第7話 千翼くんは報告をする
「んへへぇ〜…ち〜ちゃんのメイドさぁん…」
「まったく…散々騒ぎまくって散々振り回したかと思えば一瞬で夢の中か…。ほんとに世話のかかるお嬢様だよお前は…。」
時刻は深夜2時を回っており遥華も鈴もファッションショーの撮影に疲れたのかぐっすりと眠っていた
千翼の猫耳メイドさんのコスプレでエンジンを掛けた遥華はその後もバニーガール(男だからバニーボーイになるのか?)やCAさんのコスプレなど遥華の見たい千翼を堪能しまくったのだった
千翼も千翼で初めはかなりの羞恥心が存在したのだが1時間も経過すると意外と悪くないんじゃないか?と思い始めていき、強制から自主的に着替えに行くようになっていた(自己防衛の為の現実逃避の説もあるが…)
「さて、とそれじゃあ本日最後の仕事っと…」
千翼はスマホを取り出して連絡帳を開く
崇道家に仕えている従者達を始め学校の友人などの連絡先が多数入っている中千翼は一番上に設定している人へ連絡を入れる
『…近況報告時刻よりも二時間程遅れているのだがどういう事か勿論説明してもらえるんだろうな?千翼』
電話の相手は1コールで出ると機嫌悪く出たのだった
『申し訳ございません旦那様。遥華様のお稽古の後に少々遥華様のお話のお相手をしていまして、数分前に遥華様がお休みになられましたのでこの時刻になってしまいました。』
電話の相手は遥華の父親で崇道家の現当主である浩介だ
千翼の1日の業務で最後の業務は本日の遥華の生活内容を報告すること
普段から離れて暮らしている浩介にとって愛娘の遥華の1日は非常に興味のあることで全て把握したい事でもあるが、思春期の女子高生である娘のプライベートを聞くことは例え愛娘といえど許してくれない
『まぁ…よかろう。お前には普段から遥華の面倒を見てもらっておるし、それに面倒な仕事まで引き受けてもらっているしな。多少の事は多めに見ようじゃないか』
『恐れ入ります』
娘から嫌われる事を回避しつつ遥華のプライベート聞き出す方法を考えた浩介が導き出した答えは「遥華が唯一心を開いている千翼に聞けば全て丸く収まるんじゃね?」だった
『本日はいつものお稽古の後に遥華様の自室にて小規模ながらファッションショーが開催されました』
『ほぅ…ファッションショーか。【グスッ】遥華も自宅に友人を招き入れられる程社交的になったと言うことか…。成長したものだな』
人見知りの激しい遥華が友人を誘った
父の浩介にとって娘の成長は何よりも嬉しいことで電話の向こう側では鼻を啜る音が聞こえてきた
相当嬉しかったのだろうと千翼の口元も緩んだが事実を報告することが仕事の為、緩んだ口元を引き締めた
『お言葉ながら…そのファッションショーに参加した者は私とサポート役の瀬川鈴のみでございます』
千翼は真実を浩介に報告した
『【はぁ〜】それでは前と何も変わってはおらんではないか…』
大きい溜息を吐き浩介は明らかに落胆していた
『ですが学校では友人を作る努力をしております。遥華様自ら自宅へ招くのも時間の問題かと思います』
『本当か!?嘘ではあるまいな?』
『勿論でございます。その為に私も進んで遥華様の友人作りのサポートを行ってますのでご安心ください。』
落胆する浩介に千翼は咄嗟に嘘を吐いて浩介のご機嫌取りに励む
こういう報告をしなければ浩介は事あるごとに千翼に遥華について聞いてくるので安心させる必要がある
忙しいはずなのに酷い時は1時間に6回も聞いてくる程聞いてくるのは流石に面倒くさいのは内緒だ
『うむ!やはりお前に遥華を任せたのは間違いでは無かったな!!今後も遥華の面倒は任せるぞ』
『お任せ下さいませ』
すっかり上機嫌になった浩介の声を聞いて千翼も安堵する
『それでは今日の報告はここまでにしておこう。いつもの奴は送っておいたからしかと目にしておきちゃんと報告するのだぞ?』
『……かしこまりました』
浩介の言葉に千翼は歯を食いしばり浩介に誠意一杯返事をした
『ではな…。遥華のことはくれぐれも頼んだぞ?【ピッ】』
浩介の報告が終わり千翼はスマホを枕元に思い切り投げ付けるとPCを開き浩介から送られてきている“課題”に取り組むのだった
時刻は…既に四時を回っていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます