第7話 6
「悠人様、今日のリハビリお疲れさまでしたっ。前よりずっとうまく歩けるようになりましたよっ」
「ありがとう。ユイリー」
父さんと母さんが家に来てから数日が経った。
僕はそれからもリハビリを続け、普通に歩くなら手すりにあまりつかまらなくても良くなるほど回復した。
ゆっくり歩けば、普通の人と変わらない程度には歩ける。
まあ、順調ってとこかな。
これでユイリーが余計な茶々を入れなければもっと進むのに。
「それでは悠人様、夕食までごゆっくりおやすみください」
「あいよ、ユイリー」
僕はそう応えると、いつものようにリビングの長ソファに座った。
ふんわりとした形状記憶素材がすぽっと僕の体を包み込む。
ああ〜、気持ちいい〜。
さて、いつものあれをやるとしますか。
神経インタラプトシステム起動、エンタテインメントシステムに接続、クラシックゲームコンソールエミュレータ起動っと……。
いつものリビングから風景が変わる。
軽快なピコピコ音で構成された音楽をBGMに、白一面の空間にいくつものゲーム機のタイトルアイコンが空中に浮かぶ景色。
ユイリーのエンタテインメントサーバの一機能である、ヴァーチャルゲーム世界のメイン画面だ。
今日は何をやろうかな……。これにしよう。
手を伸ばし、タイトルアイコンの一つに触れる。
すると、そのアイコンが広がり、ゲーム機のタイトル画面になった。
そのゲームは昔流行ったというアンドロイドを主人公としたアクションRPGだった。
途中までやってるけどストーリーが暗いんだよなこれ……。
でも、その救いの無さで流行ったとも言うゲームなんだよな。製作者をロッカーに入れたいぐらいには。
あと、この操作するキャラクターの主役アンドロイドに人気が出て売れたというのもあるらしい。
主に尻と膝らしいが。
それはともかく。
手にしたヴァーチャルのコントローラーでそのアンドロイドを操作し、敵キャラを倒し、クエストをこなしていく。
綺麗なアンドロイドだ……。
こういうアンドロイドを人間は求め、そして実現させたんだよな。
そしてこのアンドロイドを僕たちは今使っている……。
そんな道具である、アンドロイドを、オートマタを、僕は好きになっても良いのか?
人間ではないものを好きになってもいいのか?
コントローラーを動かしていた指が止まり、慌てて動かす。
……。
…………。
まあ、二次元のキャラを好きになるのはどこにでもいるし、三次元のモノ、例えば車とか飛行機とかに名前をつけて可愛がる人たちだっている。
ならば、人の形をしたものを好きになっても、愛しても全然悪くないじゃないか。
うん。
そして、思う。
僕は、ユイリーを好きになっても良いんだ。
ならば、僕はいずれこのレンタルが終わったら、解体されるユイリーになにか思い出を残してやらなきゃ。
なにかしてやらなきゃ。
ゲームなんかしてらんないや。
よしっ、セーブ。終了。
僕はエンタテインメントシステムを終了させた。
白一面の世界へと戻る。
それから、僕はある存在を呼び出した。
「ミネルヴァ」
「なんですかホー」
目の前に現れた物言うフクロウに僕は声をかけた。
「ちょっと相談なんだけどさ……」
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