第9話 遥華様は歩いて登校したい
「ん〜!今日はあったかくて気持ちいいね〜!こうしてみると普段見てるつもりでも知らない店とかも多いんだね!あっ!!ワンチャン可愛い〜♡」
穏やかな気候の中、遥華と千翼は制服を纏って通っている私立高校までの道を徒歩で向かっていた
「あっ、見て見てち〜ちゃん!あっちにちっちゃい子達がいっぱいいるよ〜!!可愛いね〜!♡」
遥華が指差す先には2列になって横断歩道を隣の子と手を繋ぎながら渡っている小学生達がいた
「あぁ、そっかぁ…そういえばこの時間帯は小学校の集団登校の時間と被ってたな…全然気づかなかったなぁ」
千翼は時刻を確認すると時刻は8時を過ぎておりあたりには中・高生や会社員が通勤通学していた
「いいなぁ…私も一度でいいから皆で手を繋ぎながら学校行ってみたかったなぁ〜」
「まぁ仕方ないって。俺たちは小学校どころか幼稚園から送迎車だったから…」
私立の幼稚園でしかも崇道家の一人娘の遥華は幼稚園の頃から送迎車で通っていた
千翼も親が崇道家に仕えており遥華と一緒に過ごしていたこともあって一緒の幼稚園に通っていたため千翼も集団登校というものをしたことがない
その為千翼も一回でいいから集団登校をやってみたいという遥華の意見も頷ける
「だから一度でいいから歩いて学校行きたいって思ったんだぁ〜。作戦も無事に成功してよかったね!」
「本当だよ…そのための準備すんのめっちゃ大変だったからな?」
「えへへ〜。ありがとね!ち〜ちゃん♡【チュッ】」
遥華は感謝の印にと千翼の頬っぺたにキスをした
千翼も「やめろよ…」と遥華がキスしたところを腕で擦っているが頬が赤く染まっており遥華は嫌じゃないんだと安心してもう一度キスをするのだった
本来なら今日も送迎車での登校だったのだが遥華のお願いによって徒歩での通学が可能になったのだった
〜話は少し遡る〜
「申し訳ございません!お嬢様!!」
遥華と千翼が学校へ向かう送迎車へ向かおうと玄関を出ると“執事長”の長谷川が遥華の側に一目散に近づいてきてその場で土下座し始めた
「わっ!びっくりした…朝からどうしたのじいや?」
「はっ!何でも深夜にお屋敷に賊が侵入したみたいで送迎車などのタイヤが全て外されてしまいどこかに隠されてしまったようなのです…」
長谷川の頭を上げさせながら遥華は事の発端を聞くと長谷川は屈辱と言わんばかりに恨めしそうに説明した
「現在紛失したタイヤを総動員で探しておるのですが恥ずかしながら未だ見つかっておらず、現在代車を用意してるのですがこちらも到着しておりません…」
普段なら玄関から送迎車までの道を従者達並んで待っているのだが今日は長谷川しかおらず、他の従者達は紛失したタイヤを家の庭や倉庫など隈なく探していた
「ん〜…それだったら私歩いて学校まで行くよ〜。」
「なりません!!もしお嬢様に万が一何かがあったら…私は旦那様になんて申し上げたらよろしいのでしょうか…」
遥華は何故か嬉しそうに歩いていくと伝えると長谷川は断固として反対した
崇道家に40年以上仕えている長谷川の崇道家への忠誠心は生半可なものではない
主人には少しでも危険が及ばないように配慮しなければいけないのもあって学校への徒歩での登校は断固反対だ
「でもじいや?この状況でどうやって車で学校行くの?送迎車来るまで待ってたら私達学校に遅刻しちゃうよ?」
「そ、そうですなぁ…遥華様に遅刻させるわけには参りませんし…だけど遥華様を徒歩で学校に行かせるわけにも参りませんし…」
遥華の正論に長谷川も納得しようとしてはいるがやはり遥華に学校に徒歩で行かせるのは心配で許可がなかなか降りない
「それにねじいや?ち〜ちゃんも一緒に登校するんだよ?私の“専属従者”のち〜ちゃんが一緒に登校してくれるなら何も心配する事はないと思うよ?ね〜ち〜ちゃん?【パチパチ】」
遥華は切り札として“専属従者”である千翼が側にいることを強く主張する
“専属従者”というパワーワードの重みは長谷川も重々承知の筈である
「まぁ…遥華様が歩いて登校されると仰られるのなら私も当然ご一緒致します。私がご一緒すれば何も問題ないと思いますよ?“執事長”?」
「ぐ、ぐぅ…しかし万が一というものがあってだな…」
「それには及びません。こんなことがあっても問題がないよう周辺にはSPも更に派遣しております。…これでもまだ問題があると仰いますか?」
“専属従者”のみでは信用数が足りないと判断した千翼はさらに畳み掛けるようにSPという奥の手も投入した
長谷川もSPという存在は把握していおるがその手のことは全て千翼に一任している為
「ムゥ〜!し、仕方あるまい!その代わりお嬢様を命を賭けてでもお守りするんだぞ!!【ガシッ】」
「やった〜!それじゃあ行こっか!ち〜ちゃん!!」
「はしゃぎますと転んでしまいますよ?それでは行ってまいります」
渋々ながら了承した長谷川を他所に大喜びの遥華は千翼の手を取って家の門を出るのだった
〜つづく〜
今回も読んでいただき誠にありがとうございました!!
是非応援、フォロー、レビューなど頂けたら嬉しいです!
よろしくお願いいたします!
次回もお楽しみに!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます