第一話 4
領主と紹介された東と言う男は、蓮からみてかなり幼さを感じた。
子供だからと言うよりか…武士として領主としての威厳はなく気弱そうでオロオロしている。
自分より身分の低そうな男に対してもそのような態度でいたら、他の領主と対面した時に大丈夫なのだろうか…。
蓮のそんな考えを察しているのか、それとも同じことを考えているのかは知らないが…大介は深く息を吐き出すとまるで弟の手を引くように東の手を優しく引き無理矢理になるが自分の前に立たせた。
「若…、若の身を案じて訪問される護様の御一行のお一人である蓮殿です。
私はあくまで若の力…若の意思は若が伝えなければならないのです。」
人見知りの弟をあやす兄を彷彿とさせる二人の姿にやや和んでしまった蓮は直ぐに表情を直して数歩歩き出す。
自分の間合いの外になるギリギリの距離まで近づき、蓮は膝をおり目線を東に合わせた。
「ワシは…学がないものでして…礼儀や作法などが間違っていたら許してくだされ。
ワシの名前は…蓮といいます。
ワシにも…東様と同じくらいの娘がおりましてな…初対面ではありますが…大介殿と同様に他人事のような感じはいたしませんのじゃ。
訪問相手の我が主人…護様が到着していない中でワシの為にわざわざ足を運ぶのは何故なのでしょう?」
蓮は、自分が疑問に思った事を自分の中で精一杯の丁寧な言葉で優しく東に伝えた。
東は両手で袴を力一杯握りしめて、下を向く。
とても言い難い事なのか…それとも人見知りを拗らせているだけなのか…。
「余は……東。
先祖代々…この地を守る領主である。
…ソナタは学がないといったが…気にするな。
領主が対面した時は、大体戦争だから作法などあってないようなものだ。」
東は、領主とは思えないほど言葉も体も振るわせていた。
両手も裾を力強く握ってはいたが…蓮に向き直った瞳は怯えながらも蓮をしっかりと捉えていた。
そんな東野の言葉を蓮は、静かに頷き東の言葉に耳を傾ける。
「我が東野は、護殿や其方達が思ってている以上に深刻な危機に瀕しておる。
それについて一つ聞きたい。
…護殿はとどんな人物だ?」
震えながら言ってはいたが、客人の名前だけは震えずに吃らずに言えた方に対して子供を持つが故か蓮は心中、関心していたが…大介は違った。
客人の前で目頭を支えている。
兄を通りこして親バカ…自分の可愛い領主の小さな成長でも嬉しいのだろう。
蓮の視線に気がついた大介は、はっとした表情になり軽く咳き込んで誤魔化した。
「東様のお話したように、我が領土は深刻な危機に瀕している。
…賊の動きが大きく活発になってきたのだ。
蓮殿も見ただろう、この屋敷の外側を。
一年前は…あんなものつけてはいなかったのだ。
我々の対策を上回るように敵も装備や兵力を少しずつ強化してきている。
それゆえに…見定めたかったのだ、護様の事を。」
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