第11話 遥華様は歩いて登校したい (後編)


「悪かったな。俺は別にお前の事太ってるとか思った事一度もないんだよ、ごめんな?」


千翼は遥華に頭を下げて先程の発言の謝罪をする


「で、でも!私なんてクラスの子とかと比べるとちんちくりんだしちょっとむちっとしてるし絶対太ってるって思ってる!!」


「確かに遥華はグラビアモデルみたいに抜群のプロポーションって訳じゃないけど別に太ってるとか思わないぞ?それに男子の間でもお前の体型について悪く言ってる奴なんか見たことないぞ?」


「ほ、本当!?う、嘘だったりしたら怒るからね!?」


「こんなつまらない嘘吐くほど俺とお前の関係は浅くはないだろ?」


「そ、そうだね!えへへ…よかったぁ〜」


遥華は嬉しい反面、実は自分の体型のことについて思うことがあるのではないかと不安になりクラスで人気のある女子たちと自分との差をつらつら述べて来る

千翼はそんな不安そうな遥華の頭を撫でて諭すと遥華は安心したようだ


「(まぁ…汚い真実なんてこいつには似合わないからな…)」


しかし千翼は遥華に一つ嘘を吐いている

遥華の容姿を千翼は悪態ついた事は一度たりともないのだが、クラスの中では遥華がお嬢様であることからのつまらない嫉妬の様な事で遥華の容姿に悪態をつける生徒が数名いたのだった

クラスの中では遥華と千翼は“ 仲の良い幼馴染”として格付けられているが“主従関係”とは一才バレていない(遥華は主従関係という括りが嫌いなのであまり言わない)


「えへへ!何だか安心しちゃった!やっぱりち〜ちゃんは優しいね!」


「俺は事実を伝えただけだよ。」


「そっかぁ…。えへへ!ち〜ちゃんだ〜いすき♡【ぎゅっ】」


「わっ!お前いきなり抱きついて来るなよな…?びっくりするだろ?」


「え〜?だって嬉しいんだも〜ん♡」


嬉しくなった遥華は千翼の腕に思い切り抱きついてきた

しかも幸運なのか不運なのか遥華の豊かな胸の谷間が千翼の腕に丁度挟まった形になった(不運では断じて無いだろう)

しかも遥華が抱きつく力が強めれば強める程、胸の感触が更にダイレクトに伝わってきて千翼は顔に出さないようポーカーフェイスを保つのに全力だった


「ん〜?ち〜ちゃん下腹部が少しm…」


「それは公共の場で華の女子高生がそんな下品な事言ってはいけません!!…っていうか察したんだったら離れてくれん?」


「え〜?これってち〜ちゃんが私の身体で興奮してくれたってことでしょ〜?だったらもっと興奮して欲しいじゃん!!」


「華の女子高生が下品すぎるだろ!!」


顔の表情は正常を保てても生理現象はどうにもならなかったようだ

遥華は物珍しそうに千翼の下腹部の現象を眺めていて千翼が視線をずらそうとしないし全然離れてくれないどころか更に密着してきて生理現象が止められない


「あれ?ち〜ちゃんさっき「公共の場で華の女子高生がそんな下品な事言ってはいけません!!」って言っていたよね?」


ふと何かに気がついた遥華に千翼は嫌な予感しか湧いてこない


「あ、あぁ…。確かにそう言ったなぁ…」


「ってことは公共の場じゃない完全プライベートになる私の部屋だったらこういうことしてもいいんだよね?」


嫌な予感どころの話ではなかった

黒い影が現れたかと思ったらその影の中から大魔王や悪魔神が同時に現れた気分になった


「そ、そんな!そんな下品な事が許されるわけないだろ!!俺とお前はあくまで“主従関係”なんだぞ!?」


「私とち〜ちゃんはそんな“主従関係”なんてちっぽけな関係じゃないもん!!私にとってち〜ちゃんは世界中で誰よりも信頼できる大切な人だもん!!」


「ツッ……!!?」


千翼の言葉に遥華は猛反発してきた

その眼には小さな涙が溢れていた


「ち〜ちゃんはどうなの!?ち〜ちゃんにとって私はただの“ご主人様”なの!?答えて!!」


「お、俺は……」


遥華は千翼の腕から離れて千翼の頬を押さえて問い詰めてきた

遥華の問いに千翼はむにゃっと潰れた頬した顔で考えてみる


確かに千翼にとって遥華は“ご主人様”である

崇道家の従者として仕え、遥華の“専属従者”にもなった

何があっても遥華を守るのが自身の指名であるのは何も変わらない


「(でも…本当にそれだけなんだろうか?)」


遥華の事は大事だし何よりも大好きだ

それが“忠誠心”から来るものだけでは断じてない

一人の人間として千翼は“崇道遥華”のことが大好きだ


ただ…それは今この場で自分の想いを告げる訳にはいかない


「俺はお前のことが大事だよ」


本当の意味で遥華のことを守れる人間になった時に初めて伝えるのだ


「俺たちの関係は“主従関係”なんて柔い関係じゃないよ?」


でも…今、この場で大好きな彼女を喜ばせたい


「俺にとってお前は…遥華は大切な人だよ」


「……本当?嘘じゃない?」


頭を優しく撫でて千翼は遥かに本心を伝える

遥華もその言葉に嬉しさ半面不安反面の気持ちがあった

だからこそ自分の気持ちをほんの少しだけ伝えよう


「ば〜か!【チュッ】」


千翼は遥華の頬に触れるか触れないかわからないくらいのキスをした


「…………」


「何惚けた顔してんだよ。早く行かないと学校に間に合わなくなるぞ?」


「ふえっ!?…う、うん……。」


千翼は遥華の手を握り学校までの道を駆け足で歩んでいく

遥華の表情ははいつの間にか不安という言葉がなくなっていた




                            〜おわり〜



今回も読んでいただき誠にありがとうございました!!

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よろしくお願いいたします!

次回もお楽しみに!!

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