第一話 5
護に賊との繋がりが無く信用できるかどうか…偶然ではあるが一人でいる蓮ににあらかじめ聞いて情報を集めようとしていたのだろう。
「なるほど、東様の考えがわかりました。
しかし…ワシの一言が、東様の期待に応えられるか分かりませぬ。
実際に会われないと…もしかしたら、ワシがもしかしたら偽物で護様の誤報を伝えてお二人をぶつけて消耗させようとするかもしれませんぞ?」
「それはない。
余は…余の見る目と…評価したものを信じる。
其方は、信じるに値する人間だ。」
先程とは打って変わって、堂々とした様子だった。
それ程までに、自分の洞察力や評価した仲間達に自信や信頼があるのだろう。
大介が再び目頭に手をやっているのは言うまでもない。
若いのに涙腺ガバガバじゃのう…。
蓮は心の中でそう呆れたが…東の真剣な眼差しと気持ちを受け止めて気持ちを切り替えた。
「わかりました。
我が主人、護殿についてワシが感じるままの事をお伝えします。
完全なる主観であるゆえ…東様の感じた事と違うかもしれぬで、そこだけはお気をつけて…。」
蓮がそう承諾すると、東は大介に用意してもらった座布団まで移動し蓮と対面するような形で座る。
大介は若き領主を守るために直ぐ後ろで後ろに手を組んで立つ。
二人の聞く準備が終わると、蓮は軽くコホンと咳込むとゆっくりと口を開く。
「あまり長い話は得意ではないので、手短に…。
護殿は…大層穏やかな方じゃ。
争い事を好まず、剣より筆の方を握られる方…。
避難民や貧しいものの手を取り、力では無く知恵で少しずつ領土を大きくきていった方じゃ。
此度は侵略ではなく同盟…きっと力になることでしょう。」
そう話をしていると、鐘の鳴る音が鳴り響いた。
上の方から聞こえるため、恐らく見張り台から響いている。
カンカンカンと素早く鳴らしていることから、緊急事態なのだろう大介は険しい顔をし始める。
「こんな時に…。」
ポツリとそう言う大介だったが、直ぐに東は立ち上がった。
先程の弱々しい雰囲気はない。
「大介、いつものように騎兵隊を指揮して住民の避難を頼む。
既に客人がつかっているが、緊急事態だいつものように客間に集まろ。
途中、いるかもしれない護殿に見落とすな。
発見次第、隊を分けて現状の連絡と手助けを客人に怪我などさせないように十分に他のものにも伝えろ。
余は、見張り台に上がり弓兵の指揮に入る。
頼んだ。」
幼さが残る号令だったが…大介のみならず蓮までも思わず姿勢を正す圧のある領主に相応しい声色だった。
大介は一礼をすると、すぐさまに行動を始める。
「すまない、蓮殿。
奇襲が起きやすい時間をずらして集合していたのだがこんなことになって。
其方はそこにいよ、先祖から受け継いできた東の名に賭けて民と一緒に守ってみせよう。」
それだけを言うと、襖を開けて客間から出て行く。
襖を閉めていったが、彼の号令は響き渡っていた。
住民の避難、兵の割り振り、非戦闘員の使用人のこれからの行動など聞き取りやすく正確に襖越しの蓮でもどの内容も曇らずしっかりと聞こえていた。
そんな号令が鎮まる頃に、蓮の緊張は解かれる。
見くびっていた。
それが蓮の正直な感想だった。
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