Area of Ribton
AoR-1「リブトンエリア」
『……んちゃん、起きて。……かばんちゃん、起きてってば!』
「ぅん……」
海に揺られる車内の中、ぼくを呼ぶ声に目を覚ました。
「やっと起きた!見てかばんちゃん!あれがリブトンエリアだよ!」
「………。あれが…」
遠く水平線の彼方に大きな島を見た。島影に紛れて、何やら人工物のようなものも見える。
あれが、ぼくたちの目指す地、リブトンエリア…。ぼくの旅路で手に入れた、地図には載っていない未知のエリアだ。
「ようやく起きたか、かばん殿。アレこそが私の生まれ故郷、リブトンエリアだ」
「クロサイさん…」
黒い甲冑に身を包む騎士がぼくに言う。ゴコクエリアで共に戦った、黒き犀騎士のクロサイさんだ。
「出来る事なら姫と共に参りたかったが…。それも叶わぬ願いか…。いや、それも今はいい。……あの方は…今も元気にしてらっしゃるのだろうか…」
「あの方?シロサイ以外にも姫って慕ってる子がいるの?」
「いいや、私が慕う姫はシロサイお嬢様一人だけだ。あの方とは、かつて私と姫が師事していたエラスモテリウムという犀騎士だ。ジャパリ騎士団という組織のリーダーであり、私も姫もかつては彼女に世話になっていた。懐かしいものだ…」
「へ~。どんな子なんだろう?すごく強いのかな?」
「強いという言葉では足りないくらいだ。エラスモテリウム殿は、我々ジャパリ騎士団が総出でかかっても勝てるお方ではないだろう。それに加え、騎士団を一人でまとめ上げるだけのカリスマもお持ちだ。そんな圧倒的な武勇と高い志、そして、そのカリスマ性に惹かれ、我々はエラスモテリウム殿に仕えることを誓ったのだ」
そう語るクロサイさんの目はキラキラと輝いているように見えた。日ごろからシロサイさんについて口熱く語っていたクロサイさんだけど、そのクロサイさんがこんなにも目を輝かせて語るなんて、余程犀騎士にとっての憧れの存在だったのだろう。
重厚な鎧に身を包む犀騎士…。初めてクロサイさんに会ったときも緊張したものだけど、そのクロサイさんをも上回る物々しい雰囲気を身に纏う犀騎士を想像してしまった。なんだか身がすくむような感じがする。ぼくたちは、これからそのフレンズさんたちに会いに行くことになるのだろうか。
「かばん殿、もうすぐリブトンエリア海域に入る。まずは、私の故郷であるエストサクソン地方へ参ろう。そこであれば私も多少の顔が効く。そこから入港してキャメロットを目指すとしよう」
「分かった。ラッキーさん、クロサイさんに権限を委譲するよ。サポートをお願い」
「わかったヨ。まずは、航行ルートを指定してネ」
そうしてラッキーさんとクロサイさんの運転によって、ぼくたちはエストサクソン地方へと向かっていった。
しばらく航行していると、遠くに海岸と小さな港のようなものが見えてきた。あそこに上陸するのだろう。
「かばん殿、このままあの砂浜に接岸しても良いか?」
「うん。このまま乗り上げよう。サーバルちゃんも気を付けて」
「うん、わかった!」
強い衝撃と共にぞりぞりとバスの底を削る鈍い音がした。どうやら、無事に上陸できたようだ。
どうにかしてバスを砂浜から脱出させると、草原地帯へとバスを押し上げた。砂浜にスタックしたままでは移動に不便だ。バスはぼくたちの貴重な足なのだから、そのままにしておく訳にはいかない。
海水やら砂を落として軽くメンテナンスを済ませると、ぼくたちは再び出発した。ここからも、しばらくはクロサイさんとラッキーさんが主導でキャメロットを目指していく。
「クロサイさん、キャメロットまでどれくらいかかる?」
「半日もあれば着けるだろう。今のうちにかばん殿も斧を磨いておくといい。犀騎士にとってスピアーは誇りであり、自らの威厳を示すものだ。かばん殿のその斧もみすぼらしくはあるが、かばん殿にとっての立派な獲物なのだろう?エル殿に認めてもらうためにもしっかりするのだぞ」
「ぼくにとっては特に誇りという訳でもないんだけど…。まぁ、いいや。サーバルちゃん、研磨材って持ってきたっけ?」
「うみゃ、ないかも…」
「……だよね。基本斧は使い捨てしてるからね…」
「……まったく、お主たちは…」
ゲリラと誇り高い騎士の違いをまざまざと感じる。ぼくは必要であれば、斧の柄を折って双剣のようにして戦ったことがあった。そして、セルリアンを撃退した後は、また泥炭から鉄を精製して斧を作ってきたのだ。ぼくにとってナイフや斧は消耗品であり、己を示すものではないのだ。
道なき道を行く。青々と映える草原はぼくの心を湧き立たせるようだ。この青い草原を抜けた先に、伝説の都の名を冠する王国があるのだ。武者震いがしてくる。
しばらくバスを走らせていると、大きな川が見えてきた。その川のほとりで、一人のフレンズさんが腰を下ろしている。
黒い重厚な鎧に大きなランス…。……まさか、あれがエラスモテリウムさん…?
「クロサイ、だれかいるよ?」
いち早く存在に気付いたサーバルちゃんがクロサイさんに訊ねる。
「あれは…ベヒモス殿!」
「ベ、ベヒモス…?」
「ああ、元ジャパリ騎士団のナイトだ。まったく、相変わらず騎士というものを忘れ、ふらふらとほっつき回っているようだな…。仕方のないお方だ」
そう言って、バスの進路をベヒモスと呼ばれるフレンズさんの方へと変更した。ぼくたちの存在に気付いたであろうそのフレンズさんはゆっくりと立ち上がると、迫りくるぼくたちをじっと見据えた。
バスを停車させる。しかし、ぼくたちは非常に驚かされることとなった。すごく大きいのだ。身の丈2mはあろうかという巨躯だ。
「おやおや、誰かと思えばクロサイじゃないか。随分と久しいな。元気にしてたかい?それで…そちらのかわいいフレンズちゃんたちはどちらかな?」
「ぼくはかばんって言います。こっちはサーバルちゃん」
「よろしく!」
「うむ。ベヒモス殿も相変わらずなようで何よりだ」
「はっはっはっ。相変わらず平和なものだよ。と、言いたいところだが…」
「……?何か起きているのか…?」
「ああ…。リブトンの北方にあるリューフォート地方は覚えているだろう?」
「ああ。物好きなフレンズ以外誰もいない未開の地方だろう?それがどうかしたのか?」
暗い顔をしてベヒモスさんが黙り込む。そして、ある一つの場所を指さした。
「あれが見えるかい?」
「……?すまん。他のフレンズのようにあまり目は良くなくてな」
「ああっと、そうだったね。これはどう説明したらよいか…」
「なんか草原の一部が茶色っぽいよ。いったいどうしたの?」
遠くを見つめるサーバルちゃんが何かを発見したようだ。ぼくも目を凝らしてよく見てみると、確かに遠くの草原の一部が枯れている様子が見て取れた。青々と映える草原と対比して、ひどく退廃的に見える。あまり近寄りたいと思わない。
「おお、君は見えるんだね。そうだ。リューフォート地方に謎のフレンズが現れたようでね。そいつらが悪さをしているようなんだ。ほら、僕はジャパリ騎士団を離れた身だからキャメロットにも近付きづらいし、詳しい話もよく知らない。…そうだ。君たちがキャメロットに行って、詳しい話を聞いてはくれないかい?あまりに危険な状況だったらいけないし、必要とあらば僕も戦わなくちゃいけないだろうし…。どうかな?」
「私がリブトンを離れてる間もずっと怠けてたのだろう?まだ戦えるのか?」
「おおっと、それは聞き捨てならないね、クロサイ君。本気を出した僕がどれほど恐ろしいか、騎士団のフレンズであれば分からないはずがないだろう?」
「……前言撤回する。もしもがあれば、頼りにしている」
「うむ。任された。それじゃ、頼んだよ」
そうして、ぼくたちはベヒモスさんと別れた。ベヒモスと言えば、もっぱら悪魔をイメージしそうなものだけど、あの巨躯を除けばクロサイさんのような普通のフレンズさんとほとんど変わらない見た目だった。もしかしたら、ぼくたちの想像するベヒモスとはまた違った存在なのかな?ちょっと興味が湧いてきたかも。
「………」
川を越えた先の丘陵の頂上が枯葉色に染まっているのが見える。まるで、目に見えない何かがこちらに迫ってきているかのようだ。ベヒモスさんの言っていたように、早急にエラスモテリウムさんに訊ねる必要がありそうだ。急がねばならない。
「クロサイさん、ラッキーさん、急ごう。事は一刻を争うのかもしれない」
「わかった」
「分かったヨ」
…………
「これが…キャメロット…」
「うみゃあ…。おっきぃ…」
バスを降りて大きな建物を見上げる。城というには少し小ぶりではあるが、とても立派な城塞だ。今見上げているこの建物こそがキャメロットであり、ジャパリ騎士団の本拠地なのだ。
「エラスモテリウム殿!クロサイが参った!今すぐ門を開けられよ!」
クロサイさんが叫ぶ。しばらくすると、城門を閉じていた跳ね橋が降りてきた。そして、その中から一人の白い甲冑を身に纏ったフレンズさんが姿を現した。
「シロサイさん…?」
シロサイさんと思わしき人が跳ね橋を渡って僕たちに近付いて来る。怒っているかのような、言い知れぬ怒気のようなものを感じ、すかさず身を構えてしまう。
そして、そのフレンズさんは腰に提げていた剣を抜くと、クロサイさんの喉に突きつけた。
「ッ……」
「今更何のご用かしら?クロサイ…」
緊張が走る。ピリピリと感じるような空気がぼくたちの肌を刺す。しかし、その緊張もすぐにほぐれる事となった。
「……なんて、冗談ですわ。よく帰って来たわね、クロサイ」
「……冗談きついですよ、キタシロサイ」
「ふふふ、お許しを。さあ、中にお入りなさい。エルのところへ案内しましょう」
突如ほぐれた緊張の糸に脱力感を感じながら、キタシロサイと呼ばれるフレンズさんの後をついて行く。ようやくぼくたちはキャメロットの内部に入ったのだ。
……いったい、この建物はどういう目的で作られたのだろうか。ヒトの手によって造られたというにはなんだか異質だ。フレンズさんがこのような豪華な建物を作るというのは考えにくいし…。知識もなしにこんなものを作っては、数年と持たずに崩落してしまうだろう。うーむ、謎だ。
しばらく中を歩いていると、一つの大きなテーブルのある部屋に通された。どうやらここで待てという事らしい。
「少しこの中でお待ちなさい。エルを連れて来るわ」
キタシロサイさんはそう言うと、そのまま部屋を出て行った。後に残されたのはぼくとサーバルちゃん、クロサイさんの3人だ。
大きな円卓に設けられた席の一つに腰を下ろす。サーバルちゃんもぼくの動きを確認すると、同じように腰を下ろした。しかし、クロサイさんは難しい顔をしながら一人壁にもたれかかっている。何か思うような事があるようだ。
「どうしたの?クロサイさん」
「……あんまりここ席に座る気にならないのでな。よりによって円卓の間に通されるとは…。キタシロサイ殿も趣味の悪い…」
「……?」
そういうクロサイさんの言葉の意味を考えていると、誰かがぼくたちのいる部屋に入ってきた。キタシロサイさんと…重厚な漆黒の鎧に身を纏う犀騎士のフレンズさんだ。
そのフレンズさんは闇をも呑み込むような黒い眼差しでぼくたちを見据えると、低い声でぼくたちに訊ねた。
「……君たちが…リブトンエリアに来たという者たちか…」
「っ……」
声が出なかった。すべてを呑み込むかのような淀みともいえるような闇を感じた。近くにいるだけでも思わず逃げ出したくなるような圧倒的な覇気…。
そして、ぼくははっきりと感じた。このフレンズさんこそが、エラスモテリウムさんという事を。
「もう、怯えていますわよ。エル」
「むっ…。すまない。そんなつもりはなかったのだが…。場所を変えよう。外でならいくらか話しやすくなるだろう」
そう言ってエルと呼ばれるフレンズさんは、ぼくたちを外へと導いた。キャメロットの外の草原に足を運ぶと、改めてエルと呼ばれるフレンズさんは口を開いた。
「先ほどは失礼した。私はエラスモテリウム、ジャパリ騎士団の団長を務めている。気軽にエルと呼んでくれ」
「ぼ、ぼくはかばんって言います」
「私はサーバルだよ!」
「かばんに、サーバル…。良い名だ。そして、クロサイよ。久しぶりだな。リブトンが恋しくなったか?」
「いいや、私はかばん殿のお供として仕えているのみだ。あるお方を探しているようでな。当てはないが、私の見知った所であるリブトンエリアで何か力添えができればと思い、お供している」
「なるほど。それで…シロサイはどうしたのだ?いつも一緒にいたと思うが…」
「……シロサイお嬢様は…。もうしばらく会っていない…」
「……何か深い事情があるようだな。差し支えなければ、聞かせてくれないか?」
そうして、クロサイさんは自身の過去のことを話し始めた。ぼくも過去に何度か聞いてはいるけど、やっぱり自身の知己ともいえる人との別れの話はいつ聞いてもつらく感じてしまう。
「私は、リブトンエリアを出て、姫と一緒にキョウシュウエリアで暮らしていたのだ。いつものように姫の枝毛の心配をしたり、姫の保護に専念するあまりに逆に足を引っ張ったりと、いつものようにバカをしていた」
「そこは自覚があったのだな」
「……今だからこそ冷静に振り返れるだけだ」
「……それで、何があったんだ?」
「ある時、ゴコクエリアに遊びに行こうという事になって、私が尖兵としてゴコクエリアに向かったのだ。いつものバカをやっただけだったかもしれないが…。結果として、これが姫を救うことになった。様々な効能のある温泉においしい木の実、良質な泥もとれるとあって、姫も楽しみにしていた。だけど、私が見たものは数多ものセルリアンの群れ…。そして、それらと戦うフレンズたちの姿だった。民草を虐げる暴虐を捨て置くは騎士の名折れ…。私は迷ったが…。ゴコクエリアでフレンズたちと戦うことを決意したのだ。それから…どれくらい経ったのか…。それから私は…ずっと…戦いに明け暮れる日々だった…」
クロサイさんが口を閉じる。いつ聞いても惨い話だ。姫と呼び慕い、大切にしていたフレンズさんを一人置いて、クロサイさんはゴコクエリアで孤独に戦い続けてきたのだ。ぼくはキョウシュウエリアを出て、たどり着いた先のゴコクエリアで10年もの間戦い続けてきた。クロサイさんは、それよりもの長い間を一人で戦ってきたのだ。ぼくにはサーバルちゃんという相棒がいたけど、クロサイさんにはいなかった。いや、キョウシュウエリアに置いてきてしまった。それを想うだけでも心が痛む。
「……そうか…。そんな事情があったとはな…。……君たちがここにいるという事は、もう既にゴコクエリアの問題は解決しているのか?」
「うむ。私とかばん殿で、無事にゴコクエリアのセルリアンを根絶させることに成功した。かばん殿には感謝してもしきれぬ思いだ。だから、私もこうしてかばん殿に付き従っているのだ」
「そうか…。君も成長したな、クロサイ」
「もったいなきお言葉です、エル殿」
跪き、スピアーを置いてエラスモテリウムさんに首を垂れるクロサイさん。こうして見ると、本当に騎士なんだと実感させられる。その姿は美しく、目と心に焼き付けてしまうかのようだ。
「かばん、そしてサーバル。貴君らも大儀であった。よくぞクロサイを支え、ゴコクエリアを守り抜いてくれた。我々騎士団からも感謝の言葉をお送りさせていただく。誠に感謝している」
「い、いえ、そんな!ぼくたちは当たり前のことをしただけで…」
「うみゃあ…。私も何だかムズムズする…」
「遠慮することはない。私もパラディンの称号を贈りたいくらいだ」
「ぱ、ぱらでぃん…?」
「騎士の上位称号、ジャパリ騎士団でも上位のクラスに位置するものだ。そこのキタシロサイと肩を並べる程の上位職だぞ、かばん殿」
「そ、そんな!ぼくにはそんなもったいなさすぎです!ただのゲリラの戦士として戦ってたぼくにはとても不似合いですよぅ…」
「ははは、驕ることなき良き心のお持ちのようだ。我々の騎士団に欲しいくらいだ」
「うぅ…」
ぼくも確かにゴコクエリアのみんなのために戦った。理由はクロサイさんと同じで、セルリアンに怯え、明日をも知れぬ不安に震えて暮らすフレンズさんを見捨てられなかったからだ。その中でもぼくたちは強くなり、成長していった。
成長できたのは良かったと思う。けど、それと同時に失っていったのも多かったとも思う。その失ったものを思うと…あまり喜ばしいものではなかった。どうしてもそう思えて仕方がない。
「それで本題だがエル殿。昨今、リブトンエリアを荒さんと跳梁跋扈する輩がいると伝え聞くが、何か知らないか?」
「ああ、その件か…。ボルテ・チノ…。数か月前より急に現れた、自らをハーンと称するオオカミのフレンズだ…。眷属に、白きペプロスに身を纏うホワイト・ホース、自らを世界の破壊者と称する、赤き炎を身に纏うレッド・ホース…。飢えと退廃をもたらす黒き魔術師、ブラック・ホース…。そいつらが今、リブトンエリアを荒らし回っているのだ」
「ボルテ・チノ…。聞いたことのない名前だ。それに、名前も我々の知るものと大きく違っているようだし、なんだか妙だな。それに比べてレッド・ホースやホワイト・ホースのシンプルさときたら…。ますます謎だな」
「サンカイエリアのガンジーやアンインエリアのラーテルとはまた違う異質さを感じるだろう?私の知る情報筋では、どうやら神話由来のフレンズのようなんだ」
「ベヒモス殿と同じ類の出自ということか?」
「そうだ。セイリュウのように水を操ったり、ベヒモスのように深層意識を解放することで凶化するような特殊能力を持っているとも限らん。我々としてもリブトン、パーク全体を脅かす存在として見ている。君たちも十分に気を付けることだ」
「わかった。忠告感謝する、エル殿」
必要な情報を手に入れたぼくたちは、エラスモテリウムさんと別れてキャメロットを発つことにした。あとは、手に入れた情報をベヒモスさんに伝えるだけなのだけど…。
ぼくたちはバスに乗り込むと、ベヒモスさんの所へとバスを走らせた。騎士団の団長と相対した緊張から解放されて、どっと疲れがぼくたちを襲った。
「うみゃあ…。緊張したぁ…。あれだけ緊張したのは久しぶりだよぉ…」
「そうだね…。初めて平原地方に行った時のことを思い出すよ…」
「平原地方…。確か、そこでシロサイお嬢様に会ったのだったか?」
「うん。今も元気にしてるかな」
「そうだな…。私もそのことだけが気にかかっている…。姫…。早く会いたい…」
「………。ねえ、かばんちゃん。リブトンエリアの探索が終わったら、いっかいキョウシュウエリアに帰ろうよ!私も久しぶりにサバンナに行きたいしさ!」
「そうだね。たまには休憩も大事だしね。サーバルちゃんに教えてもらったこと、忘れるところだったよ」
「じゃあ、決まりだね!クロサイ、私たち一回キョウシュウエリアに帰るから、クロサイも一緒に帰ろうよ!」
「……いいのか?かばん殿たちはヒトを見つけたいんじゃ…」
「言ったけど、ぼくたちは旅の途中で休憩を入れるつもりなんだ。羽休めのついでにシロサイさんに会うだけだからね。それ以降はクロサイさんに任せるし、シロサイさんと過ごすって言うなら止めはしない。そこはクロサイさんに任せるよ」
「かばん殿…。貴君には何から何にまで…。本当に感謝してもしきれないくらいだ…」
「あはは、大げさだよ」
そうこうしている内に、ベヒモスさんのいた川のほとりに近付いてきた。しかし、何やら様子がおかしい。何か黒い影がいっぱい見える。あれは…。
「何かいっぱいいる…」
「……っ!セルリアンだ…!ベヒモス殿ッ!!!」
クロサイさんが単騎、黒い海の中へと突撃していく。その黒い海の中心にいるのは…悪魔のような姿をしたベヒモスさんの姿だった。
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