11話:部活の仲間達
翌日はダンス部の体験、その翌日は園芸部の体験に三人で行った。
そして翌週月曜日。様々な部活の見学をした結果、希空は演劇部、翼はダンス部、私は園芸部に入部を決めた。
三人ともバラバラになってしまったが、園芸部には同じ小学校の子も何人か居て、さらに、新しく
「苺って、可愛い名前だよね」
「私はあんまり好きじゃないな…」
「なんで?」
「だって。可愛くない私には似合わないし。名前負けしてるでしょ」
そう言って苦笑いする苺ちゃん。
「そんなことないよ。可愛いよ」
「可愛くない」
「可愛いってば」
彼女は背が高いことがコンプレックスらしい。翼が165㎝と言っていたが、苺ちゃんはそれより1㎝高いのだとか。とはいえ、海菜さんは中一で170㎝を超えていたらしいから、別に気にすることではないと思う。なんて、気にしている人に言っても無駄かもしれないけれど。
低身長の私からしたら彼女が羨ましいが、高身長の彼女は逆に私が羨ましいらしい。交換出来たらどれほど良かったか。
「可愛くないのはその態度のせいじゃないかしら」
溜息をついて呟いたのは、部長の
「その言い方はないんじゃないですか」
同級生の女の子が言い返す。すると紅林先輩はこう続けた。
「別に貶してるわけじゃないわよ。自分を可愛くなくしてるのは自分自身なんじゃないの?って話。自信持ちなさい。あんたは可愛いから。これ、お世辞じゃないからね」
「へ…えっと…」
「『ありがとう』でしょう?」
「…ありがとう…ございます…?」
「ふふ。どういたしまして」
「次から出来る限りそうした方が良いわよ」と優しく笑う紅林先輩。誤解しかけていた同級生も良い人だと分かったのか、彼女も素直に彼に謝った。
「いいのよ。あたし、誤解されやすい自覚あるし。こんな喋り方してるからか女に厳しそうとか、心は女なのかとかね」
「えっ、女の人じゃないんですか?」
「自分の心の性別とか言われても分かんないわよ。はっきりしてるのは、身体が男であることに違和感が無いだけ。更衣室やトイレに関しても男子の方使ってて違和感を覚えたことはない。だけど、自分のことを俺っていうことだけは違和感なの。あたしの方がしっくりくる。ただそれだけ」
「恋愛対象は?どっちなんですか?」
苺ちゃんが手をあげて質問を投げかける。
「女性よ」
「そうですか」
「ええ。少なくともゲイではないわ。未だに女性的な喋り方をする人=ゲイって誤解する人多いけど、あたしのパパは全然こんなんじゃないもの」
「……パパ?」
「父親が二人いるのよ。あたし」
父親が二人という話を聞いて、小学校が同じだった子達が一斉に私を見た。
「私の家はお母さんが二人なんです」
「あら。そうなの。初めてだわ。自分以外で同性カップルを親に持つ人」
「私もです」
これをきっかけに私と部長は仲良くなった。今までは周りに同性カップルを親に持つ人は居なかった。先輩も元々は父親と母親が居たが、中学に入る前に父親が母親と離婚して、再婚した相手が男性だったらしい。周りからは『子供が可哀想』だのなんだの言われたらしいが、先輩本人がそう言った大人に向かって『あたしを同性愛を否定する口実にしないで』ときっぱり言い放ったら黙ったらしい。大人相手にはっきりとそう言える先輩は強い。
ちなみに、パパと呼んでいた方が父親の再婚相手。二人の父親のことはお父さん、パパと呼び分けているらしい。
海菜さんの友達の男性夫夫は子育てをしているらしいが、私は会ったことがない。初めて仲間を見つけた気がして嬉しくなり、その日私は彼のことを日記に書いた。
20××年 4月23日(月)
今日、部活の先輩の親が同性カップルということを知って、先輩と親の話で盛り上がりました。仲間が出来たみたいで嬉しかったです。
ちなみに、先輩は男の人ですが、先輩のことは最初から怖いと思いませんでした。雰囲気が柔らかい人だからなのかな。
希空と翼とは別の部活になって、ちょっと寂しかったけれど、園芸部は雰囲気が良くて、先輩達も優しくて、楽しいです。新しい友達もたくさん出来ました。これからが楽しみです。
愛華より。
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