第7話 ハンカチの意味

花嫁が刺繍したハンカチを最初に渡したのは

遠く離れた地へ向かう自分の夫へ


どうか無事に故郷へ帰ってきて

故郷の野原に花が一面に咲く

この景色をまた一緒に見ましょう


そんな願いと想いを込めて

花の絵を刺繍したのが始まりらしい


まーそんな由来とか今は関係ない

縫い目を確認しながら今日も明日もちくちくと縫う


相変わらず猫はいてくれる

木箱は猫専用ベッドになった

今日は陽の光が当たる机の上に箱を置いて

猫を見ながら仕事をしている

今のところこれと言った災いは特に起きていない

やはり何かあるのだろう


猫は紫と黒の縞模様のままだが

紫が多くなった気がする

黒が減ったのはいい事のはず

じっと見ていたら

猫がもぞもぞと箱の中で体を動かす

くぁあぁっと口を開けてあくびをして

体を伸ばし首をブンブン振る


なぁんとひと鳴きしてこちらを見つめている

ご飯かな?


豆茶を片手に仕事をしているけど

朝から何も食べてなかった

そろそろ食事にしよう

立ち上がると猫は足に頭をこすりつけて

喉をゴロゴロ鳴らして足の周りをぐるぐると歩く


猫を踏まないように歩くのも少し慣れたが

やはり歩きにくい

けどぴったりくっついて歩く姿はかわいい


戸棚に置いている鳥の燻製とパンを取り出し

キッチンに植えている葉物をちぎって

小さい実がなる木を植えているものから

何個か実をとり洗い場で少し洗う

鳥の燻製をみて猫がすでに大興奮しているが

もう少し待ってもらおう

大きめの皿に全部乗せて机に移動する


机に皿を置いたと同時に、

猫が皿から鶏肉を持っていってしまった

木箱の中で鶏肉にかぶりついている

最近は猫がご飯を欲しがるから

ちゃんとご飯食べてるなぁ

前までは2、3日なら食べずに仕事してたし

それを心配してマーサとマーサ母が

よくご飯を持ってきてくれてる

今日は温めたらすぐ食べられるスープとパンを

朝の挨拶と同時に置いていってくれた


そう言えばハンカチの刺繍をしていると

最近すごく疲れるんだよなぁ

食べなさすぎなんだろうか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る