第6話 遥華様は千翼君に着させたい(後編)

「身近にこんな好みのイケメンがいて!しかも遥華様の頼みだったらこんなショーまで開いてくれる忠実な従者仲間が側にいるなんて超ラッキーじゃないですか!?こんな機会逃す方がおかしいですよ!!」


「あの…鈴さん?少し落ち着いてください…」


「千翼君は早く着替えてきてよ!!私もう我慢の限界が近いの!!」


「お願いですから正気を取り戻してください!!」


鼻息荒く熱弁する鈴に千翼は肩を揺すって説得をするが近寄ってしまったのがマズかったのか鈴は目をグルグルに回して鼻血を出して逆に説得してきた


「そうだよね!普段からと〜ってもかっこいいち〜ちゃんが可愛い格好したり恥ずかしそうにしたりしてる姿を沢山見たいもんね!!鈴さんわかってる〜!!」


「お褒めに御お預かり光栄ですお嬢様。」


「遥華でいいよ!これから私達は同じ志を持った同志なんだから主人と従者の壁なんて私たちには必要ないんだからさ!!これからはお互い助け合ってち〜ちゃんの可愛い姿を記憶に残していきましょ!鈴さん!」


「かしこまりました遥華様。私も遥華様と同じ志を持っていることに非常に光栄です。私の技術の全てを遥華様に提供いたしますわ」


普段から想像出来ない鈴の姿に千翼はドン引きしていたがその一方で遥華は逆に目を輝かせており気がつけば鈴と遥華の間に堅い絆を築かれていた


「あの…二人とも?少しは僕の話を聞いて…」


「「早く着替えてきて!!」」


「は、はいぃ!!」


こうして千翼は遥華と鈴の勢いに負けてしまい千翼は泣く泣く遥華の渡された沢山のコスプレの服の入った箱を持って遥華の部屋を出ようとしたがドアノブを手に持った瞬間二人に服を掴まれた


「あ、あの…離してもらえないと僕着替えにいけないんですが?」


「逆に聞くけどち〜ちゃんはな〜んで私の部屋から出て行こうとしているの?ここで着替えれば早く済むでしょ〜?」


なんでわからないの?みたいな顔をされるが千翼からしたらなんでこの場で着替えないといけないのだろうかと疑問に思った

これから恥ずかしくなることをしないといけないから今更着替えごときで恥ずかしがるわけでもないはずだが


「そうよ。イケメン従者の着替えシーンを沢山撮りたいんだから千翼君に出ていかれるすっごいと困るんだけど?【ポタポタ】」


「…分かりましたから鼻血拭いてください鈴さん。鼻血出されながら迫られるととすっごい怖いんですが…?」


もうこの人はこういう人なんだなと諦めがついた千翼はティッシュを鈴に差し出した

鈴の鼻血は全く止まらずティッシュを変えては赤くなり変えては赤くなりの繰り返しをして既に20回は超えており顔付きも心なしか青くなっているようにも見えた


「鈴さんがこの状態じゃあ、あまり刺激的なものを見せるのも良くないし俺は自室で着替えてくるよ…」


「何言ってるの千翼君!!それじゃあ沢山のカメラを用意した意味が無くなっちゃうじゃない!!【ダバダバダバダバ】」


「鈴さんは早く鼻血を止めてください…それじゃ俺は鈴さんが死んじゃう前に着替えてきますから【ガチャ】」


鼻血の量は倍以上になっており顔付きも青から紫を通り越して黒になで移行していたので千翼は急いで自室へと向かった


〜そして数分後〜


「あっ!ち〜ちゃん着替え終わったって!!」


「はぁ///はぁ///は、早く…早くイケメンを…」


「鈴さん少し落ち着こ?あまり興奮しすぎちゃうと身が持たなくなっちゃうよ〜?」


カメラを構えて待機している鈴のテンションは既に上限を超えておりいつヒートしてしまってもおかしくないほど高まっていた

流石の遥華も心配になり背中を揺すって落ち着かせるがあまり効果はないようだ


「ち〜ちゃ〜ん?鈴さんが持たなさそうだから早く入ってきて〜?」


「…マジで鈴さん休ませたほうがいいんじゃないか?」


遥華は一応鈴に休むかどうか聞いてみたが即座に断りカメラの位置をミリ単位で修正していた

そしてすぐ近くにはPCも用意していることから千翼の撮影したら即刻編集作業にまで入るつもりらしく抜かりはないようだが…



「じゃあ…入るよ……」


ドアノブを開ける前に盛大に溜息を吐き、覚悟を決めた千翼は遥華達が待つ部屋の扉を開ける

千翼が選んだコスプレは…


「きゃああああ///!!ネコミミメイドさんだぁあああ!ち〜ちゃんかんわいぃぃ!!!」


普段は絶対着ないであろうフリルのついたメイド服を纏ったネコさんメイドだった

千翼の髪の色にあった黒の猫耳はよく見るピンと立っているものでは無くスコティッシュフォールドのような軽く折れている耳となっており手には白い猫の手の手袋を装着していた


「………イィ…すっごくイィ…【バシャバシャバシャ】」


テンションハイマックスとなった遥華とは対照的に鈴は先程までの興奮は何処へやったのか無我夢中でシャッターを切っていた

鼻血は大丈夫か少し心配だったのだが鈴の鼻には無数のティッシュが詰められており服にも着かないようエプロンをつけタオルもつけてあった


「俺…何やってるんだろうなぁ……」


「大丈夫よち〜ちゃん!!すっごく似合ってるよ!!」


「そこは別にどうでもいいんだよ…」


「あっ!わかった!!」


遥華の「わかった!」発言に千翼は恐怖を感じた

遥華がこういう時に突拍子も無く言った発言に何度被害を受けたか流石の千翼も完璧には覚えていない

遥華とはそれ程強烈な提案しかしない厄介なお嬢様なのである


「ち〜ちゃんが恥ずかしくならない。そして鈴さんも鼻血を出さなくなるくらい頻繁にファッションショーを開催すればいいんじゃない!?」


「お前まだ俺にコスプレさせる気かよ!!?絶対にやらないからな

!!」


千翼の予測通りである

こうして千翼の地獄と遥華&鈴の天国タイムが始まったのである

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