No.23:「おっぱい5センチあげるから」


「んーーーーおいしーーーー」


 山野は俺の目の前で、このカフェの名物

「ウルトラメガスーパーマックスジャンボパフェ」

 なるものを、ものすごい勢いで食べている。

 プロレスの技か?


 パフェの高さは55センチ。

 最初に店員さんが運んできた時、パフェの先端は小柄な山野の目線のはるか上だった。

 山野はスプーンを手に取るといきなり立ち上がり、「いっただっきまーーす」と言うが早いか、パフェの上から食べ始めた。


 制服を着た見た目が中学生のツインテールロリっ娘が、立ちながらドでかいパフェを上からぱくぱくと平らげていく。

 その巨乳がパフェに触れそうで山野も食べにくそうにしている。

 こうしてみると山野自身、くりっとしたネコ目でとても愛らしい。

 さすがは美少女3トップの一角だ。


 当然店内の注目を一身に集めている。

 大半が男性客だが。


「かわいーな、おい」

「胸がパフェにあたるぞ」

「俺が胸を持っといてやる」

「いや俺が」


 半分ぐらいは危ない奴らだった。


 それにしても、食べるスピードが早い。

 そのちっこい身体のどこに入っていくんだ?

 しかもめちゃめちゃ美味そうに食べるので、見ていて気持ちがいい。


 5分前後で半分くらい平らげ、ようやくそこから座って食べ始める。

 子供みたいに夢中に食べている。

 口の周りがアイスで少し白くなっていて、見方によってはちょっとエロい。

 大きなバナナは口の中に入りきらなかったらしく、そのまま「んくっ、んくっ」と少し喉をならしながら口の中でアイスを飲み込んでいる。

 18禁のレベルだ。

 周りの男性客の目が血走っている。


 残り少なくなってきた。

 もう少しゆっくり食べればいいのに。

 案の定、スプーンからアイスがこぼれた。

 言わんこっちゃない。


「やんっ」と山野は声をあげる。

 アイスが濃紺の制服のお腹の部分に、白く広がってしまった。


「あーもうー、大山君てばー。制服の上には出さないでって言ったのにー。しょうがないなー」


「お前やめろ!」


 周りの男性客のみならず、店員まで全員俺に視線を向けた。


「まあまあ、細かいことはいいからさー」

 ナプキンで制服を拭きながら、山野はさらりと流す。


「お前、わかってやってるよな?」


「さー、どうだろうねー」

 山野はへらりと笑う。

 やべえ、こいつ殴りたい。


「ごちそうさまーー。本当に美味しかったー。しかも大山君のオゴリだから、余計に美味く感じたよー」


 そうなのだ。

 山野は「ここは大山くんのオゴリねー」と言って、俺をこのカフェに連れてきた。

 そして山野は「ウルトラメガスーパーマックスジャンボパフェ 2,350円」を躊躇なく注文しやがった。

 俺がおごることも、パフェのネーミングも、価格設定も全ておかしい。


 俺は自分が注文したコーヒーを一口飲む。


「それにしてもすげー食べっぶりだったな。食べ始めてから15分も経ってなかったぞ。あんなでかいもの、その小さい体のどこに入っていくんだ?」


「まあねー、甘いものは別腹って言うしねー」


「別腹っていうレベルじゃねえ」


 55センチのドでかいパフェが、ロリっ娘の体内に吸い込まれていく。

 その様子は、まるでイリュージョンだ。


「はあ……でも本当に、もう少し背が高かったらなぁ……ねえ大山君、身長5センチくれない? おっぱい5センチあげるから」


「いらんわ! もらっても、活用できん」


「ひなも雪奈みたいに、バランスの取れた美少女に変身できないかな……」


 そうだ。桜庭の話だ。

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