第3話 遥華様は千翼君に選んで貰いたい

『おはようございますりんさん。…申し訳ないんですけど今日もなんですけど……』


『うぅん、別に千翼君は遥華様の“専属従者”なんだからいつも言ってるけど気にしなくて良いんだよ?朝食の支度は私達がやるから千翼君は遥華様の方をお願いね?』


「『いつもありがとうございます…それでは後ほど【ピッ】』はぁ…いつも鈴さん達に甘えちゃって申し訳ないよなぁ…」


千翼は遥華専属従者のサポート役を務めてくれている片倉鈴にお礼と謝罪の電話を切ると溜息を吐いた

本来ならば千翼も鈴や他の従者たちと共に同じ業務をこなさなければいけないのだが遥華の“専属従者”となった11歳の頃からは常に遥華と一緒なのである


そもそも“専属従者”とは崇道家の当主の浩介や娘の遥華など崇道家直系者に一人につき一人専属の従者をつける事ができ、崇道家に仕える従者の中で極めて優秀な者にのみ与えられる名誉ある肩書きである

“専属従者”の剪定方法は主君直々の使命によるもので崇道家に長く仕えているからといって選ばれるわけではない

その証拠に崇道家に仕えて60年になる現執事長の長谷川も“専属従者”になるまでに35年も掛かるほどその肩書きへの道のりは険しい

しかし千翼は正式に崇道家に仕えてからわずか5年で後継者である遥華の“専属従者”の地位についたのだがそれにより千翼の業務は遥華最優先となり他の従者達との奉仕の仕事は無くなった


「ち〜ちゃ〜ん?今日のパンツなんだけどこっちの黒のパンツの方がいいかな〜?それともこっちのシンプルな白のパンツの方がいいかな〜?」


「うん。俺はどっちも好きだから年頃の女の子が下着を両手に男の子に迫らないでくれないかな?反応に困るわけだしまた長谷川さんに見つかって問い詰められるのも困るからさ」


自身の“専属従者”に指名してからというもの遥華の千翼への愛のアプローチは磨きが掛かりこういったお色気物も日常茶飯事となった

そして今、遥華の右手には少しセクシーな黒いレースのショーツが左手には対照的に白いナイロンのショーツを持っていた



「(やれやれ…今回の悪戯はどうやって回避するか…ん?なんかあれ…おかしいような?)」


千翼は遥華の持つ白のショーツに少し違和感があるなと思っていたのだがそのショーツの全貌を見てみるとその違和感の正体が判明した


「ってちょっと待て!!お前それTバックじゃねーか!!?」


「え〜?そうだよ〜?ちゃんとち〜ちゃんを誘惑するために選んだんだよ〜?」


「お前…それいつ手に入れたんだよ……」


遥華の左手にはシンプルな白のショーツかと思いきやグラビアアイドルやA○女優などが履くような白いTバックが握られていた

いつの間に用意したのだろうかという疑問はあるのだがそれは今更かと千翼は溜息混じりにそう納得した

というのも遥華は着替えの時に下着だけは必ずと言っていいほど千翼に選んでもらって居るのだ。遥華の着替えは“専属従者”に任命される前から勤めていた為、今更感情を表に出すような失態は犯さないのだがここ数年になって遥華の方に変化が訪れた


「Amasonだよ〜?ち〜ちゃんを誘惑するものあるかな〜って探してたらい〜っぱい出てきたんだ!」


「い〜っぱい出てきたんだじゃないわ!!そんなエッチな下着を履いて学校に行かせるわけないだろ!!さっさともう片方履いて朝食に行くぞ!」


「え〜?だって男の子ってこういうの好きなんでしょ〜?…いっその事何も履かないっていうのもありかもな…【コソッ】」


「【ガシッ!】俺は黒いパンツを履いたお前が好きだ!!」


「んもぉ〜!ち〜ちゃんの助平さんなんだから〜♡」


ぼそっととんでもない事を言い出した遥華を止めるために千翼は遥華の肩を掴んで黒のパンツを履いて欲しい旨を伝えると遥華は頬を赤くして照れながら黒のショーツを履いてくれたことに千翼は内心ほっとしたのだが次の問題が浮上する


「んしょ…んしょ…あれ?ち〜ちゃんってばなんで天井見てるの?」


「…ネズミさんが通った気がしたんだよ」


「ネズミさん〜?」


「そ、そうそう…ネズミさんネズミさん……(何で男の目の前で普通に下着とか履けるんだろうなぁ〜?この子。)」


いくら慣れているとはいえ女子高生が自分の目の前で下着を履く行為は直接見ていなくてもシュルシュルという布の音だけでも高校生男子の妄想をかき立ててしまう

無防備な上、自分に対して好意を示している遥華とはいえ相手は自分が仕えている主人なわけで襲ってしまうなど言語道断だ

その為千翼は少しでもダメージを抑えるために遥華の艶かしい姿を見ないようにしている

…もし付き合っていたらいけるのかなと思ってしまうのは男なら当たり前の感情だと思うよ?


「んっしょっと!あれ〜?ち〜ちゃんったらお顔が強張ってるけど何かあったの〜?」


「な、なんでも……ない…」


既に我慢の限界値まで一メモリというところでようやく遥華の着替えが完了した

毎度のことなのだが千翼はこの瞬間生きていてよかったと思えるくらいとてつもない達成感に包まれるのだった

しかし着替え終わったはずの遥華が自身のブラジャーを見つては千翼の方を見たりしていた


「ど、どうしたんだ遥華?もしかして…何か気に入らない事でもあったのか?」


千翼は遥華の元に屈んで遥華の悩みの原因を探る

遥華も千翼の方に視線を移すと


「お揃いの下着で通いたいなぁ…【ボソッ】」


「はぁっ!?」


核爆弾を急速に形成しいきなり炸裂させたのだった


「ねぇち〜ちゃん。私と一緒の下着で学校行ってみない?」


「じょ、冗談じゃない!!お、お前の下着なんか誰が穿くか!!」


「私の“専属従者”のち〜ちゃんなら……聞いてくれるよね?」


「おまっ!卑怯だぞ!!」


遥華の目は真剣そのものであり、これ以上はいくら懺悔しても一向に聞き入れてくれないのだ

こうして千翼の女性下着生活が開幕したのだった

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