第20話 遥華様は問い詰めたい

「はぁ…なんか今日はいつも以上に疲れた気がするなぁ…」


千翼は萌奈もなからの濃密すぎる誘惑を受け続け、心身ともに疲れ切った状態で(ほとんど心なのだが)帰路に着いた


正直言って今日の遥華の“専属従者”としての仕事は先輩従者の鈴に任せて休もうかと考えてしまうが“執事長”の長谷川に休みたいことを言ったら「お嬢様の“専属従者”である貴様がその体たらくでどうする!!もっと自分の立場を考えてものを言わないか!!」と怒鳴られてしまうのが目に見えている


「まぁ…遥華といつも通り過ごした方がまだ心的にもマシか…。」


今回の罰清掃の件で既にこっ酷く叱られたばかりなのに更に怒りの火種に大量の薪を投入する気は千翼もない


「ふぅ…【ガチャリ】只今戻りました。」


溜息を吐きつつ玄関のドアに手を掛けると千翼は平凡な男子高校生の表情から“専属従者”の表情に移した

これが千翼のルーティンである

一、二歩前まで遥華と仲良く話していてもこの玄関から先へ入る時には表情と心持ちを一瞬で“専属従者”に切り替える

生半可な態度や心持ちでは仕事はしないと“専属従者”になった日から続いている決まり出る


「え!なんで!?ど、どうしたのち〜ちゃん!?」


「どうかしましたか遥華お嬢様?わたくしおかしなことがありましたでしょうか?」


「それだよそれ!さっきまで普通に私と話してたのにいきなり執事さんモードになって…。」


わたくしは崇道家の従者であり先日より遥華お嬢様の“専属従者”でございます。わたくしの身分ならば遥華お嬢様に敬語は当然かと思われますが?」


「それはそうだけどさ〜。でも私と二人っきりの時くらいは普通に接してよ〜?」


「いけません。崇道家の敷居を跨いだ瞬間からわたくしは従者の一員になります。生半可の気持ちで引き受けた訳ではありませんのでお嬢様も最初は慣れないかと思われますがどうか慣れてくださいませ。」


遥華も当初は急激な千翼の変わりように戸惑い、自分の前ではいいのでは?疑問を投げかけたことが多々あったのだが千翼は全て断ったのだった

その後も遥華からのクレームが度々あったため、千翼は遥華と二人きりになれる時は普段通りの態度で接すると約束し、遥華もそれに了承したのだった


「あっ!なら私もち〜ちゃんに習ってお嬢様言葉を頑張るよ!!」


「え?でも俺が勝手にやっているんだから遥華までやる必要はないよ?奏んなると色々と窮屈になるだろ?」


「いいのいいの!私が好きでやるだけだしち〜ちゃんが頑張るなら私も頑張ってみたいの!!」


と言う話になり遥華も千翼に習ってお嬢様口調で生活することになった

当初はお嬢様らしくなったと“執事長”の長谷川も感涙し、嬉しそうに海外にいる遥華の母親に報告したほどで遥華もやる気が上がった

だがそれも長く続く事はなかった

千翼と二人きりの時以外常にお嬢様口調で話さないといけないことがかなり窮屈な思いをした為、体調を崩す程ストレス溜まってしまった


「うっ…ヒック…ご、ごめん…ねち〜…ちゃん」


「泣くなって…俺が遥華に無理させちゃったようなものだから全部俺が悪いんだ。遥華が謝るようなことは何もないから謝らないで?」


「うぅ…でも!でも!!ち…ちゃんが、がんば…ってるのに!!」


ベットの上で寝込む遥華は脇に座って看病をする千翼の胸に抱きついて涙を流すのだった

一緒に頑張ると決めたのに自分だけ不甲斐ない結果になってしまったことに情けない半分申し訳ない半分の感情に遥華は陥っている

そんな遥華を頭を優しく撫でて慰めるが一向に泣き止む気配がない


「俺はお前の“専属従者”として頑張るって決めたからさ、それに俺はお前の笑顔を見るのが…その、好きだからさ…。その笑顔を守るために頑張ってるようなものなんだよ。」


「ち〜…ちゃん……」


「だからさ、遥華は遥華のままでいて欲しいんだよ。明るく元気で可愛い遥華が好きだからさ」


こうして遥華はお嬢様口調をやめて元の口調に戻したのだった

“執事長”の長谷川はお嬢様口調のままでいて欲しく止めるのに反対だったのだが千翼の説得と遥華の「じいやなんか大っ嫌い!!」発言が響いたのかそれ以来遥華に口出しする事は無くなったのだが千翼には遥華のお嬢様口調を進めるよう今でも進言してくる


「(まぁ、遥華が今楽しそうにしてるから今更そんなこと進める訳ないんだけどなぁ〜。長谷川さんもしつこいしつこい……ん?なんだ??)」


そんな昔のことを思い出しついつい思い出し笑いをしてしまう

ふと前方より怒気のような妬みに似た気配を感じ取った千翼は前方を見てみるとそこには…


「ふふふ…遅くまでお疲れ様。ち〜ちゃん♡【ゴゴゴ…】」


腕組みをして後ろから真っ黒いオーラを放ちながら明らかに千翼の帰りを待っていた遥華が待ち構えていた



                            〜つづく〜



今回も読んでいただき誠にありがとうございました!!

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次回もお楽しみに!!



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