No.28:「3位だったかな?」
「そういえば来週の土曜日って、全統模試があったよね」
昼休みの時間、慎吾が切り出した。
俺たちはいつも通り机を並べて5人で昼食を食べている。
来週の土曜日は全国統一模試が行われる日だ。
幸いなことに会場はこの学校。
一部他校の生徒も来るらしい。
「そうやったっけ? ウチ完全に忘れとったわ」
竜泉寺はペットボトルのお茶を飲みながら言った。
「いやだなー。あれ受けないとダメなのかなー」
まあ、ひなは受けたくないだろうな。
「ところで……浩介君って、その……模試の順位ってどれぐらいか、聞いてもいい?」
雪奈が遠慮がちに聞いてくる。
「ん? ああ、確か前回は3位だったかな?」
「え? 3位って、県下で3位ってこと? めっちゃすごいやん」
「あ、いや、全国で3位だ」
「えええーー」
「マジで?」
「うそやろ?」
俺としては、さらに上位の2人の顔を見てみたいところだ。
とは言っても全国1位へのこだわりはない。
最終的に帝東大学に入学できればいいので、順位は特に関係ない。
「目指してるのは東大だよね? 学部とかもう決めてるの?」
雪奈が聞いてくる。
「まだ迷ってる。理工系のコンピューターサイエンスの方面か、医学の方面か。遺伝子工学とか新薬開発とかも面白そうだしな」
「まったくうらやましいよなー。浩介はどこだって選びたい放題なんだから」
慎吾は口を尖らす。
「来年はもう受験なんだね」
雪奈がしみじみと言った。
「それよりウチは、模試の次の日の方が楽しみなんやけど」
「だよねー」
何か竜泉寺と慎吾が通じ合っている。
「模試の次の日? 何かあるのか?」
「花火大会だよ、浩介君」
雪奈が教えてくれた。
「ああ、もうそんな時期か」
この街の河川敷で行われる花火大会は県下最大規模で、毎年10万人以上の人出で賑わう。
音楽に合わせた花火構成が美しく、地元企業のスポンサーもついて盛大に行われる。
もちろん屋台もたくさん出るので、食べ歩きだけでも楽しいだろう。
「今年はスポンサーの数も増えて、打ち上げ花火の数が過去最大らしいよ。僕も去年は行けなかったから、今年は楽しみだなー」
「そうそう、ウチもめっちゃ楽しみ!」
「浩介君は、最近花火とか行った?」
「いや、花火大会なんてもう何年も行ってないな。最後に行ったのは、たしか小学生の頃だったと思う」
中学の頃は、一緒に行く友達がいなかったからな。
「えー、そしたらみんなで一緒に行かへん?」
「そうだね。浩介も桜庭さんも一緒に行こうよ」
リア充カップルは2人で勝手に行ってこいよ、と思ったが、
「うん、なんか楽しそうだね」
「ひなも花火大会には行くんだけど、バイト先のイベントで行くから一緒には行けないや。残念だなー」
4人の視線が俺に集中する。
「えーと……浩介君、一緒に行けないかな?」
この上目遣いの雪姫のお願いに、断れる勇者がいたら会ってみたい……。
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