第4話 遥華様は千翼君に着させたい(前編)

「「「いってらっしゃいませ!!!」」」


「行ってきま〜す!」


「……行ってきます」


崇道家の従者一同が二列に並んで遥華の登校の出迎えをする

その仕草一つ一つが無駄が無く一ミリもズレが出てないのは普段からの洗練された教育の賜物である


その列を遥華は従者全員に手を振って笑顔で答えている中、遥華の後ろに付いている千翼は苦悶の表情を浮かべていた

別に従者達のヒソヒソ話が気になるわけでも、列の先頭に立って遥華を出迎えている執事長の長谷川の睨みが怖いわけでもなんでもない


「(クッソ!めっちゃ食い込んできやがる…!!)」


遥華に強引に穿かされたTバックの食い込みが気になって仕方がなかった

普段穿くボクサーパンツでは味わないお尻への食い込みが千翼の集中力を削ぎ落としていた

あの後いつの間に用意していたメンズ用Tバックを穿かせようとする遥華に縋る想いで断わり続けていた千翼だったが遥華は引く所か


「えぇ〜?じゃあご主人様の命令を聞けないち〜ちゃんにはお仕置きとして私のパンツを穿かせようかな〜?」


と遥華は自身が所有しているちょっとセクシーな下着を穿かせようとし始めたので千翼は即座にTバックを手に取って遥華に見せないよう瞬時に穿くのだった


「ふふ、ち〜ちゃんったらお尻気にしちゃってどうしたの〜?」


「…白々しいですよ遥華さま。この状況を作り出したのは紛れもなく遥華様なんですよ?」


張本人の遥華はお尻を気にする千翼の反応を心底堪能していた

しかしこの張本人は千翼にスカートを穿いて欲しかったのだが千翼が涙目になって懇願した為、その野望を果たせずにいたのだった


「帰ったらち〜ちゃんに似合うスカート穿かせないといけないなぁ〜。Amasonで探しておかないとなぁ…」


前言撤回 遥華は野望を忠実に果たそうとしていた


「遥華様…本日は花道とピアノのお稽古が入っておりますのでお遊びを楽しむ時間はないと思いますが?」


「え〜?別にお稽古が終わってからだったら充分時間あるよ?」


千翼は少しでも罰ゲームを先延ばししようと画策するが遥華はやる気満々だった


「それに稽古後に楽しみがあればきついお稽古も楽しみになってくるし一石二鳥じゃない!」


「その発想ですとお稽古の度に私のファッションショーが開催されるように聞こえるんですが……」


「【パアァ】ち〜ちゃんあったまいい〜!!そうね!じゃあ今日からち〜ちゃんのファッションショーを今日から寝る前に開催しよ〜っと!!」


「(あっ…死んだ……)」


失言とは本人が意図せずして発せられる事が多いのであった

千翼は自分の意図せず発してしまった発言を死ぬほど後悔したのだった

隣にいるお嬢様を見るとお嬢様はAmasonを開いて【コスプレ メンズ用 ナース服】と検索していた


「あっこれ可愛い〜!ねぇち〜ちゃん?こっちのナース服とこの透け透けのやつとどっt…」


「早く車に乗ってください遥華様!遅刻しますよ!!」


千翼用のコスプレを早速選びつつある遥華を強引に送迎車に押し込んだ

このお嬢様は千翼の事になると行動が3倍以上の速さを発揮する

のんびりしていると千翼のファッションコーデがどんどん増えていってしまう前に遥華を車に押し込み自分も車に乗車する

執事長の長谷川の睨みが増した気がしたがこの際それはどうだってよかった


「んもぉ〜。ち〜ちゃんったら強引なんだから〜♡」


「【バタン】お前なぁ…俺が外ではあまり強く言えないからって勝手なこと言うなよな…?なんで俺が女装なんて…」


遥華は強引に押した押し倒された状態になっていたがすぐ様正しく座り直した

千翼的には遥華の黒のパンツが見えた事よりも今後遥華の稽古がどうやったら中止になるか考えることで必死になっていた(興奮していないとは言ってない)


「あっ!因みに注文はもう4つ済んでいるから帰ったら試着しようね〜♪」


「いつの間に注文したんだよ!!あと俺は絶対着ないからな!!!」


「んふふ〜。ダ〜メ♡今日はもうち〜ちゃんのファッションショーをするって決めたんだもん!拒否権は認められませ〜ん」


遥華はそのままAmasonを開いて千翼に着せるコスプレを吟味し始めた

千翼が止めようと話しかけるが遥華は携帯尾から視線をずらさずに「今忙しいから後にして?」の一点張りで止まる気配がない


「…今から筋トレ頑張ったらどうにかならないかなぁ……」


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