第一話 3


大介の言った通り、お茶は直ぐに蓮の元に運ばれた。



お、茶柱がたっておる。

そんな事を考えながら出されたお茶をズズズと音を立てて飲む。


香り、色と共に一級品といっても違いないだろう。


舌が肥えてない自分でも分かるくらいの美味さだった。


爽やかな緑の香りに、飲みやすい温かい温度、そして飲みやすさ。

お茶を入れた使用人の技量がうかがえる。


ここの特産は茶葉だったか?


そんな事を考えていると、お茶はあっと言う間に無くなった。




「あー、こういう時は飲まない方がよかったのかの?」




同じ守護者の友人の一人からに、お茶みたいに手軽に出せるやつは毒物を入れやすいから出先では気をつけろと言われたのを思い出した。



なんでいつも、飲み干してから気がつくのだろう…。


親切心100%の言葉を守らなかった事に罪悪感はあったが…毒が効きにくい自分だったらお茶くらいは大丈夫だろう。



気持ちを切り替えた蓮は、改めて客間を見渡す。

確かに綺麗にされているが…客間と言うには宴会場のようだった。


普段は、襖で仕切りをしているのだろうが…自分達が今回くるから主人と護衛分を合わせて大きくしているのだろう。

他の領主の屋敷と比べるとやや質素だった。


豪華な装飾や置物や絵画…。

そういった自分の財を他人に示すようなものがない。


貴重品は手元に置きたい派なのだろうか…それとも…。

そんな事を考えながら、蓮は立ち上がり客間をウロウロと巡回する。


風の流れを感じる力には自信がある蓮は、畳の踏んだ感触や手で触る壁の感触で隠れて道や部屋が無いか調べていく。



脱出用ならいざ知らず、闇討ちにあったら笑い話どころではない。

畳の一部に違和感を感じたところで、自分が入ってきた襖が開いた。


蓮は直ぐに振り向き、開いた襖を見る。



開かれた襖には、大介と…大介の後ろに一人の小柄の男…いや子供がいた。

歳は17、18歳くらいだろうか…蓮の子供と同じくらいの歳みたいだ。

 


「蓮殿、客間の居心地はいかがかな?

他の領主様の客間と違い、質素だとはおもうが…。」


「いや、ワシには勿体無いくらいの素晴らしい部屋だ。

年甲斐もなくワシも部屋を大冒険していたところしゃよ。


そして、大介殿…その方は?」



大介は、後ろの子供に道をあけるようにして自分の前に移動して貰おうとするが…すぐに大介の後ろに移動してしまう。

大介は、困った顔を浮かべた後に少し考えてそのまま蓮に向き合う。



「ご紹介しよう。

この東野の領主で…我が主人である、東様だ。


約3年前、先代が亡くなられ…若くして領主となられた。

現在は、16歳で幼くも家臣や領民を束ねる立派な領主である。」





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