第13話 遥華様と千翼君の学校生活 ②
「許してって何かな〜?私はち〜ちゃんがモテてることを正確に報告しているだけなんだけど〜?」
「何も口に出して報告しなくたっていいじゃんか…」
「じゃあこれならどうかな?【スッ】」
遥華がスマホの画面を見せるとそこにはクラスの女子に囲まれている千翼が困りつつも優しく接している動画が映っていた
「お前これいつの間に撮ったんだよ…」
「さ〜?ご主人様の私を蔑ろにして他の女にデレデレしてる従者になんか教えてあげませ〜ん」
「さっきご主人様と従者の関係じゃないって言ってたじゃんか…」
実の所遥華のスマホのフォルダにはこういった千翼の浮気動画(本当にその名前のフォルダにしている)が何百個も保存されている
何年何月何日何時場所誰となど細かい情報が書かれており万が一の為に備えている
しかもその動画全てに編集が加わっており遠くから見えづらいということも無くなっている為、千翼や相手の表情や行動もバッチリ捉えている
「あ〜あ!教室行ったら絶対ち〜ちゃん囲まれちゃうんだよね〜!ねぇねぇち〜ちゃん?今から学校サボって何処か遊びに行かない?」
「…お前本当に日本屈指の会社のお嬢様なのか?そんな言動するお嬢様なんて見たことないぞ?ほら行くぞ?」
「…あっ、ち〜くんなの【ギュム】」
「なっ!?…クアッ!?だ、デレ!?」
教室に行くのを拒む遥華を引っ張りながら連れて行く千翼を発見した女子生徒はトットッと小走りで近づくとそのまま千翼に抱きついた
いきなりの出来事に千翼も南国の鳥のような奇声を発してしまった
「なっ…なな……何してくれてるのよあなた!私のち〜ちゃんから離れなさい【グググッ】」
千翼の腕にくっついていた遥華は突然現れた女子生徒を引き剥がそうと頭を思い切り押すのだがピクリともしない
「…おはようなのち〜くん。今日も千翼くんはあったかくて気持ちいいの…」
「…お、おはよう
「ちょっとち〜ちゃん!何のんびりその女と挨拶なんかしちゃってるのよ!!ちゃんとはっきりと拒みなさいよ!!」
“
千翼と遥華の同じクラスの生徒でピンクのポニーテールがチャームポイントの寡黙な少女だ
星峰学園に入学してすぐに懐かれて以来、萌奈は千翼を見つけるや否やすぐに背中に抱きついて離れない為、遥華は彼女の事が大嫌いなのである
「…あぁ、いたの。その……さん」
「何名前が出てこなかったからってあやふやにして誤魔化してるのよ!!私の名前は崇道遥華!!ち〜ちゃんの“幼馴染”よ!!」
千翼の提案で千翼は学校では崇道家の従者ということを内緒にしている
そのほうが色々と面倒じゃないとかなんとか…
「…ねぇち〜くん?
「そんな贅沢を私が許すわけないでしょ!いいからあなたはち〜ちゃんから離れなさい!!」
「…あなたには聞いてないの。
「「…………【バチバチバチ】」」
背中と腕にくっついて千翼を争う二人
遥華は
「あの…二人とも?そろそろ行かないと遅刻…」
「貴方達!学校の廊下で何淫らな行為をしているの!!」
千翼が自分の身体に引っ付いて火花を散らしている二人を何とか宥めようとした時、千翼達の後方から怒号が聞こえてきた
“
千翼達のクラスである1年3組の学級委員にして風紀委員も務めている彼女は他の風紀委員と比べて特に風紀に厳しいのであった
先輩だろうと権力者の息子であろうと少しでも規則を破っていれば容赦無く罰する為、入学して1ヶ月程で学園の先生達からの信頼を勝ち取り注意された生徒は皆「お前も少しは清水を見習ったらどうだ?」と比喩されるほどである
因みに彼女の後方には規則を破ったのだろうか、反省文の用紙を持って肩を落としている生徒がいたのだった
「あら、誰かと思ったら崇道さんと蓑島さんじゃないですか。朝から一体何しているのかしら?」
「私はち〜ちゃんと一緒に教室に行こうとしたらこの痴女がち〜ちゃんに淫らな行為をして来たから引き剥がそうとしてたの。決して淫らな行為じゃないわ?」
「…
「あなたまた私の名前忘れてるじゃない!遥華よ!は・る・か!!それといい加減ち〜ちゃんから離れなさい!!」
「…あなただって離れていないの」
「はぁ…とにかくあなた達は遅刻してしまうから早く教室へ行きなさい?私はここにいるセクハラ違反者を説教してから行くから」
「えっ!?俺はアウトなの!?」
自分はてっきり蚊帳の外だと安心しきっていた千翼はいきなりの死刑宣告をくらい驚愕してしまった
〜つづく〜
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