじゃないかな」
カミユの言葉にガルフは歓喜で答えた。
「ミスリル製の武器か、それなら金属のゴーレムにも通用しそうだな。そのミスリルの鉱山とやらはどこにあるんだ。今すぐ行こうぜ!」
前のめりのガルフを押しとどめるようにカミユは答える。
「ちょ、ちょっと待って。鉱山の正確な位置はわかってないんだよ。北の地にあるとしか書いてなかったから、情報収集しないとダメなんだよ。まずはカリア王に聞いてみることから始めないといけないし……」
カミユの答えを聞いたガルフは意気込んでカミユの襟をつかんで先に進む。
「よし、カリア王国へ行こうぜ。お前の飛空艇なら2時間だろ。今から行けば昼過ぎには着くだろ。よっし、これからの行動が決まったな」
「マジで行くの?今からって。うおぉぉ」
カミユの体を腕でつかんでガルフは飛空艇ドックに向かい、カミユは引きずられていった。
(カリア王国)
ガルフの勢いに押されて一行はカリア王国に到着していた。出発する前になんとかラスタに伝言を残せたのが幸いだった。
「んで、まずはカリア王だな。謁見はどうすりゃいいんだ?」
猪突猛進のガルフが鼻息荒く尋ねる。
「お父様なら、そこまで儀礼を伴わなくても会えると思いますわ」
マリスはガルフに答えた。
「おぉ、んじゃ、さっそく行こうぜ。武器が呼んでるんだよ」
マリスの仲介もあって、謁見はすぐに決まった。
「お早いおかえりじゃの、カミユよ、それとガルフじゃったか。息災か?」
「はい俺たちは元気です。王様もお元気そうで何よりです」
カミユとガルフが前に進み出て謁見を始めた。エリス、ミオ、テオは後ろに控えている。マリスはカリア王の横にたたずんでいた。
「それで、今日はどんな用じゃ?わしで役立てることがあるかの」
「いま、強い武器を探しておりまして、北の地にミスリルがあると聞き、陛下のお知恵をお借りすべく参りました」
ガルフの丁寧な言葉遣いを聞いて一同は驚いてしまった。
「ガルフ、そんなしゃべり方もできたんだ」
カミユは驚いて思わず口にした。
「こう見えても帝国に仕えているんだぞ。これくらいは当たり前だ!」
ガルフに怒られてしまった。
「それよりも陛下の前で失礼だぞカミユ」
「ふぉっ、ふおっ、ふぉっ、よいよい、かしこまらんでよいわい。しかし、ミスリルか、どうしたもんかのぉ……」
「何か問題でもあるのですか?王様」
カミユはカリア王が考え込んでしまったため、それを知るべく言葉を口にした。
「実はの、ミスリル鉱山はあるのじゃが、そこを守護するモンスターがおるのじゃ。ガーゴイルじゃが、騎士団を派遣すれば倒せる。」
「倒せるのなら問題ないのでは?」
ガルフは自分の番かと思っていたが勢いがそがれ、カリア王に先を促した。
「復活するんじゃよ、1月ほどすると復活してくるので、採掘が妨げられてしまうんじゃ、そう何度も騎士団を派遣できるわけではなく、夏になれば、騎士団も結成しにくくなる。これさえなければ、ミスリルを輸出品に加えられるのじゃが、なんとかならんか?カミユ、ガルフ」
「う~ん、復活するのか、ただ単に倒すだけじゃダメか、とするとここはトラシアさんの出番かな」
「だな」
「王様、帝国の技術者に心当たりがあって、今回の件に適任かと思われます。この件俺たちが引き受けてもいいでしょうか?」
「おお、引き受けてくれるか。頼む、褒美はミスリルで払う、それでよいか?」
「はい!それでお願いします」
カミユの言葉で謁見は終了した。
(帰りの飛空艇の中)
「今回私たちの出番はありませんでしたね」
「まぁ、いいんじゃない、話は進んだんだし」
テオとミオがカミユを相手に雑談していた。
「しかし、この飛空艇があってよかったな。こんな簡単に王国と帝国の間を行き来できるんだからな。1日で往復も余裕だし」
「トラシアさんに頭が上がらないよ。しかし、ガルフ、勝手に他の国の依頼受けて帝国の方は大丈夫なの?」
カミユはガルフの立場を意識して心配して声をあげる。
「あぁ、まぁ、他国と戦闘になるわけじゃないし、カリア王国を助けるんだ。ラスタのためにもなるし、問題にはならんさ」
「陛下の依頼を受けてくださってありがとうございます。わが国としても帝国と協力関係を築けたと思いますので、問題はないかと」
「ほら、マリス姫のお墨付きだ。カミユ心配すんなって、まぁ、ラスタに報告だけはしないといけないがな」
そうこうしているうちにトラブルもなくグラントリーフは帝都に到着した。
(皇太子執務室)
カミユとガルフから一連の流れの説明をうけたラスタはため息をつきながら応じた。
「状況はわかった。しかし、たった1日でカリア王国と往復して、王からの依頼まで受けてくるとは、フットワーク軽いな!」
「グラントリーフならひとっ飛びだし、これくらいお安い御用さ」
カミユは自分の飛空艇を自慢げに語る。
「しかし、トラシアか、あいつ今、むちゃくちゃ忙しいぞ。依頼受けられるかどうかわからん。直接話してみろよ。許可するから」
(飛空艇ドック)
ファルコンウイングとそれより二回り大きい中型輸送船が飛空艇ドックに鎮座していた。カミユたちはトラシアを探し、中型輸送船の入り口わきでトラシアを見つけた。
「ここにいたか」
「ガルフ。こんなところまで来るなんて珍しいですわね。いい武器は見つかりましたの?」
「それがらみでここまでお前を探しに来たんだが、今時間大丈夫か?」
「ええ、忙しいピークは越えましたわ。殿下から中型輸送艦の防寒装備を依頼されて、変更箇所を洗い出して指示出しまで終わりましたの。ひと段落といったところですわ」
断られることを覚悟していたカミユとガルフはほっと胸をなでおろす。
「トラシアさん、王国でミスリル鉱山があるんだけど、ガーゴイルに守られていて、そのガーゴイルが倒しても一月ほどで復活するらしいんだ。止めたいんだけど何とかならないかな?」
カミユは手短に要件を伝える。
「ガーゴイルが復活……ふふ、ふふふ、これは来ましたわね」
トラシアの目が輝きを増していた。
「お話を聞くに、おそらくその鉱山は、連邦政府時代の遺跡でしょうね。ガーゴイル復活装置は興味がありますわ。止めるだけではなく、いただいちゃいましょう。」
過激な案を提示するトラシア。
「お、お前、マジか?!」
「うはっ、トラシアさん過激ぃ!」
「こんなもの過激のうちに入りませんわ。準備もありますし、鉱山に向かうのは明日にしましょう。それでよろしいですか?」
カミユとガルフは愁傷にうなずいた。
(ラスタの別邸)
ドックでガルフと別れた一行は拠点となるラスタの別邸に戻ってきた。
「ふっは~~。今日はいろいろあって疲れたよ~」
ちょうどそこにラスタがやってきた。
「おぅ。お疲れさん。トラシアは捕まえられたみたいだな」
「ちょうど作業がひと段落したらしいよ。運がよかった」
そこにエリスが割り込んできた。
「カミユ、活力の魔法はいりますか?お疲れみたいですし」
エリスの申し出をカミユは断った。
「いや、疲れといってもどっちかっていうと気疲れの方だから、大丈夫、ありがとエリス」
エリスは心配そうにカミユを見ていた。
ラスタが会話を続ける。
「で、鉱山に向かうのは明日か?」
「うん、トラシアさんも明日が都合がいいみたいだし」
「ちょうどいい、明日俺も休みにしたんだ」
「ちょうどいい?まさか、ラスタ、来るの?」
「俺もつれてけ」
カミユは天を仰いだ。
「はぁ、もう、どうにでもなれ~」
「ラスタがいてくれると安心ですわ」
さらに予想外の一撃をマリスが仕掛けてきた。
「マリス、君も来るつもりなの?」
カミユは驚いた表情をしている。
「私だけ、のけ者ですか?そんな寂しいこといいませんよね?カミユ」
泣きまねをするマリスはカミユに懇願するようなしぐさで押してきた。ここでカミユは力尽きた。
「ガルフから始まって、とんだ大騒ぎになっちゃったよ。とほほ」
テオとミオがカミユをねぎらう。
「まぁまぁ、いつものメンバーだと思えば大丈夫でしょ」
「大人数ですけど、いっその事2チームに分けたらどうでしょうか?」
テオの2チーム案はカミユにとって意外だったがなんとなくしっくりくるものがあった。
「2チームか、ガルフ、エリス、テオ、ミオ、それと俺で1チーム。ラスタ、ミネルバ、マリス、トラシアで1チーム。これなら動きやすそうだ」
「おぉ、確かによさげな案だな。俺とカミユがリーダー役だな」
ラスタの賛同を得られてカミユもほっとしていた。
「さて、明日も忙しくなるぞ。飯食って風呂入って早めに休もう」
ラスタの声に一同が賛同する。
北の王国と南の帝国互いに手を携えて歩む
飛空艇が作る未来はいかに
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