第一話 6
とりあえず、自分のすべき事は勝手だが退路の安全確認。
もしもの時にまずは備えよう。
蓮は違和感を感じた畳みを裏返すと、隠し通路が存在した。
土地勘も方向感覚もない蓮はこの先がどこに繋がっているか分からない。
「あの領主様の事だ、安全な場所に違いないとは思うが…。」
蓮は畳の裏から発見した階段を降りていく。
鉱山の通路のような木の枠と松明だけで作られた道。
点検は毎日欠かさずやっていたのだろう。
残りわずかな松明は無かった。
「あの若さでここまで指揮をとれるとは…将来が楽しみだのう。」
進む先の方から小さく日差しの光が見える。
出口かな?
そう考えていると、すごい速さで顔を隠した黒ずくめの人が走ってきた。
しかも何やら自分に短刀を向けている。
刃を向けて殺気を出しているのだ、考えるまでも無く敵だろう。
…血の気が多い奴じゃ。
蓮は、走る速度をやや上げると前方の不審者の刃物を避けてそのまま刃を持つ手を掴みクロスカウンターの容量で地面に叩きつける。
ふぅ…そう息を吐いた蓮だったが、敵は一人ではなかった。
後ろから更に同じ格好をした2人が走ってきている。
万が一の為に、時間をずらしていたのだろう。
随分と手慣れている様子にすこし引っかかったが、考察は後回しにし目の前の敵に集中する。
「勘弁してくれ、ワシは狭い所の戦闘が苦手なのじゃよ。」
蓮はそう悪態をつくと、両手の袖からトンファーを取り出して握る。
武器を取り出した事に警戒した賊だったが、武器が刃物でない為か歩みを緩めることはなかった。
蓮は、風の流れを読む。
恐らく…見える二人で最後。
先程倒した奴も含めた3人を拘束し…ひとまず出口の様子を見よう。
蓮は力強く地面を踏み抜き加速する。
その速さは一瞬。
少ない手数で敵を鎮圧する方法は知っている。
加速した蓮は賊の刃物と顎を目掛けて両手のトンファーで殴り進んだ。
トントントントンとリズム良く殴られた賊たちは、蓮が通り過ぎると力無く倒れていく。
蓮の動きについていけてないようで、賊は攻撃する素振りはしてこなった。
トンファーを再び袖にしまった蓮は、拘束するものを持っていないため賊の服の一部を脱がしてでそれで拘束する。
勿論、武器である短刀は回収し他にも武器を持っていないか確認した
身軽さを重視していたようでまさぐっても短刀以外の武器は出てこなかった。
「女子じゃなくて助かった。
こちらの命が関わってとは言え、少しばかり罪悪感が湧いてしまうからのう。」
蓮はそういうと、短刀を懐に仕舞い走り出す。
賊がいたのだチンタラと走っていられない。
全力だ。
蓮は力一杯、地面を踏み抜きグングンと加速する。
簡易ではあるが…整備された硬い地面を凹ませる程の脚力は馬車よりも早く進む。
風の流れが変わる…おそらく出口が近いのだろう。
蓮は光が見え始めた辺りから、停止するため減速を始める。
出口を抜けたその瞬間に、蓮に向かって刀の鞘が向かってきた。
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