第24話 遥華様は千翼くんとお泊まりたい ①
「う〜ん…やっぱり一泊二日となるとそこまで遠くに出かけれないよなぁ…。しかも遥華の希望を叶えるとなるとそううまく見つからないしなぁ」
千翼と遥華の二人きりの旅行が(強制的に)決定して数日…
千翼は遥華の希望に叶った旅行プランの作成に死力を尽くしていた
遥華の希望は【旅行客があまり使用しないけど綺麗な外観の旅館】に【絶景が見れる露天風呂付きの部屋】が付いていることが最低条件らしい
「…んな好条件な旅館が近場に都合良く見つからないっての…【カチカチ】」
千翼は旅行サイト【しゃら〜ん】で一泊二日で行けそうな旅館を数多く目を通したがなかなか希望のプランが揃っている旅館が見つからなかった
好条件の旅館は見つかっても早朝から行ってもとても遠すぎてのんびり出来ないところしかなかった
千翼は【しゃら〜ん】以外の旅行サイトで検索してみるも結果は変わることはなかった
ガチャ
「やっほ〜ち〜ちゃん!楽しい旅行プランはできたかにゃ〜?」
コーヒーを一杯飲んで一息入れていると遥華がテンション高く千翼の部屋に入ってきた
余程旅行が楽しみなのかもうすでに旅行気分なのか遥華は自前の着物を着て枕を両脇に持って現れたのだった
「…お前さぁ、出かけるのは来週なのになんでもう旅館の寝巻きに着替えて枕投げの準備完了みたいな格好してるんだよ」
千翼はコーヒーカップを置き遥華の格好を見てやれやれと呆れた
現在時刻は14時過ぎで寝巻きに着替えるにはあまりにも早すぎる
これが前日なら100歩譲っても良いのだが旅行は一週間後 やはり早すぎるのである
「うん!旅行の寝巻きはどれにしようか決めていたからね!今も専攻の真っ最中なの!!」
遥華はクルッと回って着物姿を千翼に見せて見せた
桜の花びらが散ったピンクの着物姿が遥華に似合っててとても可愛いのだが敢えて千翼は言わないでいた
言ってしまっても良いのだが言ってしまったが最後、本人が納得するまで着物ショーが開幕しそうなのでそこは回避したい
「それでなんで枕も装備してるんだよ?」
「え〜?ち〜ちゃん枕持っていかないの?」
「お前枕持って行く気なのかよ!?荷物が嵩ばるからだめだ!!」
「え〜!?」
一応遥華の“専属従者”である千翼は自分の荷物に加え“主人”の遥華の荷物の持っていく事になる
それに関して千翼は何も文句はないし自分でも当然のことだと思ってはいるものの荷物はやはり多くないに越したことはない
遥華が使用している枕は従来のものと違って崇道グループが特注で作った物のためクッションのように大きくて持ち運ぶにはかなり面倒くさい為、持って行くのは千翼的に絶対に避けたいのだ
「そもそも旅館に寝巻きの着物も枕も用意してあるんだから持って行く必要ないだろ?俺はあまり荷物を増やしたくないから必要最低限のものしか持っていかないぞ?」
「そうなの〜?じゃあコンドームやローションとかはどうするの〜?」
あまりにもお嬢様のセリフとは思えない発言に千翼は思わず椅子から転がり落ちたのだった
「ち〜ちゃん頭大丈夫?おかしくなってない!?」
「そのセリフをお前そのまま返してやるわ!!」
頭を覗き込んで千翼を心配する遥華に千翼は立ち上がりながらツッコミを入れた
「え〜?だってち〜ちゃんとお泊まりするってことはそういうことするでしょ?私その日のために勝負下着を用意しておこうと…」
「持って行く訳ないだろ!!って言うかお前の荷物見せて見ろ!検閲してやる!!」
「え〜?ち〜ちゃん今見ちゃうとお楽しみがなくなっちゃうけどいいの〜?」
「そういうとこで楽しむつもりはないから!!」
千翼は遥華が用意した荷物を許可を得て見せて貰うとかなり際どい下着が大量に入っていた
中にはどうやって着るのか千翼には全く分からないような下着(と言うよりも紐?)まで入っていた
「…お前まさかこれ全部持って行くとは言わないよ?」
「ん〜?そこに入っている物は全部持っていくよ?どう?可愛いでしょ〜!!」
千翼が恐る恐る聞いてみると遥華は水着を紐の下着(ほぼ紐だから下着と言えるのだろうか…)を服の上から押し当てて千翼に見せて見せる
予測だが恐らく遥華の大きなおっぱいを隠せるとは思えないのだがこれを持ってくらしい
「【スッ ピッピッ】『もしもし旦那様ですか?お忙しいところ申し訳ございません。実は旦那様に申し上げたいことが…』」
千翼はスマホを取り出して遥華の父の浩介に報告を入れる
娘の不純的行動をなんとか咎めて貰おうという腹だ
「『あぁ、遥華から旅行の話は聞いているぞ?金はこちらから用意しておくから二人で思う存分楽しんできなさい』」
「『ありがとうございます。それで遥華様のお荷物で少々問題がありまして…その、下着なんですが……』」
浩介は事前に遥華から話を聞いていたようで浩介に旅行の事を報告していなかったことについて何か言われるかと思っていたが問題ないようだ
それならば話は早い 実の娘が不純的行動をきっと浩介なら止めてくれるだろうと千翼の期待は高まった
「『あぁ、それなら遥華が「ち〜ちゃんはどんな下着が好きかなぁ?」って聞いて来たから少しばかりアドバイスさせて貰ったぞ?中々良い線行っていたんじゃないか?』」
「『旦那様の仕業だったんですか!?』」
まさかの紐の下着等を勧めたのが父親の浩介だったことに声を荒げてしまった
てっきり勧めたのは先輩変人従者の鈴だとばかり思っていただけに驚きが隠せなかった
「『まぁ、その…なんだ。孫は2年後まで我慢しておくから避妊はするのだぞ?流石に在学中に妊娠は遥華の負担もあるだろうしな』」
「『避妊も何にも今回の旅行でそのようなことするつもりは毛頭ありませんから!!』」
愛娘を想って自分の家の従者の男に普通は「私の可愛い娘に手を出したらタダじゃおかんからな!!」というのが父親なのに避妊させようとし行為自体を咎めない当主は恐らく彼のみだろう
「『では私は仕事に戻るから楽しんでくるんだぞ〜?』【ピッ】」
「あっ!ちょまっ……」
千翼は浩介に電話を掛けるも仕事に戻ったようで繋がることはなかった
観念した千翼は後ろの遥華の方に視線を向けると彼女は両脇に枕を抱えて満面の笑みを浮かべていた
「旅行楽しみだねち〜ちゃん!!」
「…………」
今すぐ旅行先に隕石が落ちてこないかなと少しばかり祈る千翼だったがそんな気持ちとは裏腹に何事もなく旅行の日を迎えたのだった
〜つづく〜
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次回もお楽しみに!!
遥華様は千翼君から離れたくない 松下タツヤ @TO_Tatsuya
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